イヌ・ネコの症状辞典

鼻に障害がある

 イヌ、ネコにみられる鼻の障害には、鼻水、くしゃみ、鼻出血、いびき、喘鳴ぜんめいなどがあります。重症化すると呼吸が苦しくなったり、においをかぐことができないために食欲不振に陥ったりします。

 イヌは犬種によって鼻の形が大きく異なります。鼻の短い犬種(パグ、ペキニーズ、フレンチ・ブルドッグなど)では、軟口蓋過長症なんこうがいかちょうしょうになることが多く、鼻の長い犬種(シェットランド・シープドッグ、コリーなど)では、鼻の短い犬種に比べて鼻の腫瘍しゅようが多くみられる傾向にあります。

 ネコでは感染症による鼻の異常がよくみられます。

 また、イヌ、ネコは歯の病気によって鼻に障害を起こすことがあります。鼻に障害があるから、必ずしも鼻の病気であるとは限りません。

 通常、イヌやネコの鼻はぬれていますが、鼻が乾いているときは体調を崩していることがほとんどです。しかし、鼻の病気である危険性はあまりありません。

原因
 
●鼻水、くしゃみ
 鼻の主な症状は鼻水、くしゃみです。くしゃみは反射的な鼻からの空気の排出で、通常は鼻水を伴います。鼻水は性状によって、漿液性しょうえきせい(鼻水がサラサラしている)、粘液膿性ねんえきのうせい(鼻水がドロドロしていて黄色い)、出血性(血が混ざっている)に分けられます。
 もっとも疑われる主な原因は、異物や細菌(クラミジア)、真菌、ウイルス、アレルギーによる鼻炎です。鼻炎が進むと副鼻腔炎ふくびくうえんになります。また、口の中の炎症が鼻に進行する危険性もあります。

●鼻出血
 鼻出血とは鼻からの出血のことです。くしゃみとともに排出された鼻水に血が混ざっていたり、鼻から持続的にダラダラと流れる出血があります。
 重度の鼻炎、副鼻腔炎、鼻腔びくう内の腫瘍が疑われます。
 鼻出血がみられる場合は、肺水腫はいすいしゅなどの循環器の病気にかかっている危険性があります。また、出血が止まらないときは、血小板減少症や血液凝固異常など血液の病気が疑われます。

●いびき、喘鳴ぜんめい
 空気の通り道が狭くなったときに生じる大きな音をいいます。興奮したときや暑いときに悪化しやすい傾向があります。
 鼻の短い犬種は軟口蓋過長症が、ネコは鼻孔狭窄症びこうきょうさくしょうが疑われます。また、鼻腔内ポリープも考えられます。
観察のポイント
 
 鼻水の性状、くしゃみの頻度、いびきや喘鳴を起こす時期、呼吸状態を注意深く観察してください。
●鼻水、くしゃみの程度
 一過性の鼻水、くしゃみであれば病気である危険性は低いでしょう。動物の様子を注意して観察してください。鼻水、くしゃみが続くようなら、鼻に障害があるかもしれません。

●鼻水の内容
 鼻水の内容によって、ある程度鑑別ができます。鼻水がサラサラしているとき(漿液性)には、アレルギーや初期のウイルス感染が疑われます。鼻水が黄色でドロドロしているとき(粘液膿性)は、細菌感染を起こしている危険性があります。

●くしゃみの頻度
 くしゃみは、いつからどのようにして始まったのか、どの程度なのかをよく観察してください。突然始まった激しいくしゃみが続く場合は、鼻腔内の異物が考えられます。

●鼻からの出血
 出血のタイプを観察してください。鼻水に血が混じっているなら、鼻炎や重い肺水腫が考えられます。また、出血している状態であれば腫瘍や血液の病気が考えられます。

●いびき、喘鳴を起こす時間帯
 いつどんなときに、いびき、喘鳴を起こしているかよく観察してください。寝ているときや多少のいびき、喘鳴であれば問題はないでしょう。しかし、呼吸困難を起こすようないびき、喘鳴は治療する必要性があります。

●呼吸の状態
 鼻の病気は直接呼吸にかかわっているので、呼吸がよくできているか十分に観察してください。呼吸困難がみられたら、緊急の治療が必要になります。

●顔の状態
 鼻に腫瘍ができていると、顔の形が変わったり、目が飛び出たりします。

●歯の状態
 歯の病気が鼻水の原因となることもあります。とくに上の歯の異常(とくにう歯)は鼻腔に影響を与えることもあるので、チェックしてみてください。

●ほかの症状を伴う
 せきをしたり、皮膚に出血斑しゅっけつはんがあったりするときは、重い病気にかかっている危険性があります。
考えられる主な病気
 
■鼻水、くしゃみ
鼻炎[イヌ、ネコ]
犬アデノウイルス感染症[イヌ]
犬ジステンパー[イヌ]
犬パラインフルエンザウイルス感染症[イヌ]
犬ヘルペスウイルス感染症[イヌ]
猫カリシウイルス感染症[ネコ]
猫伝染性呼吸器症候群[ネコ]
猫伝染性鼻気管炎[ネコ]
猫クラミジア感染症[ネコ]
副鼻腔炎[イヌ、ネコ]
鼻腔内異物[イヌ、ネコ]
鼻腔・副鼻腔の腫瘍[イヌ、ネコ]
歯瘻[イヌ、ネコ]

■鼻出血
鼻炎[イヌ、ネコ]
鼻腔・副鼻腔の腫瘍[イヌ、ネコ]
肺水腫[イヌ、ネコ]
血小板減少症[主にイヌ]
血小板と凝固系の疾患[イヌ、ネコ]

■いびき、喘鳴
軟口蓋過長症[主にイヌ]
短頭種気道閉塞症候群[主にイヌ]
鼻腔・副鼻腔の腫瘍[イヌ、ネコ]
鼻孔狭窄症[イヌ、ネコ]
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