季節の変わり目のくしゃみ あらゆる可能性を考えよう

  • :最近、うちの犬がよくくしゃみをしています。犬にも花粉症があるのでしょうか?
    :山根 抗原抗体反応の一種である季節性のアレルギー性鼻炎、いわゆる花粉症は、犬にもあることがわかってきています。ただし、仮にアレルギー性鼻炎だとしても、そのくしゃみが本当に花粉症の症状なのかどうかは、なかなか判断が難しい。原因がハウスダストであることも多いです。
     さらには、アレルギー性鼻炎ではない、別の可能性も検討しないといけません。くしゃみをしている原因について、ひとつずつ可能性を精査していく必要があります。
  • :毎年、春先になるとくしゃみの症状が出る傾向があります。ほかにどんな病気の可能性がありますか?
    :山根 春先も含めて季節を問わず、くしゃみの出る病気としてはウイルス感染による犬ジステンパーの可能性があります。また幼犬でよくみられる犬伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ)なども考えられます。犬ジステンパーはワクチン接種で予防できますので、飼い主が気をつけてあげなければいけません。
     また徐々に暖かくなる春先は、犬の活動が活発になります。そのため、心臓や呼吸器への負荷が急に高まります。その結果として、これまでは気づかなかった疾患が現れてくるケースがあります。くしゃみというよりせきに近いような症状が続くのであれば、呼吸器系の疾患である気管虚脱や心臓弁膜症による肺水腫や胸水症などを疑う必要があります。特に7、8歳を超えたポメラニアンなどでは、気管虚脱を起こす可能性が高いとされています。
     くしゃみや鼻水、せきなどの症状が続くようであれば、なるべく早めに動物病院にかかり、原因をさぐっていきましょう。
  • :暖かくなるこの時期に、飼い主としてほかに気をつけておくべきことはありますか?
    :山根 やはりフィラリア症への対策です。暖かくなり始めるのと同時に、フィラリア症を媒介する蚊が出始めるからです。フィラリア症も、重度になるにつれて呼吸器系に症状が現れます。初期はほとんど無症状なので発見が遅れがちの病気ですが、月1回予防薬をあげることで防げる病気でもあります。春になったら、忘れずに予防薬をあげ始めることは、飼い主として当然の責任です。
山根義久
1943年生まれ。動物臨床医学研究所理事長、倉吉動物医療センター・米子動物医療センター 会長、東京農工大学名誉教授。医学博士、 獣医学博士。2013年まで日本獣医師会会長を務めた。

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この連載について
診察室から
動物臨床医学研究所の理事長を務める山根義久獣医師が、ペットの病気に関する質問にわかりやすく答え、解説するコラムです。
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