11回目の挑戦で救助犬に 原発事故で避難した犬「じゃがいも」

(写真は本文と関係ありません)
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 素質はあるし、予習復習も怠らない。なのに試験本番でしくじるタイプ。福島県飯舘村で生まれた雑種のオス犬「じゃがいも」はその典型かもしれない。災害救助犬の試験に落ちること10回。先月、11度目の挑戦でようやく合格した。


 飼い主が原発事故で避難を余儀なくされ、岐阜市のNPO法人「日本動物介護センター」が引き取って育ててきた。訪ねると、親しみやすい名とはうらはらに精悍(せいかん)で野性的な顔つき。手の甲にスッと鼻を寄せてくれるが、目には警戒がにじむ。


「飯舘の方々を元気づけようと難関に挑みましたが、思った以上に大変でした」と山口常夫理事長(66)。試験は原則年2回。火薬の音や白煙を怖がらないか、指示通りに動けるか、時間内に要救助者を見つけられるか――。じゃがいもは人見知りが激しい。埋もれた人を発見できるのに、肝心のほえる動作をためらう。不合格が続いた。


 人に慣れさせようと、トレーナー上村(うえむら)智恵子さん(44)は繁華街のコンビニへ連れて行き、盆踊りの人ごみを歩かせた。シェパードなど他の犬に比べると、3、4倍の訓練を要したそうだ。


 飯舘村は今春、ほぼ全域で避難指示が解除されたばかりだ。じゃがいもは村から「復興のシンボルとして村の大使に」と頼まれ、お盆に帰省することになった。道の駅の開所式で救助の技を披露する。


 大勢の前が不得手なじゃがいものこと、緊張のせいで失敗するかもしれない。それでも故郷の人々は温かい拍手を送ってくれるに違いない。


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