戦後とだえていた犬の祈禱が復活 健康を祈って愛犬家が殺到!

飼い主と一緒にお祓いを受ける犬たち=滋賀県多賀町の大滝神社
飼い主と一緒にお祓いを受ける犬たち=滋賀県多賀町の大滝神社

 戌(いぬ)年にあやかって地元を盛り上げようと、古代から犬にまつわる言い伝えがある滋賀県多賀町の大滝神社で6日、戦後から途絶えていた犬の祈禱(きとう)が復活した。健康や長寿を願い、さっそく多くの犬が飼い主に付き添われてお祓(はら)いを受けた。


 大滝神社は、平安時代前期の807(大同2)年の建立とされる。鈴鹿山系から琵琶湖へ向かう犬上川のほとりにあり、正月三が日に約40万人の初もうで客が訪れる多賀大社からは約5キロ上流に位置する。

 

神主の祝詞(のりと)を聞く犬と飼い主=滋賀県多賀町の大滝神社
神主の祝詞(のりと)を聞く犬と飼い主=滋賀県多賀町の大滝神社

■忠犬小石丸の伝説

 この神社には、忠犬「小石丸」の伝説がある。日本武尊(やまとたけるのみこと)の皇子・稲依別王命(いなよりわけおうのみこと)が、犬上川にすんで住民に危害を加えていた大蛇を退治しようと、愛犬の小石丸を連れて出掛けた。しかし7日間探しても大蛇は見つからず、疲れた命が仮眠しようとすると、小石丸が激しくほえた。寝付けずに怒った命が刀で小石丸の首を切り飛ばすと、首が近くに潜んでいた大蛇にかみつき、命を守ったという。


 命が小石丸の体を手厚く塚に葬り、松を植えたと伝わる神社近くの場所には「犬胴松」が残る。命は一帯を長く治めた犬上氏の祖となり、大滝神社境内の犬上神社にまつられている。大滝神社は「犬の守り神」といわれるようになった。


 町や観光協会が、戌年にあたってこの伝説に着目。氏子が社務所を整理すると、犬上神社で飼い主と一緒に祈禱される犬の様子をつづった1921(大正10)年の新聞記事と写真を見つけた。いつ途絶えたのか記録はないが、氏子総代会長の城貝忠信さん(74)は「戦後に犬の祈禱をした覚えはない」という。

 

愛犬と一緒に玉串をささげる飼い主=滋賀県多賀町
愛犬と一緒に玉串をささげる飼い主=滋賀県多賀町

■正月の参拝者激増

 そこで戌年の今年から、月に数回ある「戌の日」のうち1回を犬の祈禱日とすることにした。復活を前に、小石丸に見立てた犬を描いた絵馬を作り、「愛犬を連れて初もうでを」とPRしたところ、この正月三が日は例年の10倍にあたる千人近くが参拝。「半分以上が愛犬を連れていた」(城貝さん)という。


 6日は、朝から続々と犬たちが訪れた。一番乗りは、近くに住む礒野与志嗣(いそのよしつぐ)さん(73)の5歳の愛犬ジョン君。礒野さんは「長寿と健康を祈ってやります」。同県米原市の渡辺広さん(47)も、5歳のはなちゃんと4歳のこまちちゃんに晴れ着を着せてきた。「普段は僕に連れられてくるこの子たちが今日はメイン」


 次回の祈禱日は2月11日。予約不要で、当日午前10時から正午まで受け付ける。問い合わせは多賀観光協会(0749・48・1553)へ。


(大野宏)

朝日新聞
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