互いに心地よい柴犬との距離のはかり方④

「犬は家族の一員」という考えが浸透して、人と犬の距離が縮まった。
しかし、日本犬は心を許した飼い主に対しても一定の距離をとることが多い。
互いに適切な距離をはかるために、犬種の特性や暮らしを見直そう。
Text:Shio Kaneko Photos:Minako Okuyama
監修:山下國廣先生



離れていても呼べば来る関係が理想

適切な距離をはかるための工夫

 日本犬はある程度離れた方が心地よいと感じる。尊重することも大切だが、必要に応じて近づく練習を。

計画的なトレーニングが必要な場合も

適切な距離と近くに来ないことは別問題

 日本犬は密着されることを好まない犬が多い。しかし、離れていることが良いとは限らない。「例えば、呼ぶと逃げる、呼べば近くに来るが捕まらない距離を保っている、という状況。距離感とは全く別の問題です」と山下先生。このような状況は「呼ばれて行ったら損した」という経験を重ねさせてしまった結果だろう。また、犬の方から近くに寄ってくるたびにオヤツを与えるのはNG。普段の接し方を見直すと共に、計画的なトレーニングを行おう。

①後ずさりしないように教える

 距離を縮めたい場合は、ごほうびでおびき寄せても効果は少ない。通常より近くに来たら、ほめてごほうびを与える方が効果的。また、手を伸ばすととっさに後ずさりする犬もいるので、手を伸ばした直後に反対の手でごほうびを与える方法もよい。どちらも犬が自ら距離を縮めたことへの報酬なので、ごほうびを与えるタイミングは犬が近づいた後にする。

犬を驚かせないように手を伸ばす

 犬に向かって手(写真は左手)をそっと伸ばす。急に動くと驚く犬が多いので注意する。

伸ばした手と逆の手でごほうびを

 犬が後ずさりしなければ、伸ばした手と反対の手からごほうびを与えよう。

②不意に呼んだ時に来る練習

 犬が飼い主を見ていない時、他のことに関心を向けている時に不意に呼んで、来たらほめてごほうびを与える。呼んでも来ない場合には、来るまで根気よく呼び続ける。時間がかかっても来たら、ほめてごほうびを与えよう。

 もし来るまで呼び続けることが難しい状況であれば、2 ~ 3回呼んで来なければそのまま放置、しばらく経ってから再度呼ぶ。呼びへの反応が良くない状態なので、この練習の時以外は食べ物を与えないように徹底する。

犬が飼い主を見ていない時に呼ぶ

 犬が他に関心を向けている時に呼ぶ。他への関心が強すぎない時がよい。

犬が呼びに応えたらほめる

 不意に呼ばれた犬が来たら、あるいは振り向いたらほめる。

犬が自ら近くに来たらごほうび

 犬が来たらごほうび。振り向くだけで終わったら根気よく呼び続ける。

③首輪を触る・装着する練習

 日本犬にとって適切な距離を尊重することは大切だが、時には接触が必要なこともある。例えば、首を触ろうとすると離れる犬の場合、首輪のつけ替えができなくなってしまう。日常生活に支障が出ることや出そうなことは、犬が負担を感じることでもトレーニングをする必要がある。我慢させるだけのトレーニングにならないように、犬が「心地よくない距離」まで飼い主が近づくことに対して、見合う報酬を工夫して与えることが重要だ。

犬の首をそっと触る

 犬が落ち着いている時にそっと首を触る。急な動作は犬が驚くので控えること。

ごほうびを与える

 触っても後ずさりしなかった(心地よくない距離を我慢した)ことに対してごほうびを。

首輪を装着する

 犬に首輪を装着する。最初は素早く行うために、着脱が簡単なタイプの首輪で練習する。

最後はほめてごほうびを

 首輪を装着できた(我慢した)ことに対して、ほめてごほうび。最後は必ず報酬を。

※首に触るとうなる犬の場合は専門家に相談すること。

山下國廣先生からアドバイス

 スキンシップというのは相互的なものです。自分はかわいがっているつもりでも、相手が受け入れる気になっていなければ、痴漢に等しい迷惑行為。犬にとっても同様です。時には我慢する犬もいますが、喜んで受け入れているとは限りません。我慢するほど迷惑行為(スキンシップ)がエスカレートすることがわかれば、逃げたり威嚇したりするようになります。逆にスキンシップを図っているうちに犬の方から距離を縮めてくるようなら、心地よいと感じる距離が縮まったわけで歓迎して良いと思います。ただし、犬がスキンシップを求めるたびに必ず応えてしまうのは問題です。犬の要求には応えたり応えなかったりして、要求が必ず通る習慣を作らないように注意。

 適切な距離感をはかるために、まずは互いにベストな距離感を見極めてください。犬と飼い主さんのベストな距離感が大きく違う場合、どちらに合わせるべきか、あるいは、どのあたりで妥協するべきか。あらかじめ距離の規準を作ること。距離の規準がないと、その場に応じて無理な要求をしたり無計画な妥協をしたりすることになり、良い関係が築けないので注意しましょう。


監修:山下國廣先生

日本獣医畜産大学(現日本獣医生命科学大学)卒、獣医師。犬のトレーニング、問題行動治療を行う「軽井沢ドッグビヘイビア」主宰。家庭犬のしつけ指導から作業犬の訓練まで、幅広く活動している。災害救助犬としても活躍した甲斐犬のすぐり(オス)と、15年7ヶ月を共に過ごした。

軽井沢ドッグビヘイビア https://www.karuizawa-dogbehavior.com/

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