キツネとの出会いは札幌では日常? 人間と野生動物の距離感

キタキツネの兄弟(写真はイメージです)
キタキツネの兄弟(写真はイメージです)

 いよいよ夏本番。暑い日が続いていますね。暑くなると涼を求めて出かけたくなりますが、期末試験の採点やレポートチェックに追われています。気分だけでも涼しくなろう! と思い、今日は札幌に住んでいた時のお話をしたいと思います。

 3年ほど前までの3年間、私は札幌市に住み、市内にある大学で働いていました。ある日、大学の駐車場でキツネを目撃しました。野生のキツネを見るのは初めてだったので非常に驚くと同時に、「野生のキツネに会えた!」という喜びがわいてきました。急いで写真を撮ろうと思ったのですが、気づいた時にはもういなくなっていました。

 次の日、私の感動と喜びを学生に伝えたところ、学生からは「どこにでもいるよ」という言葉が返ってきました……。「え、そうなの?」と思ったのですが、続けて「野良犬よりも多いんじゃない?」と言われました。彼らにとって、キツネというのは日常的に見かける動物のようです。

 あまりにも反応がつめたいので(笑)、ほかの学生にも聞いてみました。そうすると想像もしていない言葉が返ってきました。例えば「キツネは病気を持っているから近寄らない」「怖い」「小学生の頃からキツネには近寄るなと言われている」などなど。キツネは彼らにとっては“日常”であると同時に“嫌悪感”や“拒否感”の対象であるということを知りました。

 北海道内の各自治体の公式ウェブサイトを確認すると、「キツネが寄り付かないようにしましょう」や「キツネを寄せ付けない環境づくりに努めましょう」などと書いてありました。野生動物と人間との間には、境界線があることを示していることがわかります。

 余談ですが、黒いキツネが目撃され、住民の間で人気者となったという新聞記事を見つけました(2013年11月27日付、日本経済新聞夕刊)。どうやら突然変異のようです。また、戸田ケ原の自然を再生するという戸田ケ原自然再生事業に取り組む埼玉県戸田市では、その事業の中で「キツネの親子が安心して暮らせる自然の再生」と書かれています(戸田ケ原自然再生事業全体構想 概要版より)。

 キタキツネにはエキノコックス症の問題があるわけですが、同じキツネでも、場所が変われば動物に対する考え方も変わるのですね。興味深いです。

 首都圏で生活をしていると日常的にキツネに出会うことはありません。一方で北海道のお土産物にはキツネのイラストが描かれたものがたくさんありますし、北海道の自然の映像にはキツネが出てきます。私たち北海道外からの人間にとっては、キツネとの出会いは珍しい経験であることから、ついつい餌をあげてしまうことがあり、問題となっています。「観光ギツネ」と呼ばれているそうですが、餌をねだるために道路に出てきることがあり、車にひかれてしまうこともあるそうです。

 北海道ではキツネと人間の間に境界線がありますが、この境界線を超えてしまうと、道民が築き上げた野生動物との距離感を壊しかねません。その地域の人々が築き上げた動物と人間の距離を尊重し、訪問者がその関係性を壊さないよう、学ばないといけませんね。

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