猫4匹と1K賃貸で快適生活 キャットウォークお気に入り

猫たちお気に入りのキャットウォーク
猫たちお気に入りのキャットウォーク

 飼い猫の数は今や1000万匹といわれる(ペットフード協会調べ)。だが、猫と一緒に住める集合住宅、とくに賃貸マンションの数はまだ少ない。大家さんに敬遠され、限られた空間での飼育も難しいと思われているようだ。本当にそうなのか? 20㎡に満たない空間ながら、伸び伸びと暮らす賃貸物件にお邪魔してみた。

(末尾に写真特集があります)

 

 荻窪駅(東京都杉並区)から徒歩15分の住宅地。3階建て賃貸マンションの1Kの部屋(18㎡)で、企業マッケターの鶴岡由美子さん(31歳)は4匹の猫と暮らしている。

 

「1Kで猫と暮らすって窮屈なイメージでしょう? でも居心地がいいんです」

 

 案内されて玄関をあがると、短い廊下に猫用トイレが三つ並んでいた。縦型で猫がすっぽり中に入って用を足せるトイレだ。

 

 廊下の向こうは、南向きの5畳の洋間。「居間」兼「寝室」兼「猫の遊び場」だ。右手にシングルベッドあり、天井の下にキャットウォークが巡らされている。寝ながら眺められる感じだ。壁の柱は爪をがりがりと研いでもいい造りで、取り替えも可能だという。

 

 キャットウォークの上に、三毛の「もも」(メス、7歳)、キジ模様の「あん」(メス6歳)、白黒ぶちの「ぼー」(オス、2歳)が飛び乗った。スタスタと歩く。中間照明が施され、雰囲気も満点だ。

 

 部屋の左手には、鶴岡さんの仕事机と、その倍以上の大きさの既製の猫柱が置かれている。窓辺のカーテンに、一番シャイだという「はな」(メス、4歳)が隠れていた。

 

 鶴岡さんは4年前、都内の実家から、ここに引っ越してきた。初めての一人暮らしで、実家から「もも」と「あん」を連れてきた。

 

「治安のよい街で、家賃6万5千円以下で『猫OK』の部屋を探しました」。杉並区内の不動産屋(ヘヤギメ)にいくと、4軒ほどピックアップしてくれた。築年数にもよるが、23区内でこの金額だと、ほとんどが1Kかワンルームだ。最初に内見したのが今の住まい。鉄骨でオートロック、床はペットがいても掃除がしやすいウッドタイル、網戸も破れにくい強い網が使われていた。しかも、複数飼いOK。

 

「不動産屋さんにも、ここまで条件に合う物件は珍しいと言われました。でも入居当初はここまで完璧な『猫仕様』の部屋ではなかったんです」

 

 入居後に「はな」を迎えたあと水漏れが起き、修理のためにしばらく別の部屋に住んだ。一時避難中に「ぼー」をひきとり一層にぎやかになった。その間に、大家さんと管理をする不動産会社がキャットウォークをつけてくれたのだという。

 

 4匹はキャットウォークが大のお気に入り。思いっきり天井まで上がって、だーっと下りて追いかけっこをすることもある。玄関から居間の掃出し窓までは3.7m。その距離を、猫が行ったり来たりしている。

 

 このマンションは18戸すべてがペット可。大家さんが動物好きなのだ。

 

「大家さんは前にペットとつらい別れをして、自分はもう飼えないと。でも多くの人にペットとの楽しい暮らしを実現してほしいという思いで、一棟ごとペット可にして貸し出したと聞いています」(鶴岡さん)

 

 猫が運動不足にならないように「既製の猫柱も準備した方がいい」と鶴岡さんにアドバイスしてくれたのも大家さんだった。鶴岡さんは猫の毛を吸わないように、そして猫が異物を誤飲しないように毎日必ず掃除機をかける。3つのトイレもまめに掃除する。自分と猫の両方が健康でいるためのルーティンだ。

 

 このマンションを管理する不動産会社「リビングゴールド」の藤堂薫社長も無類の動物好きだ。作り付けのキャットウォークも同社がデザインした。

 

 藤堂社長は「市場では1Kの賃貸物件がやや余り気味。猫仕様にして、人と猫が気楽に快適に住める部屋を増やしたいと思っています」という。

 

 藤堂社長によれば、ペット可とうたった賃貸でも、実際は「犬はOKだが、猫はダメ」というところがまだ多い。猫については、飼ったことのないオーナーの思い込みから認めないケースが多いようだ。

 

「猫は匂うと思われがちですが、匂うのは体ではなく尿。トイレをいつも清潔にしていれば大丈夫。爪も、爪とぎでするようにすれば、賃貸物件でも問題はないはずです」と藤堂社長。

 

 藤堂社長のもとには、区内の他のマンションや千葉県のアパートのオーナーからも、猫仕様へのリフォーム依頼や相談があるという。

 

「鶴岡さんの場合は自分で保護したり、シェルターから引き取ったりした猫を飼っておられますが、うちでは1歳以上の行き場のない成猫(保護猫)を救済するため、猫を預かって一緒に住んでもらう『猫付きマンション』のシステムも導入しています」

 

 猫付きマンションは、猫の保護・譲渡活動をしているNPO法人「東京キャットガーディアン」が2008年から始めたシステム。藤堂さんは同団体と協力しながら、賃貸マンションでの猫受け入れ、猫仕様化だけでなく、単身者が共同で猫を世話する『猫付きシェアハウス』も手がけている。12月には、練馬区内に3つ目のシェアハウスが誕生した。猫5匹が待つ部屋に、女性限定で4人ほど募集中だという。

 

 狭いながらも楽しい我が家。猫との共同生活は、たとえ小さな1Kであっても、心を豊かにしてくれるだろう。

 

(藤村かおり)

sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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