犬・猫つめ込み飼育、規制へ 環境省が検討会を立ち上げへ

九州の繁殖業者のもとでも、繁殖用の犬はケージの中で飼育されていた
九州の繁殖業者のもとでも、繁殖用の犬はケージの中で飼育されていた

 犬や猫を劣悪な環境で飼育・展示する繁殖業者やペットショップが問題となっているため、環境省は今年度中にも専門家らによる検討会を立ち上げる。ケージの大きさなどを具体的な数値で規制する「飼養施設規制」の導入を目指す。

 欧州先進国では、犬や猫を飼育するために檻(おり)(犬舎)やケージを使う場合、必要な広さを具体的な数値で定めているが日本にはそうした規制が一切ない。ペットショップやフードメーカーなどで作る団体の2016年調査では、繁殖のために飼育されている犬は国内に推定約23万匹。7割以上がケージで飼われている。

 環境省では、すでに有識者への聞き取り調査を開始しており、今年度中にも獣医学の専門家らによる検討会を立ち上げる。「狭い施設のなかに多数を詰め込むような悪質な飼育状況を改善したい」(動物愛護管理室)とし、動物愛護法の次の見直し議論が始まるとみられる来夏までに規制導入の道筋をつけたいとする。

 環境相の諮問機関である中央環境審議会の動物愛護部会は12年に動物愛護法を改正する際、「現状より細かい規制の導入が必要」とし、飼養施設規制の導入を促す報告書を提出している。


■数値規制、ペット業界は警戒

 環境省が導入を目指すのは、動物愛護の観点から、劣悪な環境で飼われている犬や猫を救うための飼育環境に関する数値規制だ。欧州先進国ではすでに導入されている。一方、ペット業界側からはコスト増を懸念する声もあがっている。

 複数の輸送用コンテナの中にケージが3段重ねになっていた。約200匹の繁殖用小型犬がそれぞれに詰め込まれ、ほとんど身動きが取れない。足元は金網で糞(ふん)が山積み、金網の下のトレーに尿がたまっていた。記者が訪ねた、中部地方の大規模繁殖業者の様子だ。

 環境省が想定するのは、欧州先進国で導入されているような具体的な数値規制だ。環境省の担当者は「悪質な業者を排除できるように数値基準を設けたい」と話す。例えばドイツでは犬を飼育するケージについて、「一辺は少なくとも犬の体長の2倍の長さに相当し、どの一辺も2メートルより短くてはいけない」などと細かく定めている。犬を主に屋内で飼育する場合は、窓が最低でも室内面積の8分の1なければいけない、などの規定もある。

 規制導入の動きに対して、ペット業界は警戒感を強めている。

 今年2月、業界を横断的に束ねる形で新団体「犬猫適正飼養推進協議会」(会長=石山恒〈ひさし〉・ペットフード協会会長)を設立。同協議会が作成した同年6月の資料によれば、ペットフード協会、全国ペット協会など10団体と業界関連企業6社で構成する。

 協議会の別の資料では、ドイツよりも規制が緩やかな英国並みの規制が導入された場合でも、繁殖業者らが規制に沿った大型のケージに変更するためには1ケージ当たり1万5千円かかり、総額約17億円の設備投資が必要になると試算。「大型ケージの導入により、施設拡張と用地取得が必要」とも指摘する。

 その結果、流通する子犬や子猫の数が減り、ペット産業全体に悪影響が出ることを懸念する関係者も少なくない。

 協議会の活動目的などについて、石山会長側は取材に対し、「明確な話ができる段階ではない」と回答した。協議会作成の資料などによると、国内のペットショップや繁殖業者の実態調査をした上で、独自の指針を作ることや環境相への説明を目指す、などとする。

(太田匡彦)

朝日新聞
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