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イヌとネコの「こころの診療科」より

村田香織・sippo|更新|2017/04/18

第49回 「こねこ塾」で伝えたいこと⑩ 日常生活での「社会化」トレーニング! アイデアあれこれ

室内でキャリーを開けて好物を与える(もみの木動物病院 こねこ塾で)
室内でキャリーを開けて好物を与える(もみの木動物病院 こねこ塾で)

 現代の日本のほとんどの地域で、猫をひとりで外出させることは、交通事故や感染症、猫同士の抗争、近隣への迷惑行動などの観点からお勧めできません。室内飼育が基本となりますが、猫は犬と違って散歩などで外出する機会がありません。子猫期に全く外出の機会がなければ社会化不足や刺激不足になりやすく、それが原因で問題行動を起こすこともあります。猫が正常な発達を遂げ、人間社会で幸せに生活するためには、子猫期に多くの経験をさせてあげる必要があります。


 猫をひとりで外出させることはできないため、キャリーケースなどに入れて飼い主とともに外出し、いろいろな経験をつませてあげると良いでしょう。前回のコラムでお伝えしたようにまずはキャリーケースでの移動が大きなストレスにならないように、キャリーケースに慣らすことから始めます。子猫の時期であればキャリーケースや外出先の刺激にも比較的短時間で慣らすことができます。


 子猫を連れて行く場所は、犬を散歩させるように、歩道を歩きながら自動車や自転車を見せるのも良いですし、近所の公園の木陰などに座って小鳥の声を聞かせたり、子供たちが遊んでいるのを見せてあげるのも良いでしょう。子猫はキャリーの中で安全にさまざまなものを見たり、音を聞いたり、匂いを嗅いだりすることができます。


 この時、キャリーでの外出に良いイメージを持たせると同時に、猫のリラックス度をチェックするために、キャリーの網目から好物を入れてみましょう。(好物を入れる際に子猫が出てしまわないように、ドアを開けるのはやめましょう。外出時にはあらかじめおなかをすかせておきましょう。)キャリーの中で好物が食べられるようであれば問題ありませんが、空腹時なのに全く食べられないようであれば時間をかけて慣らしてあげる必要があるでしょう。明らかにおびえている様子であれば刺激が強すぎるので、静かな場所に移動するか、キャリーの網目の部分にタオルをかけるなどして安心させてあげましょう。


 友達の家など室内であれば、窓や玄関から飛び出さないことを確認してからキャリーから出してあげても良いでしょう。この際、警戒している様子であればキャリーから無理に出さずに、自分からキャリーから出てきて周りを探索し始めるのを待ちましょう。おもちゃに興味を示すようであれば、キャリーの前でおもちゃを動かして誘ってみてもかまいません。子猫期であれば多少緊張していても、おもちゃの誘惑に負けて出てきて遊び始めることが多いです。


 また友人宅でも好物を与えると家以外の場所で食べ物を食べる練習になります。この際、飼い主から与えるだけでなく、他の人からも与えてもらうと良いでしょう。さらに家に遊びに来た人など、いろいろな人から与えてもらって飼い主以外の人に慣らす練習をしておきましょう。この際もあらかじめおなかをすかせておくこと、好物を持参することを忘れずに。


 友人宅でも猫が好物を食べないほどに緊張してしまうようなら落ち着くのを待ち、落ち着いてから与えるようにします。また食べ物はドライフードなど固いものよりもウェットタイプのおやつの方が食べやすいでしょう。知らない場所で緊張して食べ物に反応が悪いようであれば、まずは猫じゃらしのようなおもちゃで誘って楽しく遊ぶことから始めましょう。外出時間が長くなる時は大きめのタッパーにトイレ用の猫砂を入れて持ち運び、外出先でも排泄できるようにしておきましょう。タッパーには家で使っている匂い付きの砂を入れておくと猫の理解を助けます。


 成猫になって初めて他の家に行くと緊張しすぎて食事も食べなかったり、排泄を我慢したりということは少なくありません。将来、実家に帰る予定があるなら実家にも慣らしておいた方が良いですし、留守中に預かってもらう可能性がある人がいるのであれば、その人の家にも慣らしておくとよいでしょう。


 我々の動物病院でも猫ちゃんがペットホテルに来たり、入院することがありますが、中には緊張しすぎて全く食事を食べなかったり、排泄を我慢してしまう子もいます。家以外の場所で食べたり排泄したりする経験をさせていくことでこのような問題の予防になります。


 子犬や子猫の時期の経験は、これから彼らが生きていく上で出会うさまざまな困難に打ち勝つための、免疫を与えてくれます。これはちょうど伝染病に打ち勝つために接種するワクチンのように、彼らのこころを守ってくれるのです。残念ながらどんなにたくさんの人や動物、さまざまな刺激とふれあう機会を作っても、生まれつき警戒心の強い性格を、全く警戒心のない性格に変えることはできません。それでもできるだけ、多くの良い機会を与えてあげることで、極端な反応を予防できます。子猫の時期は本当にあっという間に過ぎてしまいます。一日一日を大切に、子猫のために楽しい体験をさせてあげてください。


 ただし注意してほしいことがあります。ご存じのように猫は屋外で逃げてしまうとなかなか捕まえることができません。外出時には猫がキャリーから飛び出したりしないように十分注意し、キャリーから出す際にはたとえ室内でもドアなどが閉まっていることを確認のうえ出すように注意しましょう。また念のためにカラーやハーネスなどを付け、迷子札やマイクロチップも入れておくと良いでしょう。

村田香織

村田香織(むらた・かおり)

もみの木動物病院(神戸市)副院長。イン・クローバー代表取締役。日本動物病院協会(JAHA)の「パピーケアスタッフ養成講座」メイン講師でもある。


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