盲導犬連れの転落防止、どう声かける? 対応方法を駅員が学ぶ

2人1組で介助の体験講習を受ける駅員ら=千葉県船橋市
2人1組で介助の体験講習を受ける駅員ら=千葉県船橋市

 視覚障害者らの線路転落事故を防ぐホームドアの設置が進まない中、「声かけ」の重要性が増している。具体的にどう接し、どう言葉をかければいいのか。鉄道各社は駅員に対する教育を進めている。乗客への見本になり、街に広がればと考えている。


「『こんにちは』と言われても、友人同士のあいさつかもしれない。携帯電話で誰かに話しかけているのかもしれない。よくわからないのです」


 京成電鉄の船橋競馬場駅(千葉県船橋市)の4番ホーム。日本盲導犬協会神奈川訓練センター(横浜市)職員で視覚障害のある森川加奈子さん(48)が駅員ら約45人に語りかけ、協会職員の安保美佳さん(32)が「『盲導犬の方』『白杖(はくじょう)をお持ちの方』と声をかけてください」と続けた。


 昨年と今年、東京メトロ銀座線青山一丁目駅(東京都港区)、近鉄大阪線河内国分駅(大阪府柏原市)、JR京浜東北線蕨駅(埼玉県蕨市)で、ホームから転落した視覚障害者が列車にはねられて亡くなる事故が相次いだ。


 これらの事故後、国土交通省は鉄道各社に駅員らによる声かけなどの対応強化を要望。京成はこれを受けて初めて講習会を開いた。座学に加え、2人1組で視覚障害者役と介助役に分かれ、列車の乗降や階段の上り下り、自動改札を通る体験講習も行った。


 高橋利幸・京成千葉駅長は「駅には危険がたくさんあることが改めてわかった。特に列車に乗り込む一歩が怖かった。積極的なコミュニケーションが重要だと感じた」。山口義之・同センター長は「駅員から率先して声をかけて頂ければ一般の乗客の見本になり、いい影響を与えられる。社会を変えるきっかけになる」と話した。同センターの協力で、西武鉄道や京王電鉄も同様の講習会を開いている。

  

■サービス介助士、鉄道各社に

「『ここ、そこ、あそこ、その辺』などの指示語は、わかりにくい表現」。公益財団法人「日本ケアフィット共育機構」(東京都)が認定する資格「サービス介助士」のテキストに記されている、視覚障害者を介助する際の注意点だ。機構の担当者は「具体的な説明が大切です」。


 サービス介助士は、通信課程と、高齢者の疑似体験▽車いすの操作▽視覚障害者の介助など、計12時間の実技教習を受けて試験に合格すれば取得できる。4月現在で約14万人。運輸やレジャー、小売りなど多くの業界が従業員に取得を促している。


 JR東日本や大手私鉄全社も導入しており、京成は駅員の約8割の478人(1月15日現在)、西武は9割の1057人(昨年末現在)、JR東日本は約1万3千人のサービス介助士がいるという。


 東京メトロは法政大と連携。機構の資格「サービス介助基礎検定」を取得した学生ボランティアを今月21日から飯田橋駅に配置し、切符購入の手伝いをしてもらうなど「声かけ」を強化する。


(宮山大樹)

 

 

■ホームドア、設置は3割

 視覚障害者のほかにも、酔客など線路への転落事故は後を絶たないが、ホームドアが最も有効な対策であることに変わりはない。


 日本盲人会連合の2011年のアンケートでは、転落防止のため最優先してほしい対策として、6割の視覚障害者がホームドアの設置を挙げる。国土交通省によると、15年度末時点で全国9487駅のうちホームドアがあるのは665駅。同省は1日の乗降客10万人以上の駅で20年度までにホームドアを整備するよう鉄道各社に求めているが、15年度末時点での設置は約3割の82駅にとどまっている。

 

■駅での声かけのポイント

・「盲導犬の方」「白杖(はくじょう)の方」と相手を特定して呼びかける


・意思疎通を図る。「何をお手伝いしましょうか」と聞いて介助する事柄を決める


・「自分は駅員です」「通りすがりの者ですが」などと名乗る


・線路に転落しそうな人には「止まってください」。「危ない」だけでは不十分


・介助の際「ここ」「あっち」「その辺」などの指示語は避ける。「右です」「左に曲がってください」などと具体的に表現する


※日本盲導犬協会神奈川訓練センターなどへの取材から

朝日新聞
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