体と心を丸ごと、バランスをみて、乱れを整える 犬・猫の中医学

調子がよくないミーコ
調子がよくないミーコ

 最近、時々耳にするようになった「ペットのための中医学」。元々は人の医療に役立てられていたが、今ではペットの心や体の悩みにも取り入れられるという。どんな考え方で、どういう風に役立てられるのだろう。基本的な考え方を紹介します。


「犬のケンタが最近、元気がなくて。でも数値上は何ともないの」


「愛猫ミーコも歳のせいか不調。様子を見てと言われるのだけど・・」


 ペットの様子が何かおかしい、でも具体的な症状が出ているわけでもない。どうしてよいかわからず、ままならぬ思いを抱いたことのある飼い主は少なくないだろう。


「中医学では、健康と病気の間の半健康状態を、“未病”といいます。簡単にいえば、その“未病”から病気にならないようにする予防医学のことです。病気の治療後に、体の状態を維持する手助けもします」


 そう話すのは、中医師の楊暁波(ようきょうは)先生だ。

 

 そもそも中医学は数千年の長い歴史に裏付けされた、(古代哲学の思想を取りこみ、自然の法則に従った)中国の伝統医学のこと。一般的に知られる“漢方”は、古代から伝来していた中医学が、鎖国時代に日本独自に発展した医学だという。漢方の源流でもある中医学の特徴や理論について、楊先生にわかりやすく説明してもらった。

 

元気のないケンタ
元気のないケンタ

 ◆西洋医学との違いは

 中医学の主な特徴に、まず「整体観(せいたいかん)」という考え方があるという。


「人は大宇宙、すなわち自然界の一つの存在であり、環境、気候の変化、ストレスなどの影響を受けやすいですね。それは動物も同じ。人もペットも自然と関わりバランスを取っています。また、体の内部は小宇宙と考えていて、さまざまな部位が影響しあいます。バランスが大きく崩れる前には“お知らせ”(いつもと違う症状)が現れるはずです。その時点で養生し、バランスの乱れを整え、病気へ進行させないことが重要です」


 西洋医学は局所の症状に働きかけていくが、中医学では体と心も含めた全身、全体を丸ごとみるというイメージなのだ。


 中医学の理論を説明するには欠かせないが、普段の生活で馴染みのない言葉もいろいろ出てくる。

 

犬の五臓のイメージ(提供=イスクラ産業)
犬の五臓のイメージ(提供=イスクラ産業)

◆「体は五臓で出来ている」

「たとえば、人も動物も、体は『五臓』(肝、心、脾、肺、腎)を中心にした臓腑、組織、器官で構成されていて、互いに協力して生命活動を行なっていると考えます。そして生命活動を維持するための物質は、『気(き)』『血(けつ)』『津液(しんえき)』です。『気』は元気さやエネルギー等、『血』は体に欠かせない栄養物質、『津液』は体内の水分(唾液や涙、汗、ペットのよだれなども含む)のこと。これらも、相互に転化したり、機能を支えたりと、関連しています」


 また、あらゆるものに「陰陽」があり、例として、熱いものと冷たいもの、昼と夜、動と静など、「相互に対立した性質を持つ」、「絶対的なものではなく常に変化する」、という概念が、体の仕組みやメカニズムを説明したり、病気の治療方法にも応用されるという。


 犬や猫も人と同じ。


 つまり、引っ越しなど環境の変化、気候の変化、ストレスなどとの関係に加え、体内の「五臓」「気・血・津液」「陰陽」のそれぞれのバランスを総合的にみる。それが中医学の最たる特徴の整体観、というわけだ。

sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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