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from 動物愛護団体

ALIVE・ALIVE|更新|2015/11/06

東京都内の劣悪ペットショップを取り巻く問題と今後の課題

過去37回もの行政指導を受けるも改善がなされず、2015年4月に東京都福祉保健局から業務停止命令が出された昭島市のペットショップの実態が報じられたのは記憶に新しい。
しかしその後、第三者に犬猫を譲り渡す等の指導により、最終的に販売目的の犬猫の数を0にして犬猫等販売業を廃止、違法事項が改善されたとして「犬猫以外の動物」の販売業等を再開した事実は、関係者に誤ったメッセージを送ることにならないか―。
(動物の健康と安全の保持上の問題等について指導・改善させることが重要なのであり、販売動物をペット(家庭動物)に移行することを認めたり、第三者に譲り渡す等して頭数削減を図ることは改善対象とすべき事象の損失を招きかねず、法が適切に運用されないおそれもある。本件にかかわる行政文書(平成26年7月に行政の動物監視員発出の注意指導書)には、「不適が認められた事項」として33にわたる該当事項があり、第5条2号「ニ 動物が疾病にかかり、又は障害を負った場合には、速やかに必要な処置を行うとともに、必要に応じて獣医師による治療を受けさせること。」も含まれているのである。)
そう懸念する私達にむけて、この問題に精力的に取り組まれてきた東京都議会議員の塩村あやかさんが、行政処分までの経緯を綴ってくださいました。


東京都内の劣悪ペットショップを取り巻く問題と今後の課題(東京都議会議員 塩村あやか)

■日本初の業務停止命令

 去る4月21日、NHKをはじめ各局のヘッドラインニュースで報じられた通り、動物の愛護及び管理に関する法律第19条第6号に基づき、東京都福祉保健局(以下、当局と記載)は第一種動物取扱業者「有限会社パピオン熱帯魚」に対して業務停止命令を発動した(平成27年4月21日から平成27年5月20日まで、哺乳類、鳥類、爬虫類の販売及び保管の業務の全部停止)。

 東京都 報道発表資料 第一種動物取扱業者に対する行政処分について
 http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2015/04/20p4m100.htm

 かつて「有限会社パピオン熱帯魚」(以下、パピオンと記載)は15年以上に及ぶ杜撰な飼養管理状況が問題視され、登録の取消しを求める声が多かったものの、当局は犬猫の飼養保管頭数を減らす「改善」方針を貫いていた。最終的に、5月20日(業務停止期間終了日)に犬猫等販売業の廃業届を業者に提出させ、犬猫の販売・保管業を営むことはできなくなったが、違反事項は改善されたとして犬猫以外の哺乳類・鳥類・爬虫類の販売(魚類は業登録なしで販売可)は営業再開を許容することで、パピオンに対する行政処分には一応の決着がついた形となった。しかし、犬猫の頭数削減に主眼を置き、所有者責務であるはずの動物の健康と安全の保持にかかる負担を第三者が担うことを「改善」とする指導・措置がとられた本件は、私を含め、多くの方が理解に苦しまれたことと思う。


■問題発覚と改善にむけた取組み

 私はこの問題に平成26年5月より取組み、6月には一般質問で取り上げ、その後何度も議会で取り上げている。然るべき対応を求めた私と、15年にも及ぶ行政不作為ともとれる状態が明るみに出ることに抵抗を示した当局で、1年近くに及ぶ攻防が続いた。

 5月に現地視察を行った。店内は蝿だらけ、床は汚物がこびり付いた箇所が散見され、異臭でまともに息もできない状態で、正直、何度も吐き気を催した。狭い鳥用ケージに猫が複数頭詰め込まれており、飲水も入っていない。店内には確認できただけでも5頭の犬がいたが、その殆どが被毛が抜け落ちて皮膚が見えているなど、動物愛護管理法及び関係法令に適合しているとは到底思えない状況であった。炎天下の店外には複数頭の犬がポールに繋がれており、数十以上の鳥かごが店外に置かれていたが、中には1つの鳥かごに20~30 羽以上の鳥が犇いて身動きが全く取れなくなっている状況も確認された。

「不潔すぎる。誰がどう見てもアウト。獣医師と連携できているのか?帳簿はしっかり付けているのか?」様々な疑問が生じた。近隣住民にヒアリングも行ったが、「もう10年以上この状態。迷惑している」等の声も聞かれた。視察を終えて私はすぐに資料を作成、担当課職員にその惨状を見せたが、やる気が感じられない。やむを得ず、一般質問で取り上げることにした。

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 こうした多頭崩壊案件において先ず確認をするのが「狂犬病予防法」に基づいてワクチン接種が確実に実施されているかどうか、である。しかし何度確認しても「問題ない。地元とも連携をとっている。問題があれば動いている」等の、明言を避けるかのような返答しか得られず、端的に「接種はしてあるのですね?」と追及してはじめて、「そのとおりです。」と回答した経緯がある。

 この時点で、私がみてきた店の実態と客観的事実を動物愛護管理法に照らすと、問題があると思われた項目は7つあった。

1. 第2条「基本原則(動物福祉に鑑みた環境の確保)」
2. 第12条「登録の拒否(狂犬病予防法関連)」
3. 第21条「基準順守義務」
4. 第21条の2「感染症の疾病の予防」
5. 第22条の2「犬猫等健康安全計画の順守」
6. 第22条の3「獣医師等の連携の確保」
7. 第22条の6「犬猫等の個体に関する帳簿の備付け等」

■問題山積・・・厳正な対処を求めたが

 店舗に隣接した土地に犬や鳥が置かれていることが気になり、その土地の所有情報を国土交通省に照会したところ、不法占有であることが判明。すぐに当局職員に伝え、動物愛護管理法に抵触しているだけではなく、土地を不法に占有している業者の登録を許し更新までしているのかと抗議。東京都は不法占有の事実を把握してなかったとして、犬たちは移動し庇のある敷地内に入った。

 その後は東京都動物愛護相談センター多摩支所の獣医師職員が立入検査と改善指導を続け、ようやく11月3日に改善勧告が出された。本年に入ってからは、2月19日に出された業務改善命令に従わなかったとして4月21日に業務停止命令に踏み切ったが、ここに至るまで延べ36回もの指導を要している。 

 つまり、日本の動物愛護管理行政の手本となるべき東京都が、36回もの指導を受けても飼養環境の適正化が困難であった業者に対し、「最終的に頭数を減らせば登録の取消しはしなくてもよい」と誤解を受けかねない前例を作ってしまったのである。私は何度も「本件をモデルケースとすべく、厳正な対処を」と要請を続けてきただけに、忸怩たる思いでいっぱいである。


■抜本的改善を阻む3つの要因

①明確な飼養施設基準がないこと

 新聞でも報じられたとおり、10年以上に渡ってこの問題を放置し、適切な時期に厳正な対処をしてこなかった当局の姿勢には問題があり、その責任は重いものであることは大前提であるが、1つだけ弁解の余地があるとすれば、

「具体的な数値基準がないので、判断が出来なかった。」という点である。

 つまり、衛生状態や、飼養施設(ケージなど)に数値規制がなく明確な判断基準がないために、登録の取消しまで進めることができなかった、というのである。前回の法改正で置き去りになった課題でもあり、法の実効性確保のためにも今回の教訓を生かさなくては闇で失われた生き物たちの命も浮かばれないだろう。


②行政裁量の改善判断と前提条件

 本件に取り組む過程において、誠意に欠ける対応や事実と異なる回答など当局担当課サイドの問題も散見されたが、中立公正な判断のもと、交渉にあたってきた。

 今回、地球生物会議(ALIVE)だけでなく、(公社)日本動物福祉協会のスタッフと連携を取りながら対応してきたが、最後の2ヶ月間は当局との折衝に何十時間も費やすこととなった。その争点の一つとなったのが、当局が店主に提示した「犬猫を0にすること」という指導である。不適正飼養の問題は犬猫だけではないはずだが、第一種動物取扱業の登録取消しを逃れたければ犬猫を0にして最終的に犬猫等販売業廃業届を提出する以外に道はない、といわんばかりである。

 報道発表資料をみると、業務停止命令の根拠法令として『第一種動物取扱業が遵守すべき動物の管理の方法等の細目』より二項目をあげている。

(動物の管理)
第五条 動物の管理は、次に掲げるところにより行うものとする。

一 動物の飼養又は保管は、次に掲げる方法により行うこと。

イ、飼養又は保管をする動物の種類及び数は、飼養施設の構造及び希望並びに動物の飼養又は保管に当たる職員数に見合ったものにすること。

ハ、ケージ等に入れる動物の種類及び数は、ケージ等の構造及び規模に見合ったものとすること。

 そもそもなぜこの二項のみであるのか置くとして、店内の販売用犬猫頭数が0になれば、主な違法事項は改善されたとして業務停止命令期間終了後に営業再開(犬猫以外の動物の販売等)となる可能性が高まる。(故に、無闇に動物を引き出せば、改善対象となる動物や事象が消失し、登録の取消しが困難になる)

 また、当局は「一時預かりは譲渡とみなさず、(店内の犬猫頭数が減っても)改善したとは判断しない」等、常々話していた。ならばと、信頼のおける団体が苦渋の決断の末に、状態が悪い動物たちを一時的に預かった。

 万全を期すためにその旨を書面に残し、さらに当局担当課に直接伝えておいたにも関わらず、終盤で「犬猫は全頭譲渡された」と翻されたことにも不信感が募った。

 それでは話が違うと問い質す私に対し、部長は「一時預かりも譲渡であり改善です」と言い、いつの間にか前提条件が変えられていたことが判明した。数時間にも及ぶ抗議もむなしく、登録の取消しには至らない事態となった。

 また、忘れてはいけないのが、当局から「犬猫等販売業の廃止(犬猫0)」を示されて切羽詰った店主はボランティアに全頭を押し付ける形で譲渡としていた。しかし1人のボランティアが全頭の面倒を見る事は実質不可能であり即譲渡、その先でトラブルが発生したという報告もある。このような状態に陥ることを予測できなかったのか、店内から犬猫を放出すれば「改善」といえるのか、甚だ疑問である。そして何より、違法事項の改善方策と評価軸を「動物の種と数」に置き、「一時預かり個体」は「譲渡」に含めないとする当然の見解、前提条件を勝手に変更した責任はどこにあるのだろうか?

 さらに、狂犬病予防法に基づく接種に関しても、当初「接種されている」とした担当課職員の回答は事実と異なることが判明した。つまり、議員(私)の質問に対し正確ではない情報を伝え、狂犬病予防法違反の疑いがあったにも関わらず、関係機関と連携をとらずに問題を見逃していた可能性があるというのである。これは地方公務員法にも抵触しかねない深刻な問題と捉えるべきだろう。


③手段を選ばぬ動物愛護団体

 法的効果を伴う問題解決を目指して取り組んできたなかで、今回とても大変だったのが、「犬猫0」が改善とみなされる可能性があるにもかかわらず、手段を選ばず「全頭引き出そうとした」、動物愛護団体の存在である。

 劣悪な環境に置かれた動物たちを想う気持ちは痛いほどわかるが、善意の第三者を利用し、店主に実態の伴わない情報を伝え、店が所有する犬を引き出そうとする危険な手法は、「動物を騙し取ろうとしていると受け取られても仕方ないのではないか?」と法的な観点から問題視する識者もいたほどである。

 この計画がかなり進んだところで、相談を受けた私と、信頼のおける団体はすぐにパピオンの店主に事情を話したが、店主の判断でその話にはのらなかったとみられ、問題発生の阻止ができたことに安堵した。もし実行されていた場合、改善命令はおろか、ペットショップにおいては初となる業務停止命令も出せなかったのではないか。善意の協力者が違法行為に巻き込まれる可能性もあったので、何をおいてもそれだけは避けなくてはいけなかった。

 また、私に対する嫌がらせも酷く、名誉棄損ともとれる誹謗中傷を様々な愛護団体や愛護関係者に流布し、事実と異なることをメディアにまで売り込みに行っていたことがわかり閉口した。ここまでの行動をとるケースは稀かもしれないが、動物レスキューをめぐって対立が生じるのは決して珍しい話ではない。

 法の実効性確保を前提として、状況に応じた冷静な判断ができる団体や個人が増えなければ、日本の動物愛護と福祉の現状、所轄行政庁や法律を変えることは難しいのではないかと切実に感じた一件でもあった。

 最後に。良識ある多くの動物愛護家や団体の方のサポートには深く感謝をしている。最善の結果を残すことは叶わなかったが、本件で明るみとなった課題は今後に活かすべく引き続き取り組んでいくことを記しておきたい。


(会報「ALIVE」No.116号より)

ALIVE

ALIVE(アライブ)

1996年設立のNPO法人「地球生物会議(ALIVE)」。地球上に生息するすべての生物が地球の構成員として尊重される社会を構築することを理念として、動物、生命環境などに関する実態調査、改善提言、普及啓発および法律改正運動などを全国規模で行う非営利団体。
URL:http://www.alive-net.net


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