猫の移動ストレスを減らすため、キャリーに慣らして

キャリーケースに入った猫(もみの木動物病院 こねこ塾で)
キャリーケースに入った猫(もみの木動物病院 こねこ塾で)

「犬は人に付き、猫は家に付く」という言葉がありますが、これは猫が飼い主よりも家を大切に思っているという意味ではありません。


 犬は集団で大型の獲物を捕らえるオオカミと同じ祖先を持つ動物です。獲物を追って移動する習性があり、そのため犬は飼い主が外出したり、旅行に行くときに喜んでついていきます。しかし猫は個々の縄張りを持ち、それぞれの縄張り内で狩りをするヤマネコと同じ祖先を持つ動物です。自分の縄張りから出ること、すなわちひとの縄張りに侵入することは猫にとって非常に勇気のいることです。


 完全室内飼育している猫にとって縄張りは家の中ですが、動物病院への通院をはじめ、ペットホテルや引っ越しなど猫が家から出なければならない機会はたくさんあります。そんな時に少しでもストレスを減らすためには、あらかじめ移動に使うキャリーケースに慣らしておくことです。


 まず猫を安全に持ち運びするためにしっかりしたキャリーケースを用意しましょう。前のドアがはずせるタイプがお勧めです。


 最初は前のドアを取り外して猫が普段いる部屋に置き、1日1回お供えするつもりでこの中に猫の好物を入れます。猫は好物を食べるために自らこの中に入ります。これを繰り返せば間もなくキャリーに喜んで入るようになります。自分から入るようになったらドアを閉め、キャリーの隙間から好物を追加して、キャリーケースの中にいるといいことがあると教えます。さらにキャリーを持って家の中を移動したり、外出することにも慣らしましょう。

 

キャリーケースに入った猫(もみの木動物病院 こねこ塾で)
キャリーケースに入った猫(もみの木動物病院 こねこ塾で)

 猫はもともと一日の大半を寝て過ごすため、病気になっても気づきにくく、定期的な健康診断が大切です。ただし、ストレスがかかりやすい動物なので通院には十分な配慮が必要です。


 キャリーケースでリラックスできるようになれば、動物病院に行く時にもこのキャリーケースに入れて連れて行きましょう。移動の際や病院の中ではキャリーケースにタオルをかけるなどして目隠しをすると安心するでしょう。入院中やペットホテル中、緊張して食事も食べないという猫もいますが、慣れたキャリーケースを入院ケージの中に入れてもらうと、食事も受け入れやすくなります。


 移動の苦手な猫にとって、キャリーケースを安心できる場所にしておくことはとても大切です。

村田香織
獣医師、もみの木動物病院(神戸市)副院長。イン・クローバー代表取締役。日本動物病院協会(JAHA)の「こいぬこねこの教育アドバイザー養成講座」メイン講師でもある。「パピークラス」や「こねこ塾」などを主催、獣医学と動物行動学に基づいて人とペットが幸せに暮らすための知識を広めている。

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この連載について
ペットのこころクリニック
犬や猫の問題行動に詳しい獣医師の村田香織先生が、ペットと幸せに暮すためのしつけや飼い方のコツをていねいに解説します。
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