篠田麻里子&ムッシュ、こめ 重い責任を感じる

一緒に支え合える存在を──。
そう思い、犬との生活を始めた。愛犬の幸せのために、しつけも健康管理も全力でこなす。
ペット番組のMCを務めたことで、ペットを巡る環境にも関心が高まる。
文/太田匡彦 撮影/植田真紗美


「私はこの子たちの〝お母さん〟。働いているのはこの子たちのため、というくらいの気持ちです」

 マルチーズのムッシュ(8歳、写真右)とこめ(1歳、同左)という大切な「娘」を抱きかかえながら、篠田麻里子さんはそうほほえむ。

 福岡県から上京し、一人暮らしを始めて以来、傍らにはいつも犬がいた。篠田さんはこう話す。

「私は3人兄妹なので、にぎやかなのが好き。しかも寂しがり屋なので、一緒に支え合っていけるような存在として、ワンちゃんと暮らしたいと思いました」

 篠田さんの愛犬といえば、オスのトイプードル、ぱちゃがファンの間でもよく知られていた。そのぱちゃは2013年秋、急病で亡くなってしまった。

 一緒に過ごしていたある夜、急に体調が悪くなり、夜間救急を受け付けてくれる動物病院に駆け込んだ。様々な検査をし、点滴などの処置をしたが、回復しなかった。まだ6歳だった。何が原因だったのかは結局わからず、後悔が募った。

「動物たちは人間の言葉を話せないという、当たり前のことを改めて痛感しました。だからこそ、自分が責任をもってよく見ていてあげないといけない。そして適切に対応してあげるには、それなりの知識が必要だということも身にしみてわかりました」

 いま、ムッシュとこめの体調管理には細心の注意を払っている。フードは基本的にドライフードを使っているが、蒸したキャベツなどをおやつとしてあげている。腸内環境をよくする効果があるという。

子どもの運動会を見る親の気分です

 動物病院は、かかりつけ医のほかに、夜間対応してくれる病院と歯科の専門病院について、信頼できるところを見つけてある。歯科の専門病院には、歯周病予防のために年2回のペースで通うようにしている。

 犬がシニア期に入るとされる7歳を超えたムッシュについては、月に1回程度、水の特性を利用したアクアフィットネスにも連れて行く。

「生まれつき右ひざが悪かったので、7歳になったのを機に始めました。朝晩しっかり散歩で歩きたがる子だから、シニアになっても健康に歩けるようにと考えて。ちなみに、犬用のライフジャケットを着て歩いている姿は本当にかわいいです。『がんばれ!』って声援を送りながら、子どもの運動会を見る親の気分になっています(笑)」

 もう一つ、こだわっているのがしつけだ。

 人間社会のなかで犬が幸せに暮らしていくためには、ある程度のしつけがなされていることが前提になると考えている。しつけをせずに「自由」にさせることは、人間にとっても犬にとっても、不幸だと思う。

「最低限のしつけはしてあげないと、一緒に暮らしていくうえでかわいそうなことのほうが多いと思うんです。1歳になる前に、何が良くて何がダメなのか、しっかり教えています。飼育本を読んでの知識が中心なんですが(笑)」

 1週間、トレーナーに預けてしつけをしてもらったこともあるが、飼い主自身が日常的に同じことができないと意味がない――。そんなことも、これまでの飼育歴のなかで学んできた。それぞれの犬の性格にあわせて、おやつを使いながら、お互いに楽しんでトレーニングをするのがコツだという。

 14年10月、「ペットの王国ワンだランド」(朝日放送制作、日曜午前9時30分から)でMCを務めるようになってからは、日本のペットたちを巡る環境にも関心が向いている。

 番組を通じ、14年夏に起きた広島市の土砂災害で活躍した災害救助犬・夢之丞が、もとは捨て犬だったことを知った。夢之丞を保護し、育てているNPO法人「ピースウィンズ・ジャパン」に、いま個人的に、ふるさと納税制度を使って寄付をしている。

こめちゃんはムッシュにかまってほしがる。でもムッシュは、ちょっとウザそう(笑)
こめちゃんはムッシュにかまってほしがる。でもムッシュは、ちょっとウザそう(笑)

かわいさを伝えるだけでなく裏側も

 東日本大震災で被災地に取り残されたペットたちの身の上に起きた悲劇も、番組で福島県を取材して、知った。発生してすぐにAKB48のメンバー(当時)として被災地に駆けつけた時には、ペットたちのことに考えが及ばなかったと明かす。

「そこに目が行き届かなかった自分が悔しいです」

 少しでも手助けができればと、被災したペットたちを保護している動物愛護団体に、毎月、ペットフードを送ることを始めた。

 ドイツ・ベルリンの動物保護施設「ティアハイム」も訪ねた。日本のペットの扱い方に疑問を抱いた。

「番組自体が、ただペットのかわいさを伝えるだけではなく、ペットを飼っていない人たちも含めていろんなことを考えてほしいという思いで、様々な特集を組んでいます。一部のペットショップの裏側にはどんな実態があるのかといったこともきちんと放送していて、私自身、MCを務めることですごく勉強になっている。とにかく意識が変わってきました」

 仕事を終えて家に帰ると、全力で喜びを表現し、玄関で迎えてくれるかけがえのない存在。これまでに飼ってきた犬たちも、みんなそうだった。

 4月29日に公開される映画「テラフォーマーズ」の撮影中も、家に帰ればムッシュとこめがいやしてくれた。帰宅して、2匹を抱っこすると、湯たんぽのような温かさに気持ちがなごむ。そのまま眠ってしまう幸せな時間。篠田さんは言う。

「まずはかけがえのない存在の2匹のために、私にできることはすべてしてあげたい。そして、ペットを巡る環境をみんなで考えるきっかけになるようなことを、発信していければと思っています」



(朝日新聞タブロイド「sippo」(2016年4月発行)掲載)


篠田麻里子(しのだ・まりこ)
1986年福岡県生まれ。2013年までAKB48の中心メンバーとして活躍。AKB48活動中からドラマや映画等に出演するとともに女性ファッション誌「MORE」の専属モデルを務める。現在「ペットの王国 ワンだランド」(毎週日曜午前9時30分から、ABC・テレビ朝日系)レギュラーのほか、4月21日に最新写真集『Memories』が発売、4月29日公開の映画「テラフォーマーズ」に出演。今秋には舞台「真田十勇士」(9月11日から、東京・新国立劇場他)の公演が控えている

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sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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