「室内飼いの猫は安心」は誤解、予防必要 カナダの獣医師が解説

猫は不調を表に出さない
猫は不調を表に出さない

 本能的に「不調を隠す」という猫の健康寿命を伸ばすには? 猫予防医療の啓発のために来日した、米国猫臨床家協会(AAFP)元会長で、カナダで猫専門病院 Bytown Cat Hospitalを営む獣医師スーザン・リトル先生に「飼い主だからこそできること」についてうかがいました。

 

 

◆ケアは年代別に違う

「猫の健康維持のために、どんなことに気を付けたらいいですか?」という質問をよく受けます。私の答えは「ライフステージごとに、注意する点は違いますよ」ということです。


◇幼年から若年にかけて(0歳~1歳)
・各種感染症の予防(ワクチン接種)
・生活上の問題行動の予防


◇中年期以降(1歳以上)
・各種慢性疾患(腎臓病など)
・関節炎など外科的疾患
・寄生虫の予防・駆除


 子猫時代の項目に「問題行動の予防」が含まれていますね。実はトイレ問題・爪とぎ問題などのトラブルも、予防することができるのです。しかも、問題が起きてしまってから修正するより、予防するほうがはるかに楽なのも、病気予防と同じなんですよ。


 具体的には生活環境をヒアリングした上で、適切なトイレの数や設置場所、爪とぎの数、猫が遊べる環境かどうか? など、ストレスを軽減するためのアドバイスをします。


 もちろん、シニア猫のケアも大切です。猫種にもよりますが、7歳~9歳以上になれば、猫はもう老年期。健康診断も年2回受けるのが理想的です。歳を取れば老化が進むのは、人も猫も同じこと。食事の内容も一日の過ごし方も、若いころとは違います。人間だって、幼いころと、歳をとってからは、よく病院に行くようになるでしょう? 猫だってそれと同じなのです。

 

インタビューに答えるスーザン・リトルさん
インタビューに答えるスーザン・リトルさん

◆外に出さなくても予防接種は必要!

 日本でもカナダでも、よく聞くのが「うちの子は完全室内飼育だから、大丈夫」という言葉。よその猫との接触がないから、伝染病にかかる恐れも、ノミやダニなど寄生虫の心配もいらない、というのです。


 それが実は大きな落とし穴。確かに喧嘩によるケガからの感染は少ないかもしれません。しかし、ノミやダニは人の靴についた土からでも持ち込まれます。犬を一緒に飼っているなら、散歩に出ることで足や皮膚につけて帰って来る可能性もあります。


 それに、家の中に虫が入って来るのを完璧に防ぐことはできませんよね? 蚊のように刺す虫はもちろん、家バエの卵が媒介する病気もあります。


 また、猫をペットホテルに預けたり病院に連れて行ったりする場合にも、予防接種は重要な意味を持ちます。予防接種をしていない動物は、ほとんどのホテルで受け付けてもらえません。


 病院が受診を拒否することはありませんが、不特定多数の動物が集まる環境に、予防接種なしの猫を連れて行くのは決してよいことではありません。


 外に出すことがなくても、予防接種と健康診断を! と覚えておいてください。

 

室内でくつろぐ猫
室内でくつろぐ猫

◆よい動物病院の見分け方は?

 SNSが発達した現在、口コミは確かに、一つのポイントかもしれません。しかし何より、飼い主さん自身が獣医師と接してみて判断するのが一番です。


・家での様子(猫の飼育環境)について、詳しく聞いてくれるか。
・大切に扱ってくれるか、猫と飼い主の気持ちを尊重してくれるか
・猫にとって幸せな環境とはどういうものか、指導してくれる先生か


 このあたりが判断のポイントでしょう。


 私たち獣医は飼い主さんに「猫の変化」について質問します。


「食事の量や飲水量は変わりませんか?」「排泄の回数や量は変わりませんか?」「普段の行動や周囲との接し方はどうですか?」


 多頭飼育している場合など、個々の食事や水の変化には気づきにくいかもしれません。そのためにお勧めしているのは、1匹ずつ、食事場所を分けることです。


 行動や接し方の変化は、遊ばなくなった、怒りっぽくなったなど「何となく」程度でもOK。普段の様子との違いを注意深く観察してください。


 猫のわずかな変化にどれだけ気づけるか。それが病気の予防や治療に大きな影響を及ぼします。大切な猫の変化に気づいてあげられるのは、他の誰でもない、飼い主さんなのです。


(文・浅野裕見子、 通訳・久保田朋子)

 

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この連載について
猫の健康のために知ってほしいこと
愛猫と長く健康に暮らすための、獣医師からの珠玉のアドバイス。この連載は「ネコも動物病院プロジェクト」の一環です。supported byベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパン
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