フィラリア薬、投与前に血液検査

  •  かかりつけの獣医師から、犬にフィラリアの予防薬を飲ませるように言われました。
    : フィラリア症は蚊が媒介となって起きる病気で、犬糸状虫というそうめんのような寄生虫の生まれたばかりの幼虫(ミクロフィラリア)の感染が原因です。

     蚊の体内で育った幼虫が刺し傷から犬の体内に移動し、犬の体内で成虫になり、肺動脈内に寄生します。その結果、肺への血流が悪くなり、重くなると失神したり腹水や胸水がたまったり、時には喀血(かっけつ)し、死に至ります。初期は無症状なので、症状が出始めた時には手遅れということが多い恐ろしい病気です。とにかく予防が大切です。

     予防薬は蚊を見かけるようになったら飲ませ始め、見かけなくなっても1カ月後までは続けて下さい。最近は蚊の発生期間が延びています。地域で差はありますが、だいたい4~12月の間、毎月1回投与するのが一般的です。
  •  治療法は?
    : まず虫を駆除する必要があります。かつてはよく手術で虫を取り出していましたが、最近は、副作用が少なく殺虫率が高い駆虫薬が出てきています。私がかつて手術したとき、147匹もの虫が出てきたことがあります。雌は20~30センチ、雄は10~15センチにも成長していて、肺動脈の中でからまりあって団子状になっていました。

     最近、感染した状態で放っておくと肺動脈内の血管壁が厚くなることがわかってきました。実はこちらのほうがやっかい。血管内の空洞がどんどん細くなり、血栓もでき、肺循環障害が生じます。そのため、駆虫薬と一緒に血栓を防ぐアスピリンを飲ませることもあります。
  •  症状が出る前に感染を知ることはできますか?
    : 動物病院で血液検査などをしてもらえばわかります。意外と知られていませんが、感染している状態で予防薬を飲ませると、激しいアレルギー反応である「アナフィラキシー」などを起こす可能性があります。予防薬の投与を始める前に毎年、血液検査を受けることをお勧めします。
山根義久
1943年生まれ。動物臨床医学研究所理事長、倉吉動物医療センター・米子動物医療センター 会長、東京農工大学名誉教授。医学博士、 獣医学博士。2013年まで日本獣医師会会長を務めた。

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この連載について
診察室から
動物臨床医学研究所の理事長を務める山根義久獣医師が、ペットの病気に関する質問にわかりやすく答え、解説するコラムです。
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