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第6回 子どもが犬に読み聞かせ 「R.E.A.D プログラム」日本でも始まる

保護犬も活躍している(c)大塚敦子
保護犬も活躍している(c)大塚敦子

 欧米では「R.E.A.D プログラム」といって、子どもたちが犬に読み聞かせをする活動が図書館や学校などで盛んにおこなわれている。その活動が、つい最近日本でも始まった。東京の三鷹市立図書館が、「わん!だふる読書体験」と名づけ、子どもたちが本を手に取る機会を広げようと、日本で初めて公共図書館として取り組んだのだ。

(末尾にフォトギャラリーがあります)

 じつは三鷹はわが地元。ぜひ日本の図書館第一号としてR.E.A.D.プログラムにチャレンジしてほしいと三鷹市立図書館にお願いしたところ、ゴーサインが出たのである。そして、JAHA(公益社団法人動物病院協会)のボランティアチームが三鷹市立図書館まで出向いてくれることになった。

 Sippoの読者の皆さんは、村田香織先生のコラム(第24回)などですでにお馴染みだと思うが、JAHAは高齢者施設や病院、学校などを動物たちとともに訪問し、動物とのふれあいをとおして人びとの心を和ませたり、子どもたちに動物との正しいふれあい方を教えたりするCAPP活動(Companion Animal Partnership Program)を、1986年以来無事故でおこなってきた実績を持っている。活動に参加する犬たちは、JAHAのセラピー犬認定を受けた健康でよく訓練された犬ばかりだ。

 読み聞かせプログラムの前には、まず犬との「ふれあい教室」が開かれ、子どもたちは初めて会う犬にはどんなあいさつをすればいいか、一人で歩いている犬とばったり出会ったらどうすればいいか、など、犬との正しいふれあい方を学んだ。

一人で歩いている知らない犬に出会ったら、「木」になって、じっとしていよう。読み聞かせに先立ち、まずは犬との正しいふれあい方を学ぶ「ふれあい教室」がおこなわれた(c)大塚敦子
一人で歩いている知らない犬に出会ったら、「木」になって、じっとしていよう。読み聞かせに先立ち、まずは犬との正しいふれあい方を学ぶ「ふれあい教室」がおこなわれた(c)大塚敦子

 そして、いよいよ本番の読み聞かせ。9月3日におこなわれた1回目の読書体験会には、4歳から12歳の子ども12人と犬6頭、9月17日の2回目の会には11人と6頭が参加した。プログラムでは、子どもと犬とハンドラー(飼い主)が床に座り、子どもが犬に向かって約15分間本の読み聞かせをするのだが、ここで大切なのは、子どもと犬(とハンドラー)が一対一になれて、ほかの子どもの目を気にしなくてもいい環境を確保することだ。読むことが苦手な子どもの多くは、人前で声を出して読むのが恥ずかしい、まちがって笑われたらどうしよう、というプレッシャーを感じている。だから、ほかの子どもたちにからかわれる心配のないところで、犬(とハンドラー)という忠実な聞き手だけを相手に読み聞かせをすることが重要なのである。

会場はつい立てで仕切り、子どもと犬(とハンドラー)が1対1になれるスペースを確保(c)大塚敦子
会場はつい立てで仕切り、子どもと犬(とハンドラー)が1対1になれるスペースを確保(c)大塚敦子

 子どもの緊張を鎮め、リラックスさせるには、犬はうってつけだ。1983年に発表されたフリードマンとキャッチャーの研究によると、自分のペットの犬のそばでは、声を出して本を読んでも子どもの血圧が上がらないことが報告されている。相手をそのままに受け入れ、いっさい批判したり注意したりしない犬だからこそ、子どもたちは安心して読むことに意識を集中することができるのだろう。

 犬はそのうち気持ちよさそうに目を閉じたり、子どもの足にもたれかかったりするのだが、子どもたちの様子を見ていると、犬に本を読んであげることに喜びを感じているだけでなく、とても誇らしそうで、セルフ・エスティーム(自己肯定感)を高めるのにもつながっていることがうかがえる。アメリカでは実際、R.E.A.D.プログラムに継続して参加している子どもたちが、授業中自分から手を挙げるようになった、物事に積極的に取り組むようになった、などのポジティブな変化が報告されている。

 読み聞かせを終えた子どもたちの感想は、「楽しかったー」「もっとたくさん読んであげたかった」「まちがえても何も言わず、とっても読みやすかった」「犬がおとなしくてお利口さんだった」などなど。

 少し離れたところから見守った親たちのほうは、「子どもが自分でいっしょうけんめい絵本を選んだ」「人前に出ると緊張するタイプだったのが、少し成長したようです」「犬が好きなのに飼える環境ではないので、ふれあえてよかった」など。親子双方にとって、とてもポジティブな体験となったようだ。

「わん!だふる読書体験」の最終回は、10月1日(土)。今回の試みはとりあえずこれで終了となるが、犬への読み聞かせをとおしてより多くの子どもたちが読書に親しみ、セルフ・エスティームを築いていけるよう、ぜひ継続を望みたい。そして、こんな活動が全国の図書館や学校に広まったら、ほんとうにうれしい。

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大きなピレネー犬の周りにはたくさんの子どもが集まった(c)大塚敦子
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出典:sippo
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大塚敦子

大塚敦子(おおつか・あつこ)

フォトジャーナリスト、写真絵本・ノンフィクション作家。 上智大学文学部英文学学科卒業。紛争地取材を経て、死と向きあう人びとの生き方、人がよりよく生きることを助ける動物たちについて執筆。近著に「〈刑務所〉で盲導犬を育てる」「やさしさをください 傷ついた心を癒すアニマル・セラピー農場」「いつか帰りたい ぼくのふるさと 福島第一原発20キロ圏内から来たねこ」など。


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