新犬舎が完成「時間をとって犬と向き合える」

森の中に完成した新しい犬舎
森の中に完成した新しい犬舎

 広島県神石高原町で建設を進めている新しい犬舎4棟のうち最初の1棟が、予定よりは少し遅れたものの先月完成した。3月末の記者会見で、県内の殺処分対象の犬を4月以降すべて引き取ると宣言してから、ちょうど2カ月。待望の犬舎では、新人を含む6人の担当スタッフが保護犬たちの世話に精を出している。


 木の香り豊かな真新しい犬舎は、コの字形に配された建物の上下2列に15ずつの個室が並び、2、3室ごとに小さな庭が設けられている。どちらの列も、庭の先の扉を開けると、長さ30メートルのドッグランに出る。コの字の縦の部分には倉庫や宿直室などが並び、角のところには診療所。黄色と白に塗られた外壁や柵が、周囲の森の緑に鮮やかに映える。


 ここでは主に、犬を人に馴らすためのトレーニングに力を入れている。新しい飼い主さんへの譲渡を進めるには欠かせないプロセスだ。現在入っている約50頭のうち、半分は4月以降に動物愛護センターなどから引き取った犬だが、残り半分は既存の犬舎にいて、なかなか人になつかなかった犬たち。時間をかけてトレーニングをするため、引っ越してきた。


 その成果はさっそく表れている。これまで警戒心や恐怖心が強く、スタッフの手からおやつを食べることも散歩をすることもできなかった数頭の犬たちが、わずか1週間ほどで落ち着いて散歩できるようになったのだ。新人スタッフの一人は「十分に時間を取って犬たちと向き合い、日々の成長を肌で感じることができる。毎日ここへ来て犬の顔を見るのが楽しい」と言う。静かな森の中にあって人通りがほとんどないため、犬に余計なプレッシャーがかからないことも、いい効果をもたらしているようだ。あまり興奮して吠えることがなく、見に来た人を驚かせている。

 

他の棟の工事も進行中
他の棟の工事も進行中

 担当スタッフに聞くと、工夫を加えた犬舎の造りも、使い勝手がいいと好評だ。掃除のしやすさなどの作業効率はもちろん、たとえば庭を隣の個室との共用にしたことで、犬たちが自然に交わるようになり、社会性を高めるのに役立っているという。


「全頭引き取り」を始めてから、ピースワンコに来た犬の数はすでに100頭を大きく超え、残念ながら予想のペースを上回っている。殺処分ゼロを維持するには、いかに譲渡を進められるかが最大のカギだ。新しい犬舎でしっかりトレーニングをすることは、遠回りなように見えて、実は近道になるだろう。譲渡センターを今後どう展開していくかについても、追ってこの欄で報告したい。

大西健丞
1967年生まれ。NPO法人「ピースウインズ・ジャパン」代表理事。広島県神石高原町にシェルターを設け、捨て犬の保護・譲渡活動に取り組むプロジェクトを運営している。

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この連載について
大西健丞のピースワンコ日記
NPO「ピースウインズ・ジャパン」代表の大西健丞さんが、殺処分ゼロをめざして犬の保護活動に取り組む日々を語ります。
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