「広島県の殺処分犬を全頭引き取り」挑戦の始まり、会見で宣言

1回目の全頭引き取りで保護した犬たち
1回目の全頭引き取りで保護した犬たち

 3月30日、私は広島県庁で記者会見に臨んだ。ピースワンコ・ジャパンによる「殺処分ゼロ」プロジェクトで、4月1日以降、広島県内で殺処分対象となった犬をすべて引き取るという決意を表明するためだ。たくさんのカメラを前にした私の隣には、殺処分寸前で救われて災害救助犬になった夢之丞が座った(会見の様子はこちら)。

 

 このコラムでも何度か触れたが、私たちが打ち出した、「広島県の犬の殺処分をなくす1000日計画」の期限は今年6月15日。だが、新しい犬舎の一部が今月中に完成する見通しが立ったし、ピースワンコが手本にしているドイツ基準でなく日本の自治体の基準でいえば、現状の施設で500~600頭以上を保護することも不可能ではない。少々無理をすれば計画を2カ月半前倒しすることは可能だと判断した。

 

 会見で私が強調したのは、これは目標の達成ではなく、殺処分ゼロを維持する挑戦の始まりであるということだ。2015年度も、広島の犬の殺処分は2月までの速報値で700頭を超えた。年々減っているとはいえ、その犬たちをすべて引き取り、新しい飼い主を見つけることは決して容易ではない。少しでも気を抜けば、殺処分機を再び稼働させてしまうことになるだろう。

 

 そして、この挑戦は、私たちだけでなし得るものではない。志を同じくする他の保護団体やボランティアのみなさん、寄付者として支えてくださる方々、保護犬の里親になってくださる方々はもとより、捨て犬を増やさないためにはすべての人の協力が欠かせない。私たちの役目は、最後に救いのセーフティーネットを張ることだが、その網が破れないようにこれからも多くの方と手を携えていきたいと思っている。

 

 4月5日には、全頭引き取りの1回目として、子犬16頭、成犬9頭を県の動物愛護センターから保護した。出張中の私は写真でしか見ていないが、なぜ殺処分対象になってしまったのか分からないほど、人懐っこそうな目をスタッフに向けている。まずはこの子たち1頭1頭と向き合うことが、殺処分ゼロのスタートになる。

 

 会見にはたくさんの反響があり、期待の大きさをひしひしと感じた。犬・猫の殺処分数ワーストだった県が、犬だけとはいえ、ワーストを記録してから5年間で殺処分をゼロにできれば、他県でもこの問題の解決が不可能ではないことを証明できるだろう。次は猫の殺処分ゼロの実現、そして全国への拡大と、歩みを止めることなく挑戦を続ける決意だ。

 

広島県庁での記者会見
広島県庁での記者会見

大西健丞
1967年生まれ。NPO法人「ピースウインズ・ジャパン」代表理事。広島県神石高原町にシェルターを設け、捨て犬の保護・譲渡活動に取り組むプロジェクトを運営している。

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この連載について
大西健丞のピースワンコ日記
NPO「ピースウインズ・ジャパン」代表の大西健丞さんが、殺処分ゼロをめざして犬の保護活動に取り組む日々を語ります。
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