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キャンパスの黒猫も詠む 角川短歌賞受賞の阪大4年・鈴木加成太さん

短歌の着想をメモする鈴木加成太さん=大阪府豊中市、荻野史佳撮影
短歌の着想をメモする鈴木加成太さん=大阪府豊中市、荻野史佳撮影

《社会人未満の春に例年をわずかに下まわる夢温度》
 

 大阪大の鈴木加成太(かなた)さん(22)=文学部4年=が、第61回角川短歌賞を受賞した。受賞作「革靴とスニーカー」(50首)は、就職活動中の情景や思いを詠んでいる。
 

 角川短歌賞は、過去に俵万智らが受賞した権威ある賞として知られる。鈴木さんは大学入学後、1年の総決算として毎年応募してきたという。これまでは良くても佳作にとどまっていたが、初の受賞となった。

 

「ほっとした。いち抜けた、という感じ」と喜ぶが、受賞作に特別な思い入れはなかったという。「以前の応募作のほうが愛着はあった。自分の評価と周囲の評価はずれるもの」。他人に見せないと本当に良いものは分からないと改めて感じたという。

 

《着てみれば意外と柔らかいスーツ、意外と持ちにくい黒かばん》
 

 現実を等身大に言い表す素直な表現こそ、鈴木さんの持ち味。作品にはどこかリアルな温かさがこもる。自身も「見たもの感じたものを、悲観的ではなく肯定的なほうに捉えるような短歌。自分にとっては、暗さを押し出してくる作品よりも肯定するものに価値を感じる」と分析する。

 

《大学のすべてを知っている猫が思わぬところから現れる》
 

 大阪大豊中キャンパスでは日頃、1匹の黒猫が気ままに闊歩(かっぽ)している。その大学内で鈴木さんは、学生同士の短歌会に所属する。入部した当初の歌会は、専門的な言葉が飛び交い、内に閉じた集まりのように感じられた。そこで、自身が部長になった際には、授業や流行の話題なども話せる、自由な場にするように心掛けた。上下関係もなくすように気を配ったという。
 

 会誌「阪大短歌」では、写真や音楽と組み合わせたコラボに取り組んだ。「歌の世界の中だけでわかり合うのではなく、これからも外に出て行って、写真や絵など、いろんなジャンルの人とコラボしたい」と意欲を見せる。

 

《しんろしんろと来る自転車に尾を引いていた悲しみを撥(は)ね飛ばされる》
 

 自転車の音を「しんろしんろ」と表現して、「進路」とかけたこの作品。自身の進路は、最終的には大学院に決めた。当分は革靴とスーツをしまい、スニーカーを履くことになる。
 

 歌に詠まれた就活のあれこれを想像しながら、私はふと考えた。1年後、自分はどの道を選ぶのだろうか――。

 

(大阪大2年 荻野史佳)

 


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