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sippo・sippo|更新|2017/01/27

軒下の「間借り猫」その後 距離はぐっと近づいて、家の中も行き来

お母さんときなこ(左)とおちび3ショット
お母さんときなこ(左)とおちび3ショット

 東京都豊島区のとある町。面倒を見てくれていた老人が亡くなり、行き場をなくしかけた雄雌の地域猫「きなこ」と「おちび」。「2匹をお願い」という遺言を人づてに聞き、軒下で世話を始めた家族に会いにいったのは、昨年1月だった。あれからちょうど1年。あの猫たちはどうしているのだろう?


(末尾にフォトギャラリーがあります)


「じつはこのお正月に、メスの『おちび』のほうがいなくなって、気が気じゃなかったんです」


 そう話すのは、一家の長男Sさん(33)。年の終わりに「おちび」(推定3~4歳)が突然姿を消して、正月3が日をどこかで過ごし、4日になってやっと戻ってきたのだという。しかも、やつれた姿で。


「脚とかムチムチしていたのに、(脚の間に)隙間ができていた。疲れたように眠り続けて心配したけど、食欲も戻り、今は元のおちびに戻りました。本当によかった」


 2匹と家族は、家の軒下で寒さをしのげるようにして、食事をあげて、見守るという関係だ。「といっても、ほとんど軒下に置いた猫ハウス(ホカロン付き)か、うちの居間か、そのどちらかにいるのですけど」


 家族3人はそれぞれ仕事で出かける時間がずれている。お母さんは午前に家を出て、夕方頃に帰ることが多く、マスコミ勤めのSさんは主に午後から出かけて、深夜帰宅する。飲食店勤めの弟は夜に出かけ朝戻る。猫はそうした人の出入りとともに(猫の意思で)出たり入ったりする。


「猫たちは以前は家に入ると、すぐ出たがりましたが、今はゆったり家で過ごすことが増えました。抱っこもさせてくれるようになり、ずいぶん変わったと思います」


 2匹は地域猫の中でも特に警戒心が強く、人に抱かれることも知らなかった。だがまず「きなこ」が先にお腹をみせてゴロゴロ甘え、それを真似るように「おちび」も家族に寄り添うようになった。ソファに来た「おちび」をお母さんがひょいと抱いてみたら、逃げるどころか伸びをしてそのまま膝でくつろぎ、一家で「感激」したのだという。


「うちの母が言うんですよ。嫁いだ姉と僕と弟と、子どもは3人いるけど、今や猫たちのほうがずっと可愛いって。けっこう衝撃(笑)」


 猫たちは、家の中の間取りもすっかり把握しているのだとか。


「1階は和室、2階に居間とキッチン、僕と、弟の部屋。さらに階段を上がると(亡き)父の書斎。猫たちは3階もひとしきりパトロールして、居間に落ち着く。おちびなんて人がいないと寂しそうにミーミー鳴くので、居間に猫ベッドを置いて、寝つくまで誰かがあやすという姫っぷりです」

Sさんのセミダブルのベッドで悠然と寝るおちび
Sさんのセミダブルのベッドで悠然と寝るおちび

 昨年秋ごろには、Sさんが深夜帰宅して自室の電気を点けると、おちびが両脚を広げてベッドのまん中でどーんと寝ていたという。


「起こさないように静かにベッドの隅に入り、僕はほぼ直立の姿勢で寝ました(笑)。猫ってこんなに無防備な姿で寝ることもあるんだ、とびっくりしました」


 弟が居間で映画を観ていたら、「おちび」がやってきて、画面に“釘付け”になったこともあるという。30歳を過ぎて初めて猫と過ごすようになったSさんには、何もかもが新鮮なのだ。そして、よく観察もしている。

映画を食い入るように観るおちび
映画を食い入るように観るおちび

「玄関の外では『おちび』 は『きなこ』にベッタリなのに、ひとたび室内に入ると、『きなこ』を気にする、というか、やたら気を遣う。一方の『きなこ』は、後から部屋に入って『おう、いたか』って感じで『おちび』に駆け寄ってペロペロ舐めたり。猫同士の関係も面白い」


 一家との心の距離が近づいた2匹だが、人への警戒心が解けたがゆえ、Sさんは「知らない人について行くんじゃないか」と心配もする。愛情が深まったからこその悩みだ。


「2匹のいない生活はもう考えられない。時間を重ねていけば、うちの室内で過ごす時間もさらに増えるかもしれませんね。これからもずっと、家族で見守ります」


 新年の“誓い”のように、Sさんは言った。


(藤村かおり)


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お母さんの自転車のカゴで仲良く眠るおちびときなこ
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出典:sippo
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