宙飛ぶ「飛行犬」 まるで無重力、リピーター続出の不思議な写真

空飛ぶ円盤ならぬ空飛ぶわんちゃん「飛行犬」。初体験だったパブロくんは気持ちよさそうに宙に浮いた=加納幹夫氏撮影
空飛ぶ円盤ならぬ空飛ぶわんちゃん「飛行犬」。初体験だったパブロくんは気持ちよさそうに宙に浮いた=加納幹夫氏撮影

 前脚と後ろ脚をピンと伸ばして、あたかも空を飛んでいるように見える「飛行犬」--こんな写真を見たことはありませんか? その出張撮影会が全国各地で開かれ、愛犬家の間で話題となっている。いったいどうやって撮影するの? 秘密を探るべく、撮影会に同行した。

 

(文末にフォトギャラリーがあります)


 広々とした緑の芝生のドッグランの中を、一人の女性が走っていく。その後を、茶色い小さな犬が追いかける。15メートルほど離れたところから、プロのカメラマンが腹ばいになってデジタル一眼レフで狙うのは、飛び去るように走る犬の方だ。300ミリの望遠レンズで、シャッタースピードは1600分の1。こうして夢中になって走る姿が「宙を飛んでいるように見える」飛行犬の写真になるのだ。


 神戸港内にある人工島、六甲アイランド(神戸市)で5月21日、飛行犬の出張撮影会が開かれた。


 トイプードルのパブロくん(雄6カ月)は、この日が飛行犬デビューだった。飼い主は神戸市西区の服部清美さん。夫は海外赴任中で、娘は京都の大学に通うために家を出た。「来年のカレンダーにして、自宅と、夫と娘のそれぞれの家に飾ろうと思って」


 人前でまっすぐ走れるかが不安だったため、服部さんが前を走ってパブロくんに追いかけさせた。15分の持ち時間で、約20メートルの距離を計6回走った。真正面や左右など、撮る角度を変えながら、飛び上がるほんの一瞬を捉える。1秒に12コマの高速連写で、コマ数は計約150枚に及んだ。

 

真正面や左右など、角度を変えながら撮影する。飛び上がるほんの一瞬を捉える=神戸市
真正面や左右など、角度を変えながら撮影する。飛び上がるほんの一瞬を捉える=神戸市
スポーツを撮るような、300ミリの望遠レンズで撮影する=神戸市
スポーツを撮るような、300ミリの望遠レンズで撮影する=神戸市

 神戸市須磨区から来たトイプードルのMokoちゃん(雌6歳)は、これが8回目の飛行犬。撮影スタッフとじゃれ合うほど人懐こい性格で、飼い主と離れてもじっとしていられる。そこで、飼い主とMokoちゃんには20メートルほど離れてもらい、持参した愛用のボールを撮影スタッフが飼い主のほうに投げ、ボールを追いかけるMokoちゃんの姿を押さえた。


 途中で衣装を1回代え、ボールを追いかけること6回。約120枚を撮影した。Mokoちゃんのママは、「この子の成長を記録したくて。撮影した写真を大きなパネルにします」。毎回、ヘアスタイルを変えて撮影していて、今回はアフロヘアでの挑戦だった。

 

毎回ヘアスタイルを変えて参加するというMokoちゃん=加納幹夫氏撮影
毎回ヘアスタイルを変えて参加するというMokoちゃん=加納幹夫氏撮影

 この日の撮影会に参加したのは、奈良県や京都府から来た16匹。犬種も大型犬のシベリアンハスキーから、ペキニーズ、チワワやシーズーなど小型犬まで多彩だ。ドッグランを4時間借り切っての撮影会は事前申込制で、この日の予約も1カ月前に埋まった。その後も問い合わせは10件以上あったという。


 被写体となるワンちゃん1匹1匹の体力や集中力を見ながら、5、6回走らせる間に80~150カットを撮る。愛用のボールを投げたり、飼い主と走ったりと、いかに気持ちよく走らせるかが腕の見せどころだ。飼い主の動機は「我が子の成長の記録を残したい」「遺影のために」などと様々。毎年撮ってもらう常連もいるという。

 

衣装チェンジ中のMokoちゃん=神戸市
衣装チェンジ中のMokoちゃん=神戸市

「飛行犬」はもともと、偶然から生まれた。


 兵庫県淡路島の「南あわじドッグラン・飛行犬撮影所」で2005年、同施設を運営するカメラマンの的場信幸さん(56)が走っている犬を撮影した時のことだ。たまたま空を飛んでいるような図柄になった。客の反応も上々。そこで、その姿を「飛行犬」と名付け、商標登録も取った(「飛行犬」は有限会社淡路デジタルの登録商標)。以後、南あわじドッグランの撮影サービスとして採り入れた。その後、インターネットで愛犬家の間に広まり、撮影した犬は3万1千頭(昨年末まで)に上る。


 21日に撮影を担当していた加納幹夫さん(61)は、もとはサッカーや競馬などを撮るスポーツカメラマンだ。飛行犬には開始当初から関わってきた。加納さんは「飼い主とワンちゃんのテンションをいかに高められるか。いい表情を捉えるためには、それが一番重要です」と話す。


 撮影会は事前予約制だが、当日会場で申し込みもできる。撮影料は5千500円(西日本本部主催)、6千円(東日本本部主催)で、ドッグランの利用料が別途必要。撮影データは、CD-Rで約2週間後に郵送される。出張撮影会の日程は、飛行犬撮影所西日本本部(www.hikouken.com)、東日本本部(e-hikouken.com)で確認できる。


(福山嵩朗)

sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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