食欲が減り、咳が出る……心筋症の可能性も

(写真は本文とは関係ありません)
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  • :猫の元気がなく、高い所に登るのに失敗しました。まだ5歳と若いのに、心配です。
    :山根 それだけでは何とも言えませんが、普段に比べて運動機能が低下してきたのであれば、心筋症の可能性を考えてみる必要があります。
  • :どんな病気ですか?
    :山根 猫で最も多い疾患の一つですが、その原因は不明です。大きく肥大型、拘束型、拡張型の三つのタイプがあり、心室壁が厚くなり、心室の内部が狭まってしまう肥大型心筋症の発生が特に多いです。どのタイプも心室の機能が衰えるため、血液を全身に十分に送り出すことができなくなります。拡張型は、原因の多くがタウリン欠乏によるものであることが分かり、そのケースについては心筋症からは除外されました。同時に、市販のキャットフードにタウリンが添加されるようになり、急速に見られなくなりました。
  • :血液の循環が十分に行われなくなると、どんな問題が起きますか?
    :山根 まず、肺に水がたまる肺水腫を起こし、呼吸が速くなったり、むせるような咳(せき)が出たり、時には呼吸困難になったりします。猫にこうした様子が見られたら、すぐに動物病院に行った方がいいでしょう。
    無症状から、状態が急速に悪化することがあります。最も怖いのが、腹部大動脈に血栓が詰まること。心筋症の猫の約50%にこの症状が出ると言われます。飼い主は、猫がいきなり悲鳴をあげて初めて気付きます。そうなると後ろ脚が麻痺(まひ)するなどし、予後は非常に悪くなります。
  • :治療法はありますか?
    :山根 腹部大動脈血栓症になったら、状態にもよりますが、血栓溶解剤などの投与による内科療法を行います。中には急いで外科手術をし、血栓を摘出しなければいけないケースもあります。ただ、手術成績はあまり良くありません。
    そのため、なるべく早く心筋症に気付いてあげることが大切です。食欲が減り、呼吸器に関わる症状が時々出て、運動機能が低下してきたなと思った段階で心筋症がわかれば、薬の投与で、血栓ができないようにしていけます。
  • :早期発見のコツはありますか?
    :山根 日常生活のなかでの変化を見逃さないよう、普段からよく猫の様子を見てあげることです。その上で、心エコーを含む健康診断を定期的に受けさせましょう。
山根義久
1943年生まれ。動物臨床医学研究所理事長、倉吉動物医療センター・米子動物医療センター 会長、東京農工大学名誉教授。医学博士、 獣医学博士。2013年まで日本獣医師会会長を務めた。

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この連載について
診察室から
動物臨床医学研究所の理事長を務める山根義久獣医師が、ペットの病気に関する質問にわかりやすく答え、解説するコラムです。
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