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生後8週まで犬猫は親元に 札幌市「飼い主の努力義務」全国初の条例化へ

日本の法律では現在、生後45日をすぎた子犬や子猫なら販売できる。一方、欧米先進国の多くで「8週齢規制」が常識だ(本文と写真は関係ありません)
日本の法律では現在、生後45日をすぎた子犬や子猫なら販売できる。一方、欧米先進国の多くで「8週齢規制」が常識だ(本文と写真は関係ありません)

 

 幼い子犬や子猫の適切な社会化を促すため、札幌市は、生後8週間までは親と子を一緒に飼育することを飼い主の努力義務と定める方針を固めた。条文を盛り込んだ市動物愛護管理条例案を2月17日に始まる市議会に提案し、10月からの施行を目指す。「8週間」と明記して規定する、いわゆる「8週齢規制」の条例化は全国初とみられる。

 

 幼すぎる子犬、子猫を産まれた環境から引き離すと適切な社会化がなされず、問題行動を起こしやすくなる。また生後40日過ぎくらいから母親からの移行抗体が減り始め、免疫力が低下するとされる。このため米、英、フランス、ドイツなど欧米先進国の多くでは、8週齢(生後56~62日)まで、子犬や子猫(国によっては子犬のみ)を生まれた環境から引き離すことなどを禁じる「8週齢規制」を法令で定めている。
 

 札幌市の条例案は「動物の福祉の向上」を目的に掲げ、犬と猫の飼い主に対して「生後8週間は、親子を共に飼養するよう努めること」を義務付ける。すべての犬猫の飼い主に適用され、繁殖業者やペットショップも例外ではない。

 

「動物が動物らしく暮らせ、飼養されるような条例案にしたいと考えた。施行後は、8週齢規制の努力義務化について、犬猫等販売業者に通知、指導していく」(向井猛・市動物管理センター所長)
 

 札幌市では現在、犬猫等の販売業者に対して動物愛護法で提出と順守が義務付けられている「犬猫等健康安全計画」に、生後何日まで自分のところで育てているのか、具体的に記入するよう指導している。条例施行後は、その日数を「8週間以上」に書き直すよう、指導する予定だという。
 

 札幌市議会では、主要会派の自民党が「動物たちの福祉を向上させることが大切。地域のためになる条例案でもある」などとし、民主党・市民連合、公明党も賛成の意向だ。
 

 大屋雄裕・慶応義塾大教授(法哲学)はこう話す。「動愛法の規定の仕方から、生後56日以下の犬猫を販売する自由を積極的に保障しているとは判断できない。札幌市の条例案は、法律の目的を率先して実現しようとするものであり、地方自治体の工夫ある取り組みとして、評価できる。今後は、こうした動きが他の自治体に広がっていくかどうかがポイントになる」

 

 2013年9月に施行された改正動物愛護法には、「出生後56日を経過しないものについて、販売のため又(また)は販売の用に供するために引渡し又は展示をしてはならない」という条項が新設された。だが、これに動物取扱業者らが作る業界団体や一部国会議員が強く反対した結果、付則がつけられた。付則によって、本則にある「56日」が16年8月までは「45日」、それ以降は「別に法律に定める日」まで「49日」と読み替えられてしまった。
 

 付則は自治体の取り組みの足かせにもなっている。東京都の動物愛護管理審議会では、一部都議や動物愛護団体が13年から14年にかけて、国に先んじて都条例による「56日(8週)齢規制」を実現する提案をした。だが、都は「地方自治体は法律を上回る条例は作れない。規制を条例に盛り込むことは検討しない」という姿勢だ。
 

 大阪府では15年から条例化を模索しているが、「府として8週齢規制を早期に実現したいと考えているのに、法律の付則にいつ実現するかわからない『経過措置』が書かれていることが、大きな壁になっている」(大阪維新の会の中野稔子府議)としている。

 

「8週齢規制」の主な導入例

【日本】
<動物愛護法> 出生後45日(※)を経過しない犬猫は、販売のため又は販売の用に供するために引き渡し又は展示をしてはならない
(※2016年9月から「別に法律に定める日」までは出生後49日)

【札幌市】
<市動物愛護管理条例案> 犬及び猫については生後8週間は、親子を共に飼養するよう努めること

【アメリカ】
<連邦動物福祉法> 最低8週齢以上および離乳済みの犬猫でない限り商業目的のために輸送または仲介業者に渡されてはならない

【イギリス】
<犬の飼養及び販売に関する1999年法> 生後8週間に達していない犬を販売してはならない

【ドイツ】
<動物保護法 犬に関する政令> 8週齢未満の子犬は、母犬から引き離してはならない

【フランス】
<農事法典> 犬猫については8週齢を超えた動物のみが有償譲渡できる
(諸外国の事例は環境省調べ)

(太田匡彦)


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