町工場の技が生んだ、「猫の手」ハンドスピナー

女性や子どもにも持ちやすい「ハンドスピにゃー」
女性や子どもにも持ちやすい「ハンドスピにゃー」

◆かわいくて、楽しめる

 ストレス解消が目的の玩具「ハンドスピナー」が人気だ。プラスチックや金属などでできた手のひらサイズのプレートを、指でくるくる回すだけだが、なんだか夢中になってしまう人が多いという。高い技術力を持つ町工場やメーカーも開発、販売に乗り出している。


「何が面白いんだろう。初めはそう思いましたよ」。愛知県小牧市の金属加工会社「シマダ機工」の嶋田吉晃社長(40)は笑う。


 ハンドスピナーは、2本の指で軸を持ち、プレートを指で回転させて遊ぶ。軸部分にベアリングがあり、回転する姿やわずかな振動を楽しむ。市販品の多くが、中国製と言われる。


 シマダ機工は社長ら8人の「町工場」。国内大手自動車メーカーや航空、医療産業の依頼を受けて、高い金属加工技術で必要な部品を試作している。その技術力がハンドスピナー作りにも生かされているという。


 企画と販売を担当するのは入社4年目の技師山田翔太さん(25)。「ハンドスピナーを作りたい」と5月に企画を立ち上げた。終業後に試作を重ね、既製品に多い三角のようなデザインではなく、「女性にも親しまれるかわいいデザインにしたい」と考えた。たどり着いたのが「ネコ」。ネコの手をあしらい、「ハンドスピにゃー」と名付けた。


「素材の雰囲気と加工技術の高さが伝わる『削り出し感』にこだわった」と山田さん。真鍮(しんちゅう)を削り出したネコの手は丸みを持たせ、細かな模様も入れた。国産のベアリングを使い、回転時間は4~6分。重さ80グラム、長さ71ミリで、子どもにも持ちやすいようにした。


「国産ハンドスピナー」(5800円、送料込み)として5月末に個数限定で予約を受け付けると、予定していた30個が2週間で完売。その後も200個以上売れたという。

 

 

◆12分以上回り続けるタイプも 

 ベアリング大手「日本精工」(東京)の子会社NSKマイクロプレシジョンは8月、12分以上回転し続ける「サターンスピナー」(1万7280円)の販売を始めた。ネットでは3分で完売。「蒸発するように売れた。予想以上の反響」と日本精工広報部の田上武俊さん(40)。これまでに300個以上が売れた。

 

なめらかで静かに回転し続ける「サターンスピナー」
なめらかで静かに回転し続ける「サターンスピナー」

 軸にあるベアリングは人工衛星や航空機のエンジン、自動車など幅広く使われる大切な部品だが、外見上は目立たない「黒衣的存在」。田上さんは「地味でも高い技術であり、身近に存在することを知って欲しかった。本気で作りました」。今後、別のハンドスピナーの生産も検討する。


 ひたすら回す。それがなぜ人気を集めたのか。東京・秋葉原のヨーヨー専門店「スピンギア」の店長、長谷川貴彦さん(41)は「ヨーヨーやコマは練習が必要で技が複雑になっていくが、ハンドスピナーは回すだけ。何もしないのに楽しい」と話す。元ヨーヨー世界王者でもある長谷川さんは、1月に存在を知り、2月末に販売を始めた。現在は50種類以上のハンドスピナーを扱う。


 4月に米国で火がつき、日本では5月以降、30~40代の男性を中心に広がったハンドスピナー人気。「ブームは8月を待たずに終わると思っていたが、夏休みの子どもたちも人気を支えた。息長く続いてくれれば」と長谷川さん。年内はじわじわと人気が広がっていきそうだという。


(斉藤佑介)

朝日新聞
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