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朝日新聞デジタル|更新|2015/05/14

動物医療、人間並み MRI・CT…診療数伸ばす 川崎の病院

 東京都と神奈川県を隔てる多摩川沿いの日本動物高度医療センター(川崎市高津区)。鉄筋5階建て、延べ3795平方メートル。正面玄関は二重のガラス扉で仕切られている。待合室の犬や猫が道路に直接、飛び出さないための安全対策だ。
 診療科は人間の総合病院並みに充実している。脳神経科や腫瘍(しゅよう)科をはじめ、循環器・呼吸器科、消化器科、整形科など。それぞれの分野を専門にしている獣医師が診断、治療にあたる。


 設備も豊富だ。MRI(磁気共鳴断層撮影)、CT(コンピューター断層撮影)、PET(陽電子断層撮影)、ライナック(放射線治療器)など人間のがんの診断・治療に使う高度な医療機器がそろう。ICU(集中治療室)のペットは24時間態勢で異常の有無をチェック。がん治療では、抗がん剤のほか、免疫療法も導入している。
 同センターは2007年に開設された。一般の動物クリニックとのすみ分けを図るため、診療には獣医師の紹介状が求められる。11年には犬、猫を年間約1万1千匹診療し、約1100匹を手術した。設立当初の約3倍にのぼる。
 当初は赤字が続いたが、10年以降、黒字となった。動物の高度医療施設は、大学の施設を除くと、同センターも含め、全国でまだ数カ所だという。
 東京大の動物医療センター長を務めた佐々木伸雄・東京大名誉教授(獣医外科学)によると、日本動物高度医療センターでは、CT、MRIなどを導入したことで診断レベルが飛躍的に向上し、がんなどの治療の際、放射線治療を受けるケースも増えた。また、カテーテル手術(心血管系)の件数の増加も目立っている。
 動物には人のような健康保険制度がないため、飼い主にとっては高度医療の費用の高さがネックだ。
 同センターでは、初回の検査と手術、1週間の入院でおおむね30万~50万円かかるという。こうした中、損害保険会社の「アニコム損保」(東京都新宿区)は診療費の一部を負担するペット保険を販売し、昨年12月末現在の契約数は前年同月比で13%多い約43万3千件となっている。

 

●高額治療費に葛藤も


 東京都港区元麻布のインターナショナルスクール理事長、清川栄子さん(54)は11年12月、大型犬バーニーズマウンテンドッグのロン(雄、当時10歳)を同センターでみてもらい、がんと診断された。余命は長くて半年、と告知された。
 手術も選択肢だったが、「無理な延命よりも、苦しまないで最後を迎えられるようにしたい」と抗がん剤治療を選んだ。地元の動物病院を通じてセンターから抗がん剤を取り寄せ、3週間間隔で点滴を打った。
 抗がん剤の費用は1回分5万円。「いったいいつまでこの治療が続くのか、どこまで治療の範囲を広げれば良いのか、思い詰めることもあった」と当時の葛藤を振り返る。昨年7月、ロンは息を引き取った。
 センターへの通院・入院なども含め、治療費は総額140万円余りかかった。清川さんは「食欲は落ちたが、死んだ当日まで自分で水を飲めた。楽に死なせてやることができたと思う。十分な治療が受けられ、満足している」と話す。
 ペットの高度医療が広がった背景として、佐々木名誉教授は「家族と同じレベルの医療を求める飼い主の気持ちがある」と指摘する。今後、ペット向け保険の拡充も求められそうだ。

(藤方聡)

 

(朝日新聞 2013年1月20日掲載)