「特定成猫」って何? 猫カフェ夜10時まで営業OKの異常

 すでに報道でも詳細が報じられているところですが、4月27日に開催された中央環境審議会動物愛護部会で、猫カフェ等成猫の展示・貸出・販売について、午前8時から午後10時までOKを本則とすることが承認になりました。これまでは「午後8時まで」が本則で、「午後10時まで」は経過措置として認められていましたが、一度も本則が施行されることなく、改正となってしまいました。



「特定成猫」って何?

 そして、これに伴い「特定成猫」なる文言が登場することが示されました。「とくていせいびょう」って一体何!?と驚いたのですが、4月21日まで行われていたパブリックコメントにも出てこなかった用語です。

 

特定成猫の条件

①生後1年以上であること。

②午後8時から午後10時までの間に、休息できる設備に自由に移動できる状態で展示されていること。

③1日の展示時間が合計12時間を超えないこと。

 特定成猫とは、上記①~③のいずれにも該当する猫のことだそうですが、この猫の飼養施設についての規制はややこしいです。


 途中で読むのをやめないでほしいのですが、「夜間のうち展示を行わない間に、顧客、見学者等を立ち入らせないための措置が講じられていること(販売業、貸出業、展示業を営もうとする者であって夜間のうち特定成猫の展示を行わない間に営業しようとする者に限る)」という、一読では非常に意味をとりかねる建てつけになっています(業者に「意味がわからなかった」と言い訳を許すような作文はやめてほしいものです!)。


 つまり、「顧客、見学者等を立ち入らせないための措置が講じられている」場所に猫がいるときは事業者が展示を行っていないと解されるわけで、「休息できる設備」はあくまで顧客、見学者等がいる場所での設備ということになります。


 これまでも「休息できる設備」とは「顧客等との接触や照明・音響に晒されている状態を避けることが可能であって……」との見解が出されていますが、触れる高さのキャットタワー程度の設備で許されてきているのですから、またこの部分が自治体の裁量に任されるとどうなるか……やはり実効性の面で疑問が残ります。


 しかも、自治体の許可を受けて特定成猫取扱者になったりするわけでも何でもないのに、なぜこんな名称を設けてまで本則を変えることにしたのか、終了後には愛護関係者から怒りが出るばかりでした(許可制をつくれと言っているわけではなく、すっぱり午後8時までにすれば明快だという意味です)。



パブリックコメントの主な意見は反映されず……

 当会で送った意見は全文をウェブサイトに掲載しましたが(概要は下記参照)、これ以外にも、夜間は行政の立入が困難であることが予測されること(自治体の了承はとったのか?)、夜しか時間が取れない層への純血種の猫の販売促進につながる側面があること等、もっといろいろな観点での問題が噴出しています。

 

当会意見概要

・国が積極的に特例を設けて保護することは不適切。改正案においても、なぜ午後10時まで積極的に延長しなければならないのか明確な理由が書かれておらず、特例を設けるべき根拠が存在するとは考えにくい。

 

・幼齢であろうが成猫であろうが、一般的な飼育者の感覚から夜間営業は理解しがたい。そもそも犬猫の夜間展示を禁止するに至った経緯としても、社会通念や国民の動物に対する愛護感情への侵害といった社会的な要素が大きく考慮された経緯がある。特例を設けることで、「猫なら多少無理をさせてもよいのだ」と国民にメッセージを発することになる。安易な参入を許さないためにも、規制は厳しいほうがよい。

 

・「展示時間の合計が1日12時間を超えない場合は」とされているが、成猫でも1日の睡眠時間は人間の2倍とも言われる。8時間に抑えるべき。

 

・猫カフェに限らず、高齢猫の展示には健康診断等の配慮事項が盛り込まれているが、展示・ふれあい等に高齢動物が使われているのは猫に限らない。すべての高齢動物とするべき。

 パブコメの結果は、非常に簡易にまとめられたものが公表されただけで、例によって批判的な意見は結果に反映されていません。


 最も不思議だった高齢猫条項については、業者が守るべき細目の第5条第2項で動物の疾病等に係る措置が定められているため、特に高齢猫を展示する際の配慮について明記することとしたと書かれていますが、猫だけを特別扱いしなければならない理由はさっぱり明らかにされておらず、意味がわかりません。動物の疾病等に係る措置が定められているから他の高齢動物について言及が不要なのであれば、高齢猫についても言及する必要はないはずです。


 つまり、「猫について何か追加で決めてやったのだから夜10時まで展示してもいいでしょう?」という言いわけ条項なのでしょう。しかも「展示するな」ではなく「健康診断などをしろ」だけです。


 全体に、どんどんわけのわからない規制になってきています。



今後への懸念……生後56日齢規制は大丈夫?

 折しも、東京都が劣悪な環境で飼育していた猫カフェに対し30日間の業務停止命令を出し行政処分を行っていますが、処分が行われた日はパブコメの締め切り日でした。改善勧告の期限は3月26日だったので、パブコメが終わるまで意図的に遅らせたと思わざるを得ません。


 新しい飼い主探しのための一時的な接触であればいざ知らず、猫という動物に不特定多数の人間を触れ合わせ続ける商売が好ましいとは思えません。猫カフェ自体をもっと開業しにくくするべきですが、一方で国が「夜間もOK」という優遇策を決めてしまい、開業のインセンティブを高めてしまっています。


 このような状況で、今後、業の適正化を図る方向へ進んでいけるのでしょうか。


 この日の愛護部会では、生後56日齢規制に関連し、犬猫の親等から引き離す理想的な時期に関する調査(環境省が行っている飼い主へのアンケート調査)についても議題になりました。そして、その中で「アンケートの結果によっては法律が実施されないと誤解されないよう、説明したほうがいい」との指摘がありました。


 猫カフェ規制で本則が改正されてしまったことから、そのような懸念が高まっていることを受けての発言かどうかはわかりませんが、この2つは構造が似ています。


「法律がないと本則に戻れないのはかなり異常」とも指摘されていましたが、さらに異常なことが起きないよう、働きかけをしていかなければいけないでしょう。

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この連載について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する連載です。
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