犬より猫を飼うのが「楽」?  犬とは違う苦労もあります

(写真は本文と関係ありません)
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  • :ペットショップで、猫は犬よりも飼うのが楽だと聞きました。そういうものでしょうか。
    :山根 適切に飼育をして、しっかりと面倒を見ないといけないという意味では、犬も猫も同じです。基本的に屋内での飼育が求められる猫の場合、犬とは違った苦労もあります。
  • :具体的にはどのようなことでしょうか?
    :山根 特にオス猫は、縄張り意識が強い。そのためマーキング目的で尿スプレーをすることがあります。少量の尿を、尾を立てた状態で噴射する行動で、様々な場所でします。そして去勢手術をしていない場合、オス猫の尿はかなりの臭いを発します。
    メス猫は、不妊手術をしないと、発情期にすさまじい鳴き声を発します。これは近所迷惑にもなりますので、注意が必要です。また、オスメス問わず、家具や柱など様々な所で爪とぎをします。これらはいずれも犬には見られない、人間にとってあまり好ましくない行動です。
  • :でも、犬ほど医療費はかからないですよね。
    :山根 一概に、そうとも言えません。前述のような行動をすることから、不妊・去勢手術は行ったほうがいい。また屋内飼育の猫であっても、感染症予防のためのワクチン接種は毎年行うことをおすすめします。ノミ・ダニの駆除、さらに地域によってはフィラリア症予防も犬と同様に行うべきであるというのが、最近は主流の考え方になってきてもいます。
    それに、猫は体調の悪化を隠す傾向が強い動物です。年に1回は、健康診断を受けさせた方がいいでしょう。猫は犬以上に、体調の変化を人が日々観察してあげないと、「気づいた時には手遅れ」というケースが少なくない動物なのです。高齢になれば様々な疾患にかかるリスクが高まるのは、犬も猫も一緒です。猫は腎疾患になりやすいという特徴もあります。
  • :そうすると、散歩が不要というくらいの違いしかありませんね。
    :山根 確かに、散歩はしなくていいです。ただ屋内飼育の猫は運動不足になりがちです。そのため、家の中で猫が上下運動できるよう、家具の配置などを工夫する必要はあります。それでも太りがちになるので、1カ月に1度のペースで体重をはかり、推移を記録しておきましょう。
    いずれにしても、命を「家族」として迎えるのですから、「どちらが楽か」という視点で考えるのはやめた方がいいですね。自分のライフスタイルも含め、総合的な判断をしてください。
山根義久
1943年生まれ。動物臨床医学研究所理事長、倉吉動物医療センター・米子動物医療センター 会長、東京農工大学名誉教授。医学博士、 獣医学博士。2013年まで日本獣医師会会長を務めた。

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この連載について
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動物臨床医学研究所の理事長を務める山根義久獣医師が、ペットの病気に関する質問にわかりやすく答え、解説するコラムです。
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