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sippo・sippo|更新|2016/01/28

これは幻? 東京湾岸の猫たち写真展 アートのような奇跡の一瞬

星野俊光さんの写真展「海猫夢幻」から。数年来顔見知りの猫が、まっすぐこちらへ歩いてくるのを400ミリの望遠で狙った ©星野俊光
星野俊光さんの写真展「海猫夢幻」から。数年来顔見知りの猫が、まっすぐこちらへ歩いてくるのを400ミリの望遠で狙った ©星野俊光

 東京湾岸に住み着く猫たちの、幻かと見まごう一瞬--写真展「海猫夢幻(うみねこむげん)」が2月19日から、東京・コニカミノルタプラザギャラリーで開かれる。海辺の猫を10年間撮り続けている写真家による最新作で、ドキュメンタリーながらアートのような奇跡の一瞬を撮った60点が展示される。

(末尾に「海猫夢幻」の写真特集)

 

 写真家は星野俊光さん(52)。中学時代に写真に目覚め、写真専門学校を経て現像所でプリントの専門家になった。プロ向けのフォトブックの企画開発という本業の傍ら、この10年、年間80日の休日は、東京湾岸に棲む野良猫を撮り続けてきた。近場を選んだのは、何度も通い詰めないと狙った絵が撮れないからだ。

 

「ドキュメンタリーで一番重要なのはロケハン。猫がいそうな環境で痕跡を探し、エサ場とトイレ、ねぐらを見つける。あとはひたすら待つ。猫は習慣の動物なので、エサをくれる人が来る時間しか現れないなど、ピンポイントでしか捕まえられない。月の満ち欠けや大潮、天候など、条件によって撮りたい絵がある」

 

 例えば、漁具の下で雨宿りをしている3匹の猫の写真(写真1)。千葉県のある漁港だ。捨て猫が、血縁のない仔猫2匹の面倒を見ているのは知っていた。雨が降ったらきっと漁具の下にいるはずと狙って、大雨の日に出かけた。デジカメなら写せるが人の目で猫は見分けられないほどの暗さ。漁具の後ろに照明を仕込んだほかは、灯台の赤い光と町の地明かりで撮影した。

 

「何年も通って、猫たちにエサをやる漁師とも親しくしている。それを見ているから猫も逃げない」

 

写真1)漁具の下で雨宿りする3匹の猫 ©星野俊光
写真1)漁具の下で雨宿りする3匹の猫 ©星野俊光

 または、桜の散り敷く水路端で、水面を見つめる猫(写真2)。ねぐらからエサ場への通り道にあたり、ここで水を飲む猫もいる。この時は潮が満ちてボラが遡上していた。片手を出しているのはボラにちょっかいを出そうとしているからだ。

 

 アメリカデイゴの赤い花が咲く大樹の幹に猫が上っている写真も、撮影のチャンスは花の咲く2週間だけ。近くのドッグランで犬が吠えると、猫が木に上がる。その瞬間を狙った。


 大潮の時には、普段は干上がって通り道になっている川底が水浸しになる。渋々水の中を渡る猫が撮影できる。夕焼けとキスするように飛ぶ猫の写真は、掘っ立て小屋の名残の木材で遊ぶ猫を半日、撮影していて偶然撮れた。夜空に航跡が走る下に猫がたたずむ写真は、飛行機の来た瞬間に猫も来るとは限らない。何十枚何百枚と猫のいない空振り写真を撮った。

 

写真2)水面を見つめる猫 ©星野俊光
写真2)水面を見つめる猫 ©星野俊光

 長い時間、湾岸の猫を見続けた星野さんは、猫たちから町や社会の移り変わりも感じるという。

 

「10年前と比べて野良猫は3分の1以上に減っている。野良猫のいる風景そのものが過去のものになりつつある。地域猫の去勢手術が進めば新しい猫が産まれないから当然だけれど」

 

 湾岸から漁師も減った。町中でも人々から猫を許容する心の余裕が減っていると感じる。一方で、浮浪者と共存する猫を多く見てきた。工事などですみかを追い出された猫を何十匹と保護している浮浪者がいたり、片隅に浮浪者がいる裏寂れた公園で猫たちが遊んでいたり(写真3)。モノレールの線路間近の水辺にはエサをやる浮浪者がいて、猫が通ってきていた。

 

 写真展は2月29日まで。午前10時半~午後7時。会期中無休、入場無料。コニカミノルタプラザギャラリーC(東京都新宿区新宿3-26-11新宿高野ビル4階)で。

 

写真3)過疎化で人が来なくなった公園で猫だけが遊んでいた ©星野俊光
写真3)過疎化で人が来なくなった公園で猫だけが遊んでいた ©星野俊光
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写真展「海猫夢幻」のタイトル写真。この作品のみ合成 ©星野俊光
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出典:sippo
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