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朝日新聞・朝日新聞デジタル|更新|2015/11/10

伝書ネコ、107歳と飼い主つなぐ 癒やしの訪問者、2年半で800通超

チャアチャの首輪に手紙を結びつける恵子さん=熊本県玉名市溝上
チャアチャの首輪に手紙を結びつける恵子さん=熊本県玉名市溝上

 見知らぬネコが家に上がり込み、100歳を超すおばあちゃんになついた。娘が首輪に手紙を結んでみたら、飼い主まで運んだ。飼い主がノートに貼ってためた手紙は、2年半で800通を超す。手紙で結ばれた二つの家は、「伝書ネコ」あるいは「介護ネコ」と呼んでかわいがっている。

 熊本県玉名市溝上の田んぼが広がる集落で、ネコは高木波恵さん(107)に毎日のように会いに来る。気立てが優しく行儀がいいので、波恵さんも気に入った。

 長女の恵子さん(76)がネコの帰り道を観察し、約100メートル離れた家に住む高木洋さん(56)と美津子さん(61)夫婦が飼い主だと突き止めた。教師だった恵子さんにとって、洋さんは中学時代の教え子だった。「愛する飼い猫が知らないところで何をしているか、教えてやったら喜ぶだろう」と紙片にネコの行動を書き、首輪に結んでみた。

 飼い主の美津子さんは最初に手紙を見た時、「達筆なので誰からだろうと不思議に思っていた」。数回送った後、恵子さんは洋さん夫婦に送り主であることを打ち明けた。

 ネコは雄の推定9歳で、名前は「チャアチャ」。人間なら50代前半ぐらい。関西の六甲山周辺で迷いネコとして保護され、6年前に兵庫県西宮市に住んでいた洋さん夫婦が引き取った。夫婦は翌年、チャアチャを連れて洋さんの故郷の玉名市溝上に移ってきた。

 昨年4月11日の手紙。「ミャオーと言って家の中へ。牛乳一杯(だけ与えた)。地区のパトロール忙しい様子。バアバになでてもらって、ハーイサヨナラと言って外へ」。飼い主の美津子さんは「子どものいない私たち夫婦にとって、チャアチャは子ども同然。外でそんなことやってたのかって、意外な面がわかって助かる」と語る。

 チャアチャは以前の飼い主に捨てられた可能性があり、なついた人間がそばを離れそうになると必死に追いかけてくることがあるという。

 高齢だが、声も力強い波恵さんは「チャチャ」と呼ぶ。「(捨てられたかもしれないという)人生を思うと、かわいそうでならない」。チャアチャは雨の日を除いて毎日2回ほど波恵さん宅に来ると恵子さんが手紙を結びつけるまで家を出ようとしない。塀のすき間や狭い路地伝いに帰る。

 波恵さんが106歳になった昨年10月11日の誕生日には、飼い主からのお祝いの手紙をチャアチャが届けた。波恵さんの次男の保明さん(66)は「母にとって、ネコの癒やしはいい介護になっている」と話す。

 波恵さんは大正時代、日本統治下だった台湾で小学校教師になった。今年、台湾での高校野球の思い出話が朝日新聞熊本版に掲載された。久しぶりに当時の教え子に書いた手紙を、台湾の郵便局員が現住所を探し出して届けたことが台湾中で話題になり、教え子たちと9月、テレビ会議で約80年ぶりに「再会」した。

 娘の恵子さんと同様に、飼い主の洋さんの父親も当時、台湾で生まれ、波恵さんは近くに住んでいた洋さんの父親も、自身の子どものようにかわいがったという。そんな縁もあり、当時を思い出すのか、チャアチャとの出会いには特別な絆を感じているようだ。
(村上伸一)

チャアチャをかわいがる波恵さん=熊本県玉名市溝上
チャアチャをかわいがる波恵さん=熊本県玉名市溝上

(朝日新聞2015年11月6日掲載)


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