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ぐっちーさんの猫に小判

ぐっちーさん・sippo|更新|2015/10/09

第6回 「猫に小判」を英語で言うと……豚or猫?


 さて、本連載の題名でもある「猫に小判」。猫に小判を与えても、猫としては何の意味もわからず、分不相応または無駄です、という意味に使われていますね。

 これを英語では、

 You're buying him a bottle of Scotch whisky! It's casting pearls before swine; he's allergic to alcohol.

 というような使われ方をします。

 Casting pearls before swine

 ですから、日本語の「豚に真珠」が、これから来ているということがわかります。入学試験などで、もし「猫に小判」を英語にしろという問題があれば「Casting pearls before swine」と答えないとバツになります。しかし実際の会話では、アメリカ人に対して、

 Oh, it is like placing the money besides sleeping cat!!(それは寝ている猫の横にお金を置いているようなもんだよ)

 といっても、よほど鈍い奴でない限り伝えたい意図、つまり「猫に小判=豚に真珠」と意味が通じます。

 アメリカ人だってそういう情景を想像して、すやすやと寝ているかわいい猫の横に札束を置いたところで、猫はすやすやと寝ていて、人間なら「おー、大金だ!」と飛び起きるかもしれませんが猫には関係ありませんよね、という意味を把握することが可能なわけです。そうすると、何やら愛らしい雰囲気まで出てきますし、何より「猫にお金なんか積んでも役に立たないよ」ということ、つまり猫に小判の本来の意味を英語でも通じさせることができます。

 ちなみに私がこの表現を使うと、「それはとてもかわいい」(クールジャパンです!)ということで、これを多用するアメリカ人がたくさんいるくらいですから、「猫に小判」で十分コミュニケーションは成り立つわけですね。

 しかし、相手の想像力とこちらの言語能力を組み合わせることこそがコミュニケーションであるにもかかわらず、この英文は日本の入学試験では0点です。意味は通じているのに、ですよ。

 つまり、日本の英語教育の最悪な点は、言語という元来コミュニケーションのツールであるはずのものが、合格判定をするための入試のためのツールになってしまっていると言う点です。試験ですから正解が二つも三つもあっては困るわけです。だから、本当は自由に許されている、あるいは十分に通じる表現でも、ちょっとでも文法的にずれていると試験においてはすべてバツになる。「それが英語だ!」と勘違いしている日本人が英語をしゃべれないのは当然で、サイズの合わないスーツを無理に来ているサラリーマンのような状況になっているわけであります。

 皆さんがしゃべっている日本語を想像してみてください。本来の文法をどれだけ逸脱した状態になっているか。それが言語というものでしょう。今や普通に「食べれる」という表現を使っています。先日もあるマナーコースの女性の教師が普通に「やっと食べれました」と表現していたので椅子から転げ落ちるところでした。

 英語もあくまでも言語でありまして、正解が一つということはあり得ません。ですからそういう教育を受けてきた日本人は間違ってはいけない、という思いが先行してなかなか英語をしゃべりたがらない。私は英語で仕事をして稼いでいるわけですが、はっきりいって日本の中学3年生までの英語の教科書をマスターしていれば、アメリカの日常、あるいは通常業務で不足する部分はまずありません。もし、この中学3年生レベルまでを本当の意味でマスターしていれば、アメリカで何不自由なく生活することができます。

 ただし、これが言語だということを忘れないでください。つまり言語、試験科目ではない言語としての正しい勉強方法があるといことです。

 では猫ついでにその勉強法をお教えしましょう。

 まず、ここでテストをしましょう。たとえば中学の教科書で扱う現在完了形の経験を表す表現のひとつですが、

 Have you ever been to US?

 という実に簡単な質問に、

 Yes, I have. I have already been to US (three times….etc).

 No, I have’nt. I’ve never been to US.

 と1秒以内に答えられますか?

 試験であれば10秒かかって答えればいいわけですよ。そのくらいの時間はありますよね。しかし、実際の会話で仮にこの質問を受けて10秒たって答えたらそれはもう会話になりません。

 つまり、英語ができる、できないという問題はすべてスピードの問題に尽きます。10秒たって正解が出せれば入試ではOKですが、ビジネスの現場ではそれこそ使い物になりません。

 そのあたりの問題をスルーして小学生から英語を教える、などというバカなことをやり始めている日本の英語教育はどうかしています。必要な英語力はマクドナルドでテイクアウトできることではなく、自分の考えを相手に納得させる英語力なのです。そのためには中学3年間の英語を先ほど申し上げたようなスピードで自由自在に操ることができるということが必要最低限なのですが、そもそも先生方がこのレベルにはないので、まあ、無理なんでしょうが……。

 これぞ、猫に小判! でありますぞ!


ぐっちーさん

ぐっちーさん(ぐっちーさん)

1960年生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。ブログは(http://guccipost.jp/)。著書に『ぐっちーさん 日本経済ここだけの話』など。


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