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sippo・sippo|更新|2016/01/19

軒下に定住する「間借り猫」 地域猫おばあちゃんの遺言をひきつぎ世話

軒下の家でくつろぐおちび(左)ときなこ
軒下の家でくつろぐおちび(左)ときなこ

 町に暮らす地域猫2匹が、面倒を見てくれていた人を亡くした。猫は行き場を失いかけたが、「この子たちをお願い」という「遺言」が人から人へと伝わり、猫は3食と屋根付きの住処を得た。昨今、猫は完全室内飼いが理想とされるが、家の敷地内で人とほどよい距離を保ちながら猫たちは幸せに暮らしている。

(末尾に間借り猫の写真特集)

 1月半ば、東京都豊島区のあるお宅を訪ねた。一戸建でで、60代の母親と、長男(32歳)と二男(29歳)の3人暮らし。いや、2匹の猫も一緒だ。猫は家の軒下の特製段ボールハウスに住んでいる。

 長男が説明してくれた。

「茶色くて小さい子が、おちび。黄色い毛の子が、きなこ」

 2匹の猫のベッドには、お揃いのクリーム色のフワフワの毛布がかかっている。毛布は母親が買ってきたという。

「右耳がカットされているおちびは避妊済みの雌で、左耳がカットされているきなこは去勢済みの雄……のはず(笑い)。実は猫とつきあうのが人生初なんです。どっちかというと僕は犬派だったくらいで」

 それが今ではすっかり虜で「いなくなるのは考えられない」ほど。長男は出版社勤務、二男は飲食業勤務で、ふたりとも午後出勤も多く、昼間に猫とまったりする時間が楽しいのだという。

「2匹はいつもここで寝ていて、ちょっとパトロールして戻ってくる。夜なんて2匹で抱き合って寝ていて可愛いのなんの」

 もともと2匹は、ほかの猫と一緒に、近くの家に住むおばあさんに可愛がられていた。といっても室内でなく玄関先でご飯をもらい、他の何人かにも面倒を見られていた。いわゆる地域猫で、名前もあるような、ないような。

 長男がいう。

「初めて我が家のそばまで来たのは一昨年ですが、その時にあまりに痩せていて、どうしたんだ? と思い、見かけるたびにご飯をあげるようにしたんです。でも地域猫の場合、勝手にご飯をあげたらトラブルにならないかな、と悩んでいました」

 そんな時、二男が、ある情報を近所の人から聞きつけてきた。

「餌をあげていたおばあさんが病気で亡くなってしまったと。そして、枕元に『特に臆病で気弱な2匹がいるので気遣ってやってほしい』と遺言が残っていたというんです。それが、この子たちでした」

 それなら、うちで寝床を作って、ご飯もあげよう! そんなふうに家族で話し合ったという。名前もつけてあげた。

「今ではご近所さんもうちの猫と認識していて、どこどこで見かけたよと、声をかけてくれる方もいます。室内に入ることもあるけど、すぐに出たがるんです」

 本当は体もきれいに洗って室内だけで飼うのがいいのかもしれないけど……と長男が胸の内を明かしてくれた。

「今は見守る形でいい関係ができている。うちでお腹を満たし、寒さを防いで。飼い猫というより間借り猫みたいかな。でも大事な存在です」

 敷地内で、自由と無事を精一杯、見守っているのだ。

 食事は朝がドライ、昼が缶詰とドライ、夜が缶詰とドライ。最近ぐっとグルメになり好き嫌いもでてきたという。ガリガリで「人相」の悪かった2匹は、ふっくらして表情も穏やかに変わってきた。きなこは長男がコンビニに行く時に、犬のように後をついてきて、店前で待ち、家まで一緒に戻ることもあるそうだ。

 話を聞いていると、ちょうどランチタイムになり、お母さんがフードをトレイに載せて家から出てきた。

「昔、結婚する前に猫を飼ったことがあるのですが、久しぶりに動物と触れ合い、家族で猫の話をすることも増えましたね。皆で旅行をする時は、お隣の方にご飯をお願いしていくんですよ」

 おちびと、きなこ。臆病だった猫たちは、ご飯を平らげると、自分のベッドで堂々と気持ちよさそうに寝はじめた。

(藤村かおり)

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玄関脇の軒下に置かれたベッド
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出典:sippo
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