イヌ・ネコの症状辞典

意識を失う

 突発的または発作的に、急に不快になって倒れてしまう一過性の意識障害を失神といいます。

 脳の活動には、酸素やグルコース(ぶどう糖)が必要です。何らかの原因で脳の血流が急激に減少したり一時的な停止が起こると、意識が消失して筋肉の緊張が低下し、脱力状態になり失神するわけです。

 失神は、ネコよりイヌに多いようです。イヌのほうが飼い主の監視下にあるため、ネコより気づきやすいのかもしれません。

原因
 
 失神には、心臓に異常がある場合(これを心臓性失神と呼びます)と異常がない場合があり、後者の多くは神経調節性失神と考えられています。
●心臓に異常がある場合
 心臓の病気があると、心拍出量が低下して脳に虚血が生じたり、肺を循環する血流が減少して低酸素状態が生じたり、重篤な不整脈のために心拍出量が低下したりすることがあります。これらが原因となって、心臓性失神が引き起こされます。

●心臓に異常がない場合
 神経調節性失神とは、健康な動物でも起こる一過性の失神です。神経調節性失神は、様々な検査を行っても原因が特定できません。しかし、感情的なストレスや、恐怖、不安、痛み、激しい運動などが誘因と考えられます。
 何らかの原因で、静脈の還流量が減少すると、交感神経の緊張と副交感神経の抑制が生じます。続いて起こる複雑な神経反射により、最終的に血管が拡張し心拍数が減少します。結果的に、脳の血流量が減少して失神が起こります。
 失神が心原性か非心原性かを鑑別するためには細心の注意が必要ですが、鑑別できないことも多々あります。
観察のポイント
 
●失神前の行動
 失神を起こす前に何をしていたでしょうか。激しい運動をしていた、極度に興奮していた、おとなしく座っていたなど、具体的に思い出してください。

●失神の持続時間
 心臓性の失神で長時間続くときは注意してください。

●ほかの症状を伴う
 最近、散歩の途中で動かなくなることがあったなどのいわゆる「運動不耐性」(→運動をいやがる、疲れやすい〔症状とケア〕)が観察されれば、心臓の異常が考えられます。
考えられる主な病気
 
■先天性心疾患
重症の動脈管開存症[イヌ、ネコ]
重症の心室中隔欠損症[イヌ、ネコ]
重症の肺動脈狭窄症[イヌ、ネコ]
中等度から重症の大動脈狭窄症[イヌ、ネコ]
ファロー四徴症[イヌ、ネコ]
アイゼンメンジャー症候群[イヌ、ネコ]

■後天性心疾患
犬糸状虫症[主にイヌ]
僧帽弁閉鎖不全症[主にイヌ]
心筋症(拡張型心筋症、肥大型心筋症)[イヌ、ネコ]
心タンポナーデを伴う心膜液貯留[イヌ、ネコ]
不整脈(頻発する心室性不整脈、頻脈、徐脈)[イヌ、ネコ]
極度の緊張・恐怖[イヌ、ネコ]
ナルコレプシー[イヌ]
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