開園50年に向け、さらに進化する旭山動物園

愛らしいペンギンの散歩を大勢の来園者が見つめていた=2016年12月、北海道旭川市の旭山動物園
愛らしいペンギンの散歩を大勢の来園者が見つめていた=2016年12月、北海道旭川市の旭山動物園

 動物の生き生きした姿を見せる「行動展示」の先駆けとなった北海道旭川市の旭山動物園がこの夏、開園50年を迎える。10年前のブームは一服。日本最北の動物園は、お金をかけない展示施設の改装や海外の野生動物の保護など、新たな道を探り始めている。


 零下10度を下回る厳冬の園内で一番人気のペンギン散歩。運動不足解消も兼ね外のコースを気ままに歩くペンギンの姿に来園者の歓声が上がった。妻と小学3年の息子と台湾から来た男性(60)は「雪で覆われた場所でペンギンを見られるのは格別です」と喜んだ。


「ぺんぎん館」(2000年)や、水中ダイビングを観察できる「ほっきょくぐま館」(02年)、円柱水槽で体を伸ばして通る「あざらし館」(04年)――。


 市郊外の旭山にある動物園では90年代後半から、斬新な発想の大型施設が相次いで造られた。飼育員が客の前で動物の解説をするワンポイントガイドなど、顧客サービスを意識した企画も旭山から広まったとされる。


 旭山の入園者は、04年から夏の月間で全国一となり、ピークの07年度には年間307万人を記録した。大型施設の整備は、13年の「きりん舎・かば館」の新設でほぼ一巡した。


 いま、さる山ではニホンザルとイノシシを同居させる「共生展示」に向けた改修が進む。異種の動物が共存する野生動物本来の生き方を知ってもらう仕掛けで小幅な投資でできる。日本を代表する里山の動物として海外の人に見てもらう意味もあるという。


 15年度の入園者は152万人で、東京・上野動物園(397万人)、名古屋・東山動植物園(258万人)、大阪・天王寺動物園(173万人)に次ぐ。


 園の特別会計の15年度決算は、人件費を含めた維持管理費の94%を入園料だけで賄った。佐渡友陽一・帝京科学大講師(動物園学)が公立動物園で自前の収入で賄える比率を10年度の資料で計算、平均4割程度で「旭山はとんでもなく優秀だ」と太鼓判を押す。


 だが、坂東元(げん)園長は「人口減少で大型投資は難しい」と楽観していない。


 ブームの時期は、一般会計からの繰入金がゼロだったが、今は年間1億~3億円が必要だ。170万~180万人の入園者が適正な規模だという。


 旭山は80年代前半から客の減少が続き、廃園の危機も経験。動物の魅力を伝える「理想の動物園」であろうとする挑戦が成功をたぐり寄せた。全国の動物園で「行動展示」に似た取り組みが広まった。競争は厳しいが、動物園としての新しいあり方を模索している。


 昨年12月、マレーシア・ボルネオ島に坂東園長はいた。園の人気者オランウータンの故郷は、熱帯雨林がプランテーションになり、動物のすみかが奪われていた。09年に野生動物保全の「恩返しプロジェクト」を始め、企業や市民から資金を集めボルネオゾウを保護するレスキューセンターなどを寄贈してきた。


 坂東園長は「財源を多様化し、野生動物の保全活動でも貢献する。『行動展示』も、さらに進化させていきたい」と話す。


(渕沢貴子)

朝日新聞
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