TOP > 猫たちの命と向き合い、TNRできない猫を保護 下町の保護猫カフェ

トピックス

猫たちの命と向き合い、TNRできない猫を保護 下町の保護猫カフェ

「CATS&DOGS CAFE」外観
「CATS&DOGS CAFE」外観

 猫を飼いたい人が客として訪れ、身寄りのない猫を引き取って飼い主になれる「保護猫カフェ」が、全国的な広がりを見せている。東京都墨田区向島にある「CATS&DOGS CAFE」もその一つ。店主自らがノラ猫を保護しながら2010年から運営している。事故によって重症を負った猫、目も開かないうちに捨てられていた子猫……ここにいる猫たちはそれぞれ“複雑な過去”を抱えている。数多くの猫たちの生と死を見つめてきた店長の吉田智恵子さんに、猫の保護にかける思いを聞いた。


(末尾にフォトギャラリーがあります)

「CATS&DOGS CAFE」店長の吉田智恵子さんと、保護猫のレスターくん
「CATS&DOGS CAFE」店長の吉田智恵子さんと、保護猫のレスターくん

 吉田さんのもとには、開業以来、ノラ猫を何とかしたいという相談が絶えないという。客や近隣の住人が直接相談に来ることもあれば、まったく面識のない人から電話を受けることもある。


「自分でもできることがあれば、と誠意がある相談者には、可能な限り対応しています。猫を捕獲するのは、店の営業を終えてから。深夜、ひと気がなくなり、ノラ猫が活動しやすくなるのを待って、捕獲器をセットします。早朝までかかることもあれば、それでも捕まえられないこともあり、とくに真冬は大変。不幸な命が増えるのを止めたい一心です」


 ノラ猫を保護して里親を募集する傍ら、TNRも行う。TNRとは、ノラ猫の繁殖を防ぐため、捕獲器で捕まえ(Trap)、避妊・去勢手術を施し(Neuter)、もといた場所に戻して(Return)、地域猫として見守る取り組みのことだ。そもそも「CATS&DOGS CAFE」を立ち上げたきっかけも、ママ友といっしょに見つけた子猫を初めてTNRしたことだった。


「このときの猫が虐待に遭い、そのエリアに残る7匹すべてを保護することになりました。いざというときは保護して譲渡につなげる場所の必要性を感じ、今の保護猫カフェの形にしました」


 保護をするか、TNRをするか。基準は「外でも生きていける可能性があるか」だという。つまり、保護の対象は必然的に子猫や病気の猫、ケガをした猫が中心となる。


「本当はどんな猫にも外での過酷な暮らしをさせたくはない。TNRでもといた場所に戻すのは辛いです。その一方で、矛盾するようですが、TNRだけで済めばいいのに……という思いもあります。保護とは、1匹1匹の命を預かること。その責任の重さにつねに怯えています」

猫カフェスペースでくつろぐ猫たち
猫カフェスペースでくつろぐ猫たち

 取材で訪れた際にいた猫は15匹。千葉県に住む若者から相談を受けて保護したトラマサは、保護当時、事故による骨盤骨折と排泄障害で死の一歩手前だった。顔に奇形が見られるスコティッシュフォールドのファビ子は、生体販売から撤退したペットショップから引き取った。子猫のアンディは、生まれたてを保護したきょうだいのうち唯一死の淵を乗り越えた。先天性の心臓病にかかっていたメイは、取材の数日後に亡くなった――。病気やケガの猫を保護するということは、向き合う死の数も多くなるということだ。


「治る可能性があるなら治療をする。治せないなら緩和ケアを施す。大金を出すことになっても、ベストな医療の選択に迷いはありません。治療費の負担がかさみ、店を閉めるべきか悩んでいたある日、里親さんのお宅の小学生の姉弟からTNR支援金5000円をいただきました。襟を正す思いで、今後の活動につなげようと決めました」


 その決意を形にしたのが、2015年に設立した愛護団体『CATS&DOGS動物福祉協会』だ。継続的な支援をしてくれる会員を募ったことで、TNRや医療費にあてる資金が集まりやすくなったという。


「店番やTNR、カフェの掃除を手伝ってくれたり、サイトや啓発ポスターを制作してくれたりと、今では会員や常連さんを中心に、たくさんの支援者がいます。過去には、片目がつぶれた猫や足を切断された猫もいましたが、辛い経験をした猫たちだからこそと、新しい家族として迎え入れてくれる人も多くいます。それぞれができることで保護猫活動に参加する、そんな輪を広げていきたいです」

前へ
新入りのアンディ。保護当時の体重は100gにも満たなかった。ほかのきょうだいたちは、衰弱から回復せず亡くなった
次へ
出典:sippo
1/8
前へ
次へ

専門の獣医師があなたの疑問にお答えします(健康医療相談)