子猫を見つけた! まず母猫探し、いなければ保護し動物病院へ

 帰宅途中の道ばたで、散歩先の草むらで、もし子猫に出会ったら――。その命を救うために、できることがあります。一歩、踏み出してみませんか?

 

「今年もまた、『子猫の季節』がやってきた」
 

 埼玉県内を中心に活動する保護猫シェルター「またたび家」の塩沢美幸代表はそう漏らす。いとおしい存在だから救う。でも5月に入り、もう10匹以上も子猫が持ち込まれているのだ。
 

 日照時間が長くなると発情期を迎える猫は、日本ではふつう春から秋にかけて繁殖活動をする。妊娠期間は60日少々。だから5月も半ばを過ぎたこの時期、子猫が人目につき始める。
 

 もし保健所などに連れて行かれると、多くの場合、不幸な結末が待つ。2014年度、全国の自治体に引き取られた離乳前の子猫は約6万9千匹。その7割近い4万7千匹余りが、殺処分されている。行政や動物愛護団体の努力だけでは、救えない命がある。

 

 では子猫を見つけ、その命を自分の手で助けたい人は、どうすればいいのか。塩沢さんは、「まず母猫がいないかどうか確認してください。離乳までは母猫に任せたほうがいいからです。そのうえで、母猫のいない乳飲み子、または乳歯が生えていて既に自力でウロウロしている子猫を見つけたら、すぐに保護してあげてください」。
 

 もし離乳前に保護することになったら、保温が大切。夏でもカイロを使って温めるとよいという。また、離乳の前か後かにかかわらず、まずは子猫を連れて動物病院へ。地域猫活動を支援している、おおにし動物病院(東京都立川市)の大西学院長は、「獣医師が見れば、おおよその日齢がわかるので、必要なケアを教えてくれるはずです。生後1カ月くらいの子猫は体力や免疫力が弱く、感染症にかかりやすい。検査を受け、感染がわかれば治療をしましょう」とアドバイスする。
 

 ほかにも、ノミやダニなど寄生虫の駆除が必要だ。生後2カ月くらいでワクチン接種も。動物病院によっては、野良猫(飼い主のいない猫)なら診療費を割り引いてくれるところもあるので、相談にのってもらおう。
 

 既に猫を飼っている家庭なら、子猫は最低1~2週間、隔離しておくこと。寄生虫や感染症から先住猫を守るためだ。
 

 生後2、3カ月くらいまで育てたら、飼い続けることが困難な場合、新たな飼い主への譲渡も可能になる。飼い主募集サイトは、個人でも利用できるところが少なくない。また、譲渡会が定期的に行われている地域もあるので情報を集めてみよう。
 

 こうして子猫を救ったら、次は親猫のことも考えてみて、と塩沢さんは言う。「親猫をいったん捕まえ、不妊・去勢手術(TNR)をしなければ同じことが繰り返される。飼い主がいないことを確認したうえで検討してほしい。ハードルが高ければ、地域の保護団体に相談してみてください」

 

(太田匡彦)

  

<「野良」の寿命は3、4年>
4千年以上前、人がヤマネコを家畜化して作り出した新種がイエネコ。人の移動にあわせて世界中に広がった。人と関わりのない野良状態はイエネコには不自然な状態で、飼い猫の平均寿命が15歳超なのに対して「野良猫の平均寿命は3、4歳くらい」(大西学さん)。
<譲渡後の虐待防ぐには>
譲渡された猫を虐待する事件も起きている。「誰でもいいからもらってほしいなどとは、絶対に思わないこと」と飼い主募集サイト「ネコジルシ」も注意喚起する。各関連サイトでは▽身分証の確認▽できれば自宅まで子猫を届け、飼育環境を確認▽「譲渡誓約書」を活用、などの対策をすすめている。
<首輪がなくても>
ペット関連の法律に詳しい細川敦史弁護士は「首輪がなくても、体が汚れていない場合、飼い猫の可能性がある。近所にチラシを配るなどして飼い主の有無を確認しましょう」。飼い主がいないと分かれば、TNRをしても「法的には問題ない」と話す。なお耳先がV字にカットされているのは、不妊・去勢手術され、地域の人に見守られている印。

 

朝日新聞
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