猫を大切にする猫カフェ「ちぐら」 「無理に抱っこ」は禁止

「いらっしゃいませ」と手招きするモカ(マンチカン、オス)
「いらっしゃいませ」と手招きするモカ(マンチカン、オス)

「猫ちぐら」という民芸品をご存じだろうか? 「ちぐら」とは、農家で使われたわら製のゆりかごで、ドーム型の猫ちぐらは、新潟の人気土産物の一つ。この名にちなんだ「ちぐら」という猫カフェが、新潟市内にある。店名に込めた思いとは? 店長の鈴木一郎さん(57)に話を聞いた。

 

(末尾に写真特集があります)

 

 猫ちぐらの産地として知られるのは、新潟県関川村。冬は雪深い農村地帯である。


「猫ちぐらを最初に考えた人は、『猫のことが好きだったんだろう』と思います。『温かい所にいさせてやりたい』と作ったはず。猫ちぐらは、猫を大事にしようという気持ちの表れ。優しさの象徴ではないでしょうか」 と鈴木さん。猫ちぐらに込められた思いをそのまま、店名にしたという。

 

新潟で人気の民芸品「猫ちぐら」が置かれた猫カフェ「ちぐら」=新潟市内
新潟で人気の民芸品「猫ちぐら」が置かれた猫カフェ「ちぐら」=新潟市内

 同店は徹底して「猫ファースト」の猫カフェである。未就学児の入店を禁じ、大声を上げたり、走り回ったりもダメ。「捕まえて無理やり抱っこするのは、ご遠慮ください」と伝えたところ、入店を見合わせた客もいたが、ポリシーは変えなかった。来店者には猫が恐怖心を抱いたり、嫌がったりすることをしないよう、お願いしている。


「猫は自分の意志のみに従って生きている動物だと思います。名前を呼ぶと、こっちを向いたり、寄ってきたりすることもあるけれど、それは人間のいうことを聞いているわけではありません。しつけは大事ですが、猫の意志を尊重することこそ大切です。無理に従わせようとすると、逃げたり隠れたりします」


 店内は静か。猫は思い思いのポーズでくつろいでいる。長毛の猫を含め10匹いるが、猫の毛一本落ちていない。エプロン姿の鈴木さんは、こまめに掃除をしている。これも、いつも住環境を整えてあげたいという考えの表れだ。明るく、清潔なことから、大手化学メーカーの猫用トイレのテレビCMの撮影が行われたこともあるそうだ。


 鈴木さんが猫カフェ「ちぐら」をオープンしたのは2013年7月。サラリーマン生活の後、12年3月末に希望退職し、「茶の間で猫と過ごすような場をつくりたい」と、52歳で猫カフェ店長に転じた。年中無休で、店の一角に睡眠をとる場所も設けてあり、自宅に帰らず365日猫を見守っているという。猫愛はかなり深い。


「ちぐら」には鈴木さん自慢の「猫スタッフ」がいる。開店当初からいる「ジャッキー」(ベンガル、オス)と「ルイ」(スコティッシュフォールド、オス)はそれぞれ、飼い主がいなくなって置いて行かれたり、転勤で飼えなくなったり……。それぞれに事情を抱えた猫を鈴木さんが引き取った。


 その後、かわいい猫に出会うとスタッフに加えてきた。「『モカ』(マンチカン、オス)は、立ち上がって両手をそろえて手招きする姿に、神様からの贈り物だと思いました」と鈴木さん。このほか、不動産のテレビCMに出演した経験のある「メイ」(アメリカンショートヘアー、メス)や、お客さんから「オードリーの若林(正恭さん)に似ている」と言われる「あみ」(ソマリ、メス)など、個性的な猫がそろっている。

 

鈴木さんの周りには猫が集まってくる
鈴木さんの周りには猫が集まってくる

 猫はそれぞれのタイミングで、すっと近づいてきて甘え、すっと離れてお気に入りの場所で眠り始める。


「人に近づいてくる猫は、大切にされている証拠。猫を大事にすると、猫の方から人間を好きになってくれます。お客さんは『猫を大切にしているかどうか』で猫カフェを選んでほしいですね」


 空前の猫ブームで、全国に多くの猫カフェができている。客側も猫にマナーを問われている。


(若林朋子)

 

猫カフェ「ちぐら」
〒950-2022
新潟市西区小針1丁目14-10
090-8593-5316
http://chigura.com/
sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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