いつのまにか猫が寄ってくる… 北九州の猫島「藍島」

「猫の島」と呼ばれる藍島。港を歩くと、どこからともなく猫が近寄ってきた=福岡県北九州市小倉北区
「猫の島」と呼ばれる藍島。港を歩くと、どこからともなく猫が近寄ってきた=福岡県北九州市小倉北区

 福岡県北九州市小倉北区の藍島(あいのしま)は「猫の島」として知られる離島。猫好きの聖地として、国内外の観光客が平日もカメラ持参で訪れる。島の暮らしは漁が中心で、海産物のブランド化を模索する動きも出てきている。


 (末尾にフォトギャラリーがあります)


 路地や港で気配を感じて振り返り向き直ると、いつの間にか猫に取り囲まれている。猫たちはするすると寄ってくるが、こちらがエサを持っていないと見ると間もなくいなくなる。


 工場が立ち並ぶ北九州市の岸壁を離れ、渡船で半時間ほど。響灘に浮かぶ藍島は、猫の多い島として知られる。


 約260人が住む。「人より猫が多い」と騒がれたが、地元で聞くと「ピークでも200匹ほどだったのでは」。3年前に大半の雌猫は避妊手術を受け、今は50匹を切っているという。


 ただ、すぐに集まる猫たちの様子で、実際より多く感じられるのかもしれない。港に近い売店の女性店主は「島の者はあまりエサをやらん。船から下りるカメラを持った人を猫はちゃんと見て寄っていく」と話す。


 平日も猫目当てで訪れる人がいるが、島には観光客向けの食堂も売店も、猫グッズもない。島民のほとんどは変わらず漁で生計を立てている。ただ近年、漁獲が減っているといい、漁師の二見隆さん(62)らが立ち上げた「藍島活性化グループ」は、「これからはとって売るだけの漁では難しい」と海産物のブランド化を模索する。


 細かい泡を含む「ナノバブル水」につけて鮮度を保ったサワラやウニは、東京の築地市場でも評判が良かったという。


 細長い島の中ほどに、遠見番所旗柱台が立つ。約300年前の享保年間に造られた2本の石柱は、中国の密貿易船を見つけた島民が、大旗を掲げて小倉藩に知らせていた名残だ。島の暮らしは、昔も今も海と共にある。


(奥村智司)

illustration 栗須恵子
illustration 栗須恵子

 藍島へはJR小倉駅北口から徒歩5分にある北九州市営渡船の小倉渡場で「こくら丸」に乗る。馬島経由で片道35分。藍島発で1日3往復の便がある。運賃は片道400円。問い合わせは市渡船事業所(093・861・0961)へ。


■出会う


 港からトンネルを抜けて1.5キロの道のりをたどると、島の北端に出る。潮が引くと現れるのは「千畳敷」と呼ばれる広く平らな岩場だ。太古のロマンを感じられる場所でもある。正面に見える無人島の貝島は6世紀ごろとされる古墳があり、日本書紀に出てくる「阿閇島(あへしま)」が藍島を指す、という説の裏付けとなっている。春の大潮の時期、潮が引くと貝島まで歩いて渡ることができる。

藍島の千畳敷
藍島の千畳敷

■泊まる


 アコーディオンにハーモニカ、靴にカスタネットを仕込んでリズムも刻む。1人3役で伴奏する「人間カラオケ」を名乗る浜崎俊和さん(88)。懐メロなどレパートリーは百曲に上る。県内外の老人施設などでボランティアで演奏する。家族が経営する藍島港近くの民宿「はまや」(093・751・1300)では、宿泊客が食事を終えたのを見はからって登場。「百歳までやりたい」

朝日新聞
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