愛犬・愛猫がジュエリーに すべて手作業の指輪・ネックレス

プリマシリーズの猫
プリマシリーズの猫

 愛する飼い犬や飼い猫と片時も離れずに、いつまでも一緒にいたい--そんな願いをかなえてくれる指輪やネックレスがある。日本の老舗宝飾メーカーの職人が、1点ずつすべて手作業で、愛犬や愛猫そっくりなヘッドのオリジナルジュエリーを作ってくれる。輪郭や顔立ちはもちろん、毛の流れまでもが細かく再現され、飼い主たちに好評だ。

 幅約11ミリのダックスフントの頭部が、18金の指輪のヘッドになっている。本物さながらに繊細に彫られた毛並み。顔全体を埋め尽くす70個もの小さなダイヤは計1・3カラットもある。目には0・03カラットのサファイアが輝く。重さ6・8グラム、ずっしりと高級感あふれる宝石だ。

 これは、「主人公」という意味の指輪「プリマリング」。入倉宝飾(東京都板橋区)が手がける宝飾ブランド「VOFFRING(ヴォフリング)」の看板商品だ。

 ヴォフリングでは、6犬種(ダックスフント、チワワ、プードル、シュナウザー、ポメラニアン、ヨークシャーテリア)の型を用意している。プリマのほか、フロイント、モナミといったデザインシリーズで、犬種ごとのヘッドの指輪やネックレスを展開している。

 一番人気は完全オーダーメイドだ。愛犬や愛猫の写真を元に、ヘッド部を型から起こして作ってもらえる。いずれも地金は、長く愛用できるようにと18金製。目の輝きは、ダイヤモンドやサファイアのほか、sippo限定でルビーも選べる。

 入倉宝飾は大正時代創業の老舗宝飾メーカーだ。ヴォフリングは、3代目で現代表、宝飾職人歴30年超の入倉謙二さん(54)が、一つずつ手作りしている。企画・デザインは、妻の加代子さん(54)が担当している。

 入倉さん夫婦はそもそもが愛犬家。結婚後ずっとダックスフントを飼ってきた。加代子さんは、トリマーの経験もあるほど。現在2人は、カニンヘン・ダックス3頭と暮らしている。

 ヴォフリングの販売を始めたのは3年前。きっかけは、愛犬家の友人の一言だった。「犬のモチーフでジュエリーを作れないか?」。言われてみれば、犬モチーフの宝飾品は少ない。デザイン画を見ただけで完成品の作り方が分かるほどの腕前だった謙二さんにとっても初の試み。腕が鳴った。「自分にしか作れないものが作れる」。試作を繰り返し、友人の愛犬のシェルティーの指輪を完成させた。その後、さらにデザインを練り上げて、市販することに。犬の鳴き声を表す北欧の言葉「VOF」と指輪の「RING」を合わせてブランド名にした。

ワックスを彫る。肉眼では見えない細部まで作り込まないと、良い表情にならない。30~40個ほど彫って、ようやくモチーフが完成するのは、約1カ月後だ
ワックスを彫る。肉眼では見えない細部まで作り込まないと、良い表情にならない。30~40個ほど彫って、ようやくモチーフが完成するのは、約1カ月後だ

 ヴォフリングで完全オーダーメイドを作る場合、工程はこんな具合だ。①写真を送ってもらう。写真を元にハードワックスでモチーフを作る②完成したモチーフの画像を顧客に確認してもらい、必要ならば修正する。「お客様が気に入るまで、何度でもやり直します」と謙二さん。③完成したワックスのモチーフを元に、鋳型を作る④鋳型に金を流し込み、鋳型から取り出す⑤手作業で磨きと彫金。毛並みを一本一本細かく彫る⑥目などに宝石を留めて、最終研磨。完成⑦検品。

 すべてが手作業のため、注文から納品まで2~3カ月かかる。それでも、「この世に一つだけの作品」なので、「こだわって良いものを作り続けたい」と、夫妻は話す。しかも、通常のジュエリー作りとは違った達成感がある、と加代子さんは言う。「お客様が、実際に身につけて、使ってくれていることを、じかに知ることができるので、喜びもひとしおです」

すでに型がある商品は、名前を入れて3~4週間で納品が可能だ
すでに型がある商品は、名前を入れて3~4週間で納品が可能だ

 完全オーダーメイドのジュエリーを購入したある女性からは、直筆でこんな手紙をもらったことがある。「ペットと共に常に一緒にいられる…そういう幸せを届けてくださったことに、感謝の気持ちでいっぱいです」

 実はこの女性は、闘病のための長期入院が決まっていた。注文したのは、長く一緒に暮らしてきた愛犬のジャック・ラッセル・テリアのジュエリー。「ずっと一緒にいたい」との思いからだった。謙二さんは数枚の写真を元に試作品を作った。その確認のために愛犬連れで来店した女性は、「そっくりです!」と喜んだ。

 中には、「亡くなった愛犬の思い出にしたい」という依頼もあった。納品後に、顧客から「入倉さんの愛犬に」とおやつが送られて来たことも。感想をもらうだけでなく、犬を通じたこうした交流が続くこともまた楽しみの一つだ。


入倉夫妻と、ヴォフリングのコレクション
入倉夫妻と、ヴォフリングのコレクション

 謙二さんは1980年、18歳の時に宝飾メーカーに入社。海外での宝石の買い付けから、全国の百貨店や小売店向けのデザイン、企画まで手掛けた。いずれ職人になりたいと考え、実家である入倉宝飾の職人に技術を教わった。そして89年、入倉宝飾に戻り、修行を本格的に始めた。宝飾の世界は、型取り、研磨、彫金など、専門ごとに職人の分業制を取る会社が多い。だが、謙二さんはオールマイティーな職人を目指してきた。これまでに培った技術がヴォフリングに生きているという。

 今回、sippoショップ限定で、初めて猫モチーフを取り扱う。謙二さんは試作品を作る中で、猫は微妙な毛流れの違いが表情を変えることに気づいた。猫ならではの丸みを手彫りで再現しつつ、リアルさとかわいらしさを両立させた。愛犬家ながら、猫の作品を作るうちに「猫も好きになりました」と顔をほころばせる。

 ふつう、宝飾品は10年ほどでリフォームに出すことが多い。デザインに流行があるためだ。だが、犬や猫がモチーフの場合、デザインに流行り廃りがなく、長く使い続けられる。「本人だけでなく、子や孫にも受け継いで、長く使ってほしい」と、入倉さん夫妻。既存の型で作る商品群についても、より多くの愛犬家の注文に応えられるよう、今後、犬種を更に増やす予定という。


VOFFRING(ヴォフリング)

ワックスの見本。一番時間をかけるのは顔の造作だ。2.5倍の拡大鏡を見ながら、下まぶたや鼻の立ち上がり、耳の位置を決めていく。目の位置を0.1ミリ寄せるだけで、すっかり面変わりしてしまう。最適な位置を見つけるため、何度も作り直す
ワックスの見本。一番時間をかけるのは顔の造作だ。2.5倍の拡大鏡を見ながら、下まぶたや鼻の立ち上がり、耳の位置を決めていく。目の位置を0.1ミリ寄せるだけで、すっかり面変わりしてしまう。最適な位置を見つけるため、何度も作り直す
彫金では、毛並みの1本1本を鏨(たがね)で丁寧に彫る。磨いて光らせるのとは違った光が出て、リアルさが増すという。犬種ごとに毛の流れや曲線も異なる。この調節には、熟練の腕が必要だ
彫金では、毛並みの1本1本を鏨(たがね)で丁寧に彫る。磨いて光らせるのとは違った光が出て、リアルさが増すという。犬種ごとに毛の流れや曲線も異なる。この調節には、熟練の腕が必要だ
完成したジュエリーは箱入りでお届け
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sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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