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朝日新聞・朝日新聞デジタル|更新|2017/04/30

「太平洋の上、愛犬ジョンとふたり」 12年間ほぼ毎日、飼い主と漁に出る犬 大漁の日はうれしそう!

キンメダイを水揚げする徳永さんを船の上で見つめるジョン=高知県奈半利町の加領郷漁港
キンメダイを水揚げする徳永さんを船の上で見つめるジョン=高知県奈半利町の加領郷漁港

 12年間、毎日のように漁船に乗っている犬がいる。高知県奈半利町に住む漁師の愛犬だ。名前はジョン(オス、12歳)。今日もご主人の船の上、最盛期に入ったキンメダイを追って、黒潮の流れる太平洋へと向かう。


 真夜中、ジョンは軽トラックの荷台に乗って、徳永悦男さん(77)と加領郷(かりょうごう)漁港に着く。徳永さんがひざを痛めているので、車は妻の通子さん(72)が運転している。


 午前1時、悦漁丸(7・3トン)に乗り、太平洋は遠く室戸岬沖約60キロへと向かう。夕方に漁港に戻るまでの15時間ばかり、徳永さんとふたりきりの時が流れる。2度の食事も一緒だ。


 沖に出ると、魚群探知機で漁場を探る。針を70個つけた約400メートルの縄を海中に沈め、魚がかかるのをひたすら待つ。


 青い水平線と遠くを走る船影しか見えない。聞こえるのは風と波の音だけだ。

 

ご主人の船に乗るジョン
ご主人の船に乗るジョン

「今日はよう釣れたな」「暑いな」「大きい入道雲が見えるぞ」。徳永さんは甲板で昼寝をしているジョンに話しかける。


「海の上は退屈なんだ。ジョンが話し相手さ。女房よりも過ごす時間が長いよ」と徳永さん。足摺岬と室戸岬の間の太平洋がふたりの世界だ。


 徳永さんは中学を出て、すぐにカツオの一本釣り漁船に乗った。25歳で独立し、船を持った。漁師生活は52年になる。


 犬が好きで、船に乗せるのが夢だった。2005年10月、生まれたばかりの子犬を室戸からもらってきた。


「犬は大きくなってからは船に乗らない」と徳永さん。すぐに船に乗せて漁に出た。ジョンは2日間だけ船酔いしたが、それからは平気だった。しけや台風でなければ毎日、海に出る。


 漁が終わる時間になると、ジョンは船倉の冷凍庫をのぞき込む。たくさん釣れたときは明るい顔をするが、釣れなかった時はしょんぼりしているらしい。シイラなど変わった魚が釣れるとほえる。

 

徳永さんと愛犬のジョン。12年間、毎日のように一緒に漁に出る
徳永さんと愛犬のジョン。12年間、毎日のように一緒に漁に出る

 真っ赤なキンメダイをカゴいっぱいにして漁港に帰った21日、ジョンは得意そうに「ワンワン」とほえた。すると「ジョン元気か?」と他の漁船から声が飛んだ。


 徳永さんは「孫より可愛いんだ。ジョンは大事な相棒だよ」。狂犬病の予防接種を打つ日には、ジョンは船に乗らない。そんな時は本当に寂しいそうだ。


 徳永さんとジョンがとったキンメダイは、長距離トラックで東京の築地市場へと運ばれていった。


(笠原雅俊)


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