「なでなでねこちゃん」 社長の挫折から生まれたヒット商品

鳴くネコやイヌの商品に囲まれるトレンドマスター・中田敦社長=川崎市
鳴くネコやイヌの商品に囲まれるトレンドマスター・中田敦社長=川崎市

 中田敦社長(57)のひざの上に抱かれたネコ型ぬいぐるみロボット。なでると「ミャーオ」、あごを触れば「ゴロゴロ」と鳴き、尻尾をなでると「ニャン」と不機嫌そうに反応する。「なでなでねこちゃんDX2」は、外見も態度も、本物のネコがいるような気持ちにさせる。


 発売当初は子供のおもちゃを想定していたが、「癒やされる」と、高齢者やペットを飼えない人々に人気が広がった。2012年のシリーズ発売以来、5年間で約6万個が売れている。現在の価格は税別5980円だ。


「人と人とを結ぶコミュニケーション性のあるおもちゃを作りたい」と中田さん。「ねこちゃん」は熊本地震で被災した高齢者施設や保育園にも無償で送った。不安を感じていた高齢者が「ねこ」と遊ぶうちに笑顔が戻り、他人とも会話が広がったという。14年度には川崎市から優れた福祉製品として認証された。

なでなでねこちゃんとワンちゃんシリーズ=川崎市
なでなでねこちゃんとワンちゃんシリーズ=川崎市

 中田さんは元々大手玩具会社の社員。「ヒット商品で出世を目指して突っ走っていた」。だが、会社の合併で人員整理の対象に。転職先の小さい会社で企画から営業までこなしていた11年3月、東日本大震災が起きた。親戚一家が福島から避難してきて同居した。


 小学生のおいはいじめられたようだが、友達が家に来てゲームを一緒にするうちに仲良くなる姿を見た。「コミュニケーション性のあるものを提案できれば、今より幸せを感じる人が増えるのではないか」と、7月に「トレンドマスター」を立ち上げた。


 しかし、昔のつてを頼って企画を売り込んでも、後輩にさえ「検討していないけど要らない」と断られた。昼間から仕事がない。やる気がなくなり、自宅で打ちひしがれていた。テレビをつけてボーッとしていると、ひざの上に飼っている黒猫がのってきた。「そーか、そーか、クロちゃんは幸せだね」となでているうちに、何かが吹っ切れた。「クロちゃんみたいなネコを作ったら、同じように励まされたり癒やされたりする人がいるんじゃないか」。こうして初代「ねこちゃん」が生まれた。孤独に陥りがちな高齢者が反応し、じわじわと知られるようになった。


 サラリーマン時代のように大ヒット商品を作ろうとは考えない。「知る人ぞ知る長く続く商品、完璧でないから心を癒やす低価格のロボットを送り出したい」


(北崎礼子)


■「幸せ作る商品」提案したい 中田敦社長

 小さい会社ですが、その分自分の思いがダイレクトに人に伝わると思っています。小さい会社にしか出来ないこともあります。世の中の家族の幸せを作り出す気持ちで、商品を提案し続けています。商品を手に取り、みなさんが今よりちょっとだけ幸せになってくれればうれしいです。

<トレンドマスター>

 川崎市中原区中丸子。「なでなでねこちゃんDX2」は三毛柄など3種、1月発売の「なでなでワンちゃん」は、しば犬など3種類。会話に入り込む機能も追加した。百貨店のおもちゃ売り場やネット通販などで。問い合わせは(044・422・1641)。
朝日新聞
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