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sippo・sippo|更新|2015/05/22

サバ美とふたりで乗り越えていく

「猫を偏愛しています」と自己分析するアーティストの坂本美雨さん。
しかし、その暮らしぶりは極めて堅実、動物への愛に溢(あふ)れている。
写真提供/坂本美雨さん


 

ごはんより何より坂本さんの抱擁


 坂本美雨さんとサバ美との暮らしは4年目に入った。
 地域猫だったサバ美を動物保護団体を通して迎え入れたのは3年前。当時推定年齢3歳だったサバ美は、6歳になる。
 坂本さんによると、気位が高くて姫気質なサバ美だが、甘えん坊で寂しがり屋。今でも坂本さんが帰宅すると、どこへ行っていたの?と言わんばかりに出迎えて、ごはんより何より坂本さんの抱擁が必要だという。
 そんなふたりの愛が試されたのが、昨年の夏から秋にかけての半年だ。
 昨年の7~9月、坂本さんは動物保護団体から新しい家族を待つ子猫3頭を一時預かりで引き取った。サバ美とは部屋を別にして会わないように気を付けていたが、無邪気な子猫たちは家の中を活発に探検、ある日ばったり遭遇してしまう。びっくりしたのはサバ美のほうで、初めはぎょっとしていたそうだが、緊張感はありつつも子猫たちを受け入れ、一時預かりは無事終了した。
 その後、今度は坂本さんが舞台とツアーで約3カ月、自宅を留守がちにする時期に突入し、地方公演の2週間はサバ美を友人宅に預けることになった。
「私も寂しかったですが、友人からサバ美の様子を聞くと、彼女も頑張ってくれていることが伝わってきました。しんどい数カ月でしたが、サバ美の顔つきが大人びてきて、この時期が終わったとき、“とても大きなことをふたりで乗り越えた感”がありました」

 

猫たちがつないでくれた“猫親戚”の絆


 坂本さんは、サバ美を迎えるとき、一人暮らしの自分が引き取ってよいのか、命を預かる責任を負っていいのかと随分悩んだそうだ。サバ美が20年生きてくれたら、自分は50歳になる。その間に家族構成も暮らし方も変わっていくだろう、ずっと一緒にいられるだろうかと。
「命を迎える覚悟は絶対に必要です。その一方で、初めから、最後までの準備が完璧ということも難しい。だからこそ、自分の周囲の人たちと一緒に支え合うことができれば、確かに挑戦しなくてはいけないことはあるけれど、人と動物両方が得られるものはずっと大きい」
 坂本さんの場合、その支え合いの軸となっているのが、“猫親戚”と呼んでいる仲間たちだ。独身4人で、皆、猫と暮らしている。猫への愛はもちろんのこと、互いの猫シッターもすれば、アートや歌といったクリエーティブ活動、動物が直面している殺処分や被災といった課題への取り組みなどで4人は結ばれ、つながりと活動はライフワークとなっている。
「猫親戚がプロデュースした新聞『The Cat's Whiskers』で は、私とサバ美の結婚式、というページがあります。猫偏愛といってしまえばまさにそうなのですが(苦笑)、サバ美は家族であり、添い遂げる相手であり、社会的セットであり、責任をもつ存在であることの表明です」
 また、万が一離れ離れになってしまったときに備えて、サバ美にはマイクロチップを装着している。 「阪神大震災のときに、チップを着けていた子たちは家族と再会できたそうです。チップには賛否両論ありますが、会えずに最悪の事態になることだけは避けたい。そのためにも、チップは大事だと思っています」

 

これからも共に乗り越えていく


 坂本さんは、「FreePets~ペットと呼ばれる動物たちの生命を考える会(通称ふりぺ)」のメンバーとして、2011年の「動物の愛護及び管理に関する法律(動愛法)」改正に向けての署名活動などに参加。ふりぺは、人が動物たちの命や幸せに責任を持ち、人間も動物も幸せになれる社会の実現に向けて、さまざまな職種のメンバーが啓蒙活動を行っている社団法人だ。また、動物愛護団体のボランティアや、映画『犬と猫と人間と2 動物たちの大震災』のプロモーション支援など、動物の愛護活動にも積極的に参加している。
「この映画は自主上映も募集していますので、ぜひ!」
「私自身、これから家族の形、住む場所と、サバ美との暮らし方も変わっていくかもしれません。それでもサバ美とは更なる信頼関係を築いていきたい。一緒に乗り越えていこうね、そう思っています」


 公式ブログ「のらネコよ、ちょっとお寄りよ」では、アーティスト活動やサバ美との日々を綴(つづ)る。初の著書『ネコの吸い方』を上梓(じょうし)予定。

 

(朝日新聞 タブロイド「sippo」 No.20(2013年9月)掲載)


 

坂本美雨(さかもと・みう)


1997年、デビュー。99年に映画『鉄道員』の主題歌、1stアルバム「DAWN PINK」をリリース。これまでに7枚のアルバムを発表し、舞台やラジオのパーソナリティー、執筆などでも精力的に活動。miusic~The best of 1997-2012~ 未収録曲を含む初のベスト盤。美しく透き通る歌声と独特のコーラスワークで独自の歌世界をもつ彼女の、15年のキャリアを凝縮した2枚組。ジャケットには巨大サバ美が登場。(右画像)