成果多い改正動愛法 消費者も賢くなろう

 

 動物愛護法が成立して、2013年で40年。それ以前には「動物が命あるものである」(第2条)と考え、「適正な取扱い」(第1条)を規定する法律すらなかったわけだ。そのことを思えば、世の中は格段に、動物に優しくなってきたと言えるだろう。

 だがこの法律があっても2011年度、犬は4万4783頭、猫は14万132頭が全国の自治体で殺処分された。こうした現状について環境省は「過去に2度の改正を重ねたが、その後も不適正な飼養や販売の事案が後を絶たない」と認める。そのため2012年8月、3度目となる動愛法の改正が行われた。そして改正動愛法が、13年9月から施行された。

 

 何が変わったのか。まず今回の法改正の主眼であった動物取扱業者への規制強化はある程度は、実現している。動物取扱業者は例えば、販売が困難となった犬や猫について、終生飼養の確保を図らなければならなくなった(第22条の4)。同時に、自治体は動物取扱業者からの犬や猫の引き取りを拒否できるようになった(第35条)。ペットショップや繁殖業者による「売れ残り犬」や「用済み繁殖犬」の各自治体への遺棄については、減少が期待できそうだ。

 

 また、インターネット販売や深夜販売が規制されたことは、消費者の衝動買いを防ぐ意味でも大きな意義があった。ほかにも虐待事例が明記されて取り締まりがしやすくなり、罰則も厳しくなったはずだ。さらに初めて、犬や猫の「殺処分がなくなることを目指して」と明記された(第35条第4項)。

 

 その殺処分を減らすという意味で、最も大きな変化は「週齢規制」の導入だ。幼すぎる子犬を生まれた環境から引き離すことで、精神的外傷を負わせて問題行動を起こしやすい犬を流通させたり、販売現場で衝動買いを促したりすることを防ぐ狙いがある。本来であれば欧米先進国並みに「8週齢」で線引きが行われるべきであったが、一部議員が「抵抗」した結果、13年9月から施行されたのは「45日齢」規制。それでも、施行規則や輸送期間を考慮すれば、実際にペットショップの店頭に並ぶ子犬は最短でも生後48日程度にはなる。

 

 販売現場では「犬がぬいぐるみのようにかわいいのは生後45日まで」(大手ペットショップチェーン経営者)という考え方が主流で、これまでは生後40日に満たない子犬が数多く販売されていた。今回の改正は一歩前進と言える。だがそれでも、8週齢規制が実現できなかったことは大きな禍根を残した。次の法改正が行われるのは5年後。それまで消費者は、幼すぎる子犬を買うことが何を意味しているのか、よく知ったうえで選択をする必要があるだろう。

(イラストレーション/石川ともこ)

 

(朝日新聞 タブロイド「sippo」 No.20(2013年9月)掲載)

太田匡彦
1976年東京都生まれ。98年、東京大学文学部卒。読売新聞東京本社を経て2001年、朝日新聞社入社。経済部記者として流通業界などの取材を担当した後、AERA編集部在籍中の08年に犬の殺処分問題の取材を始めた。15年、朝日新聞のペット面「ペットとともに」(朝刊に毎月掲載)およびペット情報発信サイト「sippo」の立ち上げに携わった。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』『「奴隷」になった犬、そして猫』(いずれも朝日新聞出版)などがある。
この連載について
いのちへの想像力 「家族」のことを考えよう
動物福祉や流通、法制度などペットに関する取材を続ける朝日新聞の太田匡彦記者が、ペットをめぐる問題を解説するコラムです。
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