野良猫と人と海鳥たち 「共生」考えるカードゲーム

天売島を舞台にしたカードゲームの試作品を使い、環境問題を話し合う学生たち=北海道江別市の酪農学園大
天売島を舞台にしたカードゲームの試作品を使い、環境問題を話し合う学生たち=北海道江別市の酪農学園大

 希少な海鳥が暮らす天売島(北海道羽幌町)を舞台に、人と猫、海鳥の共生を考えるカードゲームが作られる。島で野良猫対策に取り組む町や環境省などによる「人と海鳥と猫が共生する天売島」連絡協議会が考案し、「楽しみながら環境教育に取り組んでもらいたい」という。

 

 

■学生も協力、環境学ぶ一助に


 ゲームは、野良猫や飼い猫の「ネコカード」を手札に持ち、海鳥や餌やり、ドブネズミなどの「環境カード」を引き、「その状況が猫にとって幸せか」などを考える。酪農学園大(北海道江別市)では3月上旬、動物看護師を目指す学生がゲームの試作品を使って話し合った。「野良猫」「餌やり」のカードを手にした学生は、「餌をもらえたらその時はいいけど、人に近づくと交通事故に遭うことも増える。結局は猫にとって不幸だと思う」。このほか「人間、海鳥、猫と視点を変えると答えが違う。複雑な問題だと思った」「島の猫の害になるものや、他の生物との関わりがこんなにあるとは知らなかった」などの感想が出た。


 天売島は、絶滅危惧種のウミガラス(オロロン鳥)やケイマフリなど約100万羽の海鳥が飛来することで知られる。だが飼い猫の一部が野生化し、1990年代から海鳥のヒナや卵の捕食、糞尿(ふんにょう)などが問題になった。


 町は2012年に「天売島ネコ飼養条例」を施行して飼い猫の登録を義務化。14年秋から環境省や町、動物保護団体などが野良猫を捕獲して人に慣らし、飼い主を探している。これまでに約130匹の猫を島外に出し、約100匹が飼い主に譲渡された。


 一方、島内の住宅や漁船では1年後の15年秋、ドブネズミによる被害が増加した。猫の捕獲との因果関係ははっきりしていないものの、猫の捕獲を一時中断。協議会と漁協や町内会などは、猫とネズミ両方の対策が必要なことを確認し、昨年12月に猫の捕獲を再開した。


 環境省羽幌自然保護官事務所によると、野良猫問題に関する環境教育のゲームは珍しいという。ゲームは近く完成し、町周辺の小中高校などで活用してもらう。また、天売島に限定せずに一般化したゲームも作り、ホームページからダウンロードして全国の学校で使えるようにする予定だ。羽幌町の北海道海鳥センターの石郷岡卓哉さん(42)は「ゲームを通して、子どもたちにも天売島の問題を知ってもらいたい。調べて深掘りするなどして、自分なりの答えを見つけてもらえたら」と話す。


 天売島では、猫をきっかけとした観光振興にも取り組む。昨年9月には野良猫対策と島の自然を学ぶツアーを実施し、東京や帯広などからの参加者もいた。環境省羽幌自然保護官事務所の竹中康進・自然保護官(39)は「自然環境の保全はいろいろな人と協働しないとできない。多くの人に取り組みを知ってもらい、海鳥、住民、猫、みんなの幸せを目指したい」と話す。


(松本理恵子)


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