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朝日新聞・朝日新聞デジタル|更新|2015/05/18

心潤す「動物」セラピー 馬と触れ合い、育む自立

1人で馬に乗り、大学生ボランティアに「すごーい」とほめられた戸板実穂さん=鳥取市越路
1人で馬に乗り、大学生ボランティアに「すごーい」とほめられた戸板実穂さん=鳥取市越路

 動物に触れることで、病気やけがの治療効果を高めたり、心を癒やしたりする「アニマルセラピー」。鳥取市の牧場は乗馬を通じて子どもの自立心を育む活動を15年以上続けています。岡山市では動物型ロボットを使って認知症患者の心を安定させ、家族の負担も和らげる試みが始まっています。

 4月下旬の日曜日、鳥取市の山あいにある「空山ポニー牧場」に約10人の子どもたちが集まった。茶や白のポニーにまたがったり、ブラシをかけたり、牧場の周辺でヨモギを摘んで団子を作ったり。それぞれが好きなことをしている。
 牧場を運営するNPO法人ハーモニィカレッジ(鳥取市)が週末に開く「ポニークラブ」の活動。会員になるとポニーに乗ったり、世話をしたりできる。会員は県内の小学生から高校生まで約40人。何をして遊ぶかは子どもたち自身で決めるのがルールという。
 小学3年の戸板実穂さん(8)は白い小柄なオスのポニー「玉三郎」に乗り、お尻を浮かせて走る姿勢を練習していた。1年前から通い、ポニーの気持ちが分かるようになってきたという。「首がぴーんとなって目を見開いているときは、今日は走れそうだなと思う」。玉三郎から下りると、黙々と馬房を掃除した。

 

馬にブラシをかけるのも子どもたちだ=鳥取市越路
馬にブラシをかけるのも子どもたちだ=鳥取市越路

 ハーモニィカレッジの大堀貴士理事長(40)は「馬にも感情があり、機嫌が悪い時に近づけば暴れることもある。子どもはそれを察知し、乗るか乗らないかを決める。経験を通して、危険かどうかを自分で判断できるようになる」と話す。「体で覚えたことは、その後の人生でも役立つ。生きる力を育てたい」
 中学生の娘2人を5年前からクラブの活動に参加させている鳥取市の船越みほさん(45)は「心身ともにたくましくなった」と実感している。虫を嫌がったり、小さな擦り傷で騒いだりすることがなくなったという。活動には大学生ボランティアも加わり、障害のある子も参加する。長女で中学3年の七海さん(14)は「知らない人と話すのが苦手だったけど、いろんな人が来るから自分から積極的に話すようになった」。
 ハーモニィカレッジは1997年に発足。2013年にNPO法人になった。春休みや夏休みのキャンプには県外からも参加がある。

(村井七緒子)

 

 

アザラシ型ロボット、介護現場で広がる効果

アザラシ型ロボット「パロ」
アザラシ型ロボット「パロ」

 2013年2月に在宅介護支援の総合特区に指定された岡山市。全国初の「在宅介護特区」だ。今年2月、アザラシ型ロボット「パロ」を介護機器として有料で貸し出すサービスを始めた。介護保険で要介護1~5に認定された市内在住者が対象。介護保険と同様に自己負担額は1割で月額3150円という。
 パロは認知症の患者など介護の必要な人たちの気持ちを癒やし、暴言などを抑えたり、徘徊(はいかい)を減らしたりしようと、産業技術総合研究所が開発した動物型ロボット。05年から株式会社知能システム(本社・富山県)が製造・発売をしている。人工知能が搭載され、話しかけたり、触ったりすると「キュー」と鳴く。体を上下左右に揺らしたり、まばたきをしたりする。全長57センチ、重さ約2・5キロと小型なので、ひざに乗せてかわいがれる。
 知能システムによると、施設に入所しているアルツハイマー型認知症の女性が、かつての愛犬の名前をパロにつけて世話をしたところ、夕方に施設を出て自宅に帰ろうとする問題行動がなくなったという。
 貸し出しサービスを担当する市医療政策推進課は、寝たきりになった人が、パロをかわいがるために体を起こそうとしたり、手を伸ばそうとしたりすることで、リハビリの動機付けにもなると期待している。同課の福井貴弘課長(50)は「患者が落ち着くことで、家族がいつもハラハラしながら見守らずに済むようになる」と言い、家族の負担軽減にもつながるという。
 2月~4月の3カ月間に25人が利用した。市には「難聴で引きこもりがちだったが、パロと常に触れあっている」「寝たきりだが、パロを持って行けば表情を変える」と好意的な感想が寄せられた。ただ、「パロを勧めても本人が興味を持たなかった」などとして利用をやめた人も6人いたという。
 福井課長は「いやし効果で認知症の進行を遅らせることもできるかも」と期待を寄せ、利用者の増加をはかりたいという。
(長崎緑子)

 

 

追伸 記者より


「あこがれのお兄さん、お姉さんをめざして乗馬の練習をしていた子が、今度は下の子を助けてあげるようになる」と大堀さん。取材した日には、小6から参加し、今春から大学生ボランティアとして関わる大阪市の女性(18)もいました。ポニーを中心にいろんな芽が育っているようです。(村井)

 

(朝日新聞 2014年5月10日掲載)