年齢と体力にぴったり 保護犬シロとの出会い

保護された犬の数だけ物語がある──。
「保護犬シンデレラ・ストーリーズ」では、そうした保護犬たちを取り上げ、ご紹介する。
今回は、孫に背中を押され保護犬を家族に迎え入れた、桑原恭子さん（埼玉県在住）に話を伺った。

「ばぁば、一緒に犬を見に行こう！」

　動くたびにふわふわの毛が揺れるシロは、人目を引く美しいポメラニアンだ。
「今日は取材だから、昨日きれいにしてもらったのよね、シロちゃん。毎月、クリニックと美容院に連れていっているんですよ」
　病院では毎月健診を受けている。今は夏に向けて、ノミ・マダニ対策のための「フロントライン プラス」を投与してもらっているのだとか。食事も病院の指導のもとしっかり管理。おかげで、シロの毛はツヤツヤだ。
　保護犬だったシロが桑原さんの元にやってきたのは2011年の暮れのことだった。
「朝日新聞に、被災犬の里親探しのイベント（主催・ワンワンパーティクラブ）が載っていたんですよ。それを知った孫娘に『私もお世話を手伝うから、ばぁば、見にいこう！』と誘われて行ってみたらシロちゃんがいたの。シロちゃんは孫娘のところに駆け寄ってきて、ペロッと手を舐（な）めたのよ。それでもう決まりね（笑）」

年だからこそ保護犬がいい

　桑原さんは、中学校の理科教師として定年まで勤め、その後も非常勤で70歳まで仕事を続けた。仕事をリタイアする少し前に、15年も一緒に暮らしたハスキー犬が老衰で亡くなった。夫は他界しており、子どもたちも家庭を持ってすでに家を出ていた。
「一人暮らしといっても、すぐ近所に娘夫婦が住んでいて、孫たちもよく遊びにきてくれているんですよ。畑仕事をしたり、自分の服を作ったり、震災の後にはボランティア活動としてお手製のポーチなんかを作って被災地に送ったりと、毎日を慌ただしく過ごしていました」
　それでも犬を飼いたいという気持ちはあった。
「でも私はもう70歳を超えましたので、とても責任が持てないと思っていたんです。そこを孫娘に背中を押してもらいました。小型犬のシロちゃんなら、力は強くないし、抱っこもできるでしょう。それに当時のシロちゃんは３歳でした。ポメラニアンの平均寿命は15歳くらいです。その辺りのことも考えました。私たちぐらいの年になると、あえて若い犬を選ばず、保護犬を選ぶ人も多いんですよ。自分の年齢と犬の寿命が最後はちょうど釣り合うように」

シロちゃんと毎日をたのしく過ごしたい

　飼い犬を看取（みと）るのは義務だから、と自分の健康にも気を配るようになった。シロがきて、桑原さんの暮らしはすっかり変わった。
「朝、2階から起きていくと、リビングの曇りガラスの戸の向こうに、シロちゃんが透けて見えるのよ。毎朝それがかわいくて（笑）。日中、畑仕事をするときも、ミシンに向かっているときもシロちゃんと一緒。散歩していると、いろんな人とお話をするんですよ。私のボランティア活動のことを話したら、布を七反も提供してくださった方も！シロちゃんのおかげでお話が広がって、なんだか導かれているみたいな気持ちになることもあるくらい。シロちゃんありがとうね。シロちゃんは私の宝物よ」

（朝日新聞　タブロイド「sippo」 No.19（2013年6月)掲載）

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電話：080-7051-8243（10時～18時）
メール：sippotkow@wanwan.org （朝日新聞『sippo』を見たとお伝えください。）
HP：NPO法人ワンワンパーティクラブ（別窓で開きます）

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