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朝日新聞・朝日新聞デジタル|更新|2015/05/14

「僕が旭山動物園で出会った 動物たちの子育て」


小菅正夫著
出産・育児の奮闘まとめる
 
 危機にあった旭川市の旭山動物園を全国一の人気園に育て上げた前園長が、長年心血を注いだ動物たちの出産と子育ての波瀾(はらん)万丈のドラマを本にまとめた。


 獣医師でもある著者は、36年の動物園生活で様々な動物たちの繁殖にかかわってきた。わずか生後3週間で子を独り立ちさせるアザラシや、父親も熱心に子育てするオオカミ、母親のそばにいる子供の間に出産から子守まで学習してしまうオランウータンなど、そのスタイルは実に多様だ。

 子供の誕生に涙を流して喜ぶ一方で赤ん坊を死なせてしまったホッキョクグマや、育児放棄するキリンやチンパンジーの母親など、何度もの試練に直面する。だが、そうした問題は、野生と異なる環境や、群れの中で学習する機会がないせいだと考え、自然界での暮らしを参考に、子育て環境を整えようと奮闘する。

 出産も育児も、学習して覚えることと本能に組み込まれていることがあり、それは種によって違うという。そして「子育てこそその動物の生きざまであり、固有の文化」だと書く。

 ヒトの仲間チンパンジーの育児を通した現代の人間の育児問題への問いかけも興味深い。動物たちのたくましさと動物園に携わる人々の熱い心が印象に残る。

 

(静山社・1365円)

(朝日新聞 2014年2月7日掲載)