「警察犬」増える出動 多くは行方不明者の捜索!

紀の川の河川敷で訓練する田倉成幸さん=和歌山県紀の川市
紀の川の河川敷で訓練する田倉成幸さん=和歌山県紀の川市

 行方不明者の捜索で警察犬=キーワード=の出動件数が増加しており、和歌山県内では近年出動件数全体の約7割超を占める。一方で、民間の嘱託警察犬の指導手の高齢化、県警の直轄警察犬の費用など課題を抱えており、対策が急務になっている。


 7月中旬の午後8時ごろ、和歌山市新庄の指導手三谷博一さん(72)の携帯電話が鳴った。「70代女性が施設から行方不明」。愛犬のシェパード「テラ号」(メス・6歳)を車に乗せ、車で20分ほどかけ高齢者施設に向かった。女性の枕のにおいをもとに、テラ号と一緒に道路や草むらなど約2時間かけて捜索したが見つからず、午前0時ごろ帰宅した。その後、女性は無事保護されたという。


 三谷さんは、30年近く警察犬の指導手を続け、行方不明者の捜索に何度も出動してきた。ここ数年、事件出動が減り行方不明者捜索が中心になった。これまで川で亡くなっていた男性や倉庫の床下で動けなくなっている男性を発見してきた。出動は多い月で5件、平均2件ほどだが、出動は昼夜を問わず深夜も多い。


 県警鑑識課によると、県内の嘱託犬の不明者捜索は、ここ数年は20~30件ほどで、10件ほどだった20~15年ほど前と比べると増加傾向にある。10年ほど前から行方不明者の捜索が出動件数の約7、8割を占めるようになったという。警察庁によると、行方不明者の捜索の出動件数(嘱託犬のみ)は昨年、過去10年で最多の2605件。そのうち約4割が認知症行方不明者だった。


 一方で、嘱託警察犬の数は減少傾向にある。全国では2011年に1213頭だったが、16年には1197頭と減少。飼い主や訓練業者で作る「日本警察犬協会」(東京)は、指導手の高齢化などで嘱託犬が減っているのが主因とみる。県内でも指導手17人のうち約半数の8人が65歳以上と高齢化が進む。さらに、近年は小型犬ブームで警察犬に適するシェパードやラブラドルレトリバーなどの大型犬を飼う人が少なくなっていることから、「今後、さらに後継者が生まれない状況が進む」と同協会は指摘する。


 嘱託犬のみの運用が難しくなってきたことから、県警は今年度から直轄犬1頭を導入した。だが、まだ犬舎などの施設がなく、さらに専任で訓練する警察官も1人と人員確保も課題だ。県警鑑識課の喜多啓之次席は「予算確保や人員確保など課題もある。今後態勢を整えていきたい」と話す。


 県警嘱託犬指導手会の田倉成幸副会長(67)によると、指導手の減少で「管轄外」の遠くの地域まで出動する事例が増えているという。「嘱託犬は指導手の都合などで出動できないことも多い。今後は嘱託犬とうまく補完し合いながら運用していくことが大切」と話している。


(片田貴也)

 

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◆キーワード


<警察犬>

嗅覚(きゅうかく)を生かして、犯人の追跡や行方不明者の捜索を行う。警察が直接管理する直轄警察犬(直轄犬)と民間の指導手に訓練を委託し、警察からの要請を受けて出動する嘱託警察犬(嘱託犬)がある。県警ではこれまで嘱託犬(現在31頭)のみの運用だったが、7月に直轄犬1頭を導入。県内では昨年、事件で6件、行方不明者の捜索で27件出動している。

朝日新聞
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