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朝日新聞・朝日新聞デジタル|更新|2017/01/09

北海道の「猫島」で保護活動 人に慣らして新たな飼い主へ… 旭山動物園、生態系を守る取り組み

天売猫の「ひじき」(左)と「チロル」。天売島の冬の厳しい環境下で暮らしてきたためか、どちらもしっぽが短い=北海道旭川市の旭山動物園
天売猫の「ひじき」(左)と「チロル」。天売島の冬の厳しい環境下で暮らしてきたためか、どちらもしっぽが短い=北海道旭川市の旭山動物園

 しっぽが短い2匹の猫。旭山動物園の飼育員、国友透子(みちこ)さん(27)と獣医師、中村亮平さん(35)に抱かれ、くつろいだ表情を見せた。天売(てうり)島(北海道羽幌町)で捕獲された「ひじき」と「チロル」だ。

 この2匹は2015年6月に旭山動物園で飼い始めた時は人前で餌を食べず、ひじきは5カ月間触ることもできなかった。国友さんは「生傷が絶えませんでした」。しっぽが普通の猫の半分ほどしかないことについて、中村さんは「厳しい寒さで先端が欠けたのだろう」と話す。

 絶滅危惧種のウミガラス(オロロン鳥)など約100万羽が飛来する天売島。この「海鳥の楽園」では14年、ヒナを襲う野良猫を捕まえて人にならす「馴化(じゅんか)」をし、飼い主を見つける取り組みが始まった。

 旭山動物園は馴化に協力するほか、来園者に天売猫について解説したり、園内外でのフォーラムなどで人と動物の共存をめざす天売島での取り組みを伝えたりしている。

 人と動物、人と自然をつなげる「懸け橋」になる――。そうした理念を掲げる旭山動物園は近年、生態系を守る活動にも積極的に関わる。天売猫もその一つだ。

 天売猫問題に取り組む環境省羽幌自然保護官事務所の竹中康進・自然保護官(39)は「大勢が訪れる旭山動物園の啓発の力は大きい」と期待する。

 生態系を守る活動は国境を越えて広がっている。きっかけは、ある獣医師の言葉だった。

 来園者数が過去最高の307万人を記録した07年、世界各地で野生動物の保全活動をしてきた獣医師坪内俊憲さん(61)が訪ねてきた。「金もうけして何が楽しい。動物のふるさとに何もしていないじゃないか」。坂東元・現園長(55)は半年後、坪内さんと東南アジアのボルネオ島に向かった。

 日本でも加工食品や洗剤などに使われているパーム油を得るため、熱帯雨林がアブラヤシのプランテーションとなり、オランウータンやゾウのすみかが奪われていた。

 坂東さんは、園の人気者ボルネオオランウータンの故郷に力を貸そうと決心。09年に「恩返しプロジェクト」を始めた。

 まず、飲料メーカーの協力を得て、自動販売機の売り上げの一部がNPO法人「ボルネオ保全トラスト・ジャパン」に寄付される仕組みを考え、園内に設置。支援企業も集まって取り組みは全国に拡大し、寄付金は年間1千万円にのぼる。

 寄付金などで10年には保護されたゾウを入れる移動用のオリを、13年にはゾウを一時的に保護するレスキューセンターを寄贈。動物園は現地調査や設計なども担った。坂東さんは昨年12月にもボルネオ入りし、保護が長期化するセンターの環境改善を模索している。

 今後、15年に連携の覚書を交わした台湾の台北市立動物園とも協力し、アジアの野生動物保全活動に取り組む考えだ。

 北海道やアジアの野生動物を守る活動の先頭に立つことで、道民に支持され、市民に誇りに感じてもらえる動物園であり続けよう。その決意が、動物園の枠を超えた活動を支えている。


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