猫殺処分ゼロの千代田区 「ちよだ猫まつり」ボランティアと共催

昨年のちよだ猫まつりで開かれた「こどもワークショップ」
昨年のちよだ猫まつりで開かれた「こどもワークショップ」

 猫をテーマとするイベントが人気を呼んでいるが、その中で、筆者が実行委員/総合プロデューサーを務める「ちよだ猫まつり2018」について紹介する。

 

(末尾に写真特集があります)

 

 ちよだ猫まつりは、千代田区と一般社団法人「ちよだニャンとなる会」が共同で、千代田区役所を会場に開催するチャリティイベントだ。今年で3回目。収益は、助けを必要とする猫たちの医療費として使われる。


 企画・運営を手がけるのは、ちよだ猫まつり実行委員会。今年は2月17日(土)・18日(日)に開かれる。2日間でのべ75人のボランティアと、のべ70人の行政職員によって運営される。

 

ポスターのイメージイラスト。
ポスターのイメージイラスト。

 なぜこのイベントが開かれることになったのか。千代田区では、今を去ること17年前に「飼い主のいない猫の去勢・不妊手術費助成事業」が始まり、行政とボランティアが協働で「飼い主のいない猫」に去勢・不妊手術を行ってきた。いわゆるTNR(Trap/Neuter/Return=捕獲/去勢・不妊手術/元の場所に戻す)である。手術済みの猫は地域で見守られてきた。


 千代田保健所地域保健課の佐藤靖課長によれば、「区内で子猫が生まれることが少なくなり、外で暮らす猫の頭数が減ってきました。その結果、猫についての苦情やトラブルは大きく削減されました」


 8年ほど前からは、行政とちよだニャンとなる会が連携・協力して、飼い主のいない猫を保護し、「家族」を見つけて、譲渡する活動も行われるようになった。「その頃から動物愛護に基づく相談が増えました。負傷や衰弱の猫を見つけたが、助けてあげられないか、といった内容です」と佐藤課長。


 そうして千代田区では、2011年に「猫の殺処分ゼロ」を実現した。ゼロは現在も継続している。


 ちよだ猫まつりの発案者で、ちよだニャンとなる会代表理事でもある古川尚美・ちよだ猫まつり実行委員長は次のように話す。「行政とボランティアが協働する千代田区の取り組みと成果、いわば『千代田モデル』を普及・啓発するとともに、人と猫が幸せに共生するための情報を発信し、猫の福祉を向上させることがちよだ猫まつりのコンセプトなのです」

 

 

◆ライブや役に立つ講演

 といっても、ちよだ猫まつりは堅苦しいイベントではない。見どころを紹介しよう。


「観る」楽しみとしては、1階ステージのプログラムが盛りだくさんだ。

 

オープニングは、むぎ(猫)さんのライブ。
オープニングは、むぎ(猫)さんのライブ。

 オープニングは、「喋る、歌う、演奏する」天国帰りの猫、「むぎ(猫)」さんのライブ。今、大きな注目を集めるアーチストだ。ポップな音楽に乗って、かけがえのない命について歌う。オープニングライブを見逃した人は、夕方にもステージがあるので、ぜひ観てほしい。


 温かく優しい歌声と演奏が魅力の山田稔明さん+近藤研二さんのチャリティミニライブも見逃せない。ともに愛猫家として知られ、猫についての著書もある。


 講演やトークショーも豊富だ。

 

ジュディ・オングさんは、石川雅己千代田区長と対談。
ジュディ・オングさんは、石川雅己千代田区長と対談。

 ジュディ・オングさんと石川雅己千代田区長の対談「人にも動物にもやさしい街がいい」では、人と動物の共生社会について語り合う。


 川合忠信公認会計士・税理士の「実践講座・ペットを守る遺言」はペットと暮らす人は必聴。飼い主にもしものことがあった場合のために何をしたらいいか。講座の後、無料相談を受け付けるので、この機会に相談してみてはいかがだろう。


 漫画家の斎藤倫さんのトークショーでは、連載『ノーにゃんこ ノーライフ~僕らの地域ねこ計画~』誕生までの秘話が紹介される。悲惨な境遇にある猫たちを救う活動にみずからが関わる斎藤さんの話は、泣いて、笑って、考えさせられること間違いない。


 フードスタイリストのマロンさんのトークショー「おいしい猫との暮らし」では、食文化から猫への愛までを語る。マロンさんは、阪神・淡路大震災の被災猫を引き取った経験を持つ。また、東京オリンピック・パラリンピックまでに不幸な犬や猫をゼロにすることを目指す「TOKYO ZERO」の呼びかけ人のひとりでもある。


 赤坂動物病院の石田卓夫医療ディレクターの「猫たちを救え! ドクター・にゃー」では、猫と暮らす家族がいっしょにステージに上がる。ワクチン、食事、排泄等の健康管理について楽しみながら勉強できる参加型のセミナーだ。


 赤坂動物病院院長・柴内晶子獣医師の「命の教育・猫と仲良くなろう!」では、猫とはどのような動物であるか、どう付き合ったらよいのかをやさしく解説。子ども向けのプログラムだが、おとなが聴いても参考になる。

 

苅谷動物病院総院長・白井活光獣医師の「獣医さんになりたい! こどもたちの職業体験」では、子どもたちが白衣を着て診察を体験する。
苅谷動物病院総院長・白井活光獣医師の「獣医さんになりたい! こどもたちの職業体験」では、子どもたちが白衣を着て診察を体験する。

 苅谷動物病院総院長・白井活光獣医師の「獣医さんになりたい! こどもたちの職業体験」では、子どもたちが小さな白衣を着て、先生の指導のもと、医療機器を使い、診察を体験する。現代の高度先進動物医療が垣間見られて、興味深いプログラムだ。


 なお、ちよだニャンとなる会による「千代田モデルを語る」もぜひ聴いてほしい。


 春風亭百栄師匠「猫落語」は、4階会場で、先着25名まで。猫をネタとする古典と新作を楽しめる。

 

 

◆子どもも楽しめるワークショップ

猫になって写真が撮れる「リアル猫ヘッドアートプロジェクト」。
猫になって写真が撮れる「リアル猫ヘッドアートプロジェクト」。

「体験する」ものとしては、1階アートスペースで、猫人形作家・佐藤法雪さんの「リアル猫ヘッドアートプロジェクト」が行われている。猫になって、思い思いのポーズで写真を撮影してみよう。


 1階ワークショップテントでは、専門家が講師を務めるワークショップが行われる。ル・メリー・メロさんの「水引ヒモで猫ストラップをつくろう」、タカハシカオリさんの「色を塗ってオリジナルネコマグネットをつくろう」、佐藤法雪さんと日本羊毛アート学園の「うちの子そっくりボンボン猫人形」、写真家ケニア・ドイさんの「ねこの撮り方、お悩み解決」など、プログラムは豊富だ。


「楽しむ」ものとしては、やはりお買い物だろう。1階「ニャンダフルマーケット」では、オリジナルTシャツをはじめとする公式グッズほか、猫をモチーフとしたグッズや情報の展示ブース40が並ぶ。スイーツコーナーでは、区内の老舗和菓子店が猫まつりのために作った「福猫どら焼き」や「肉球まんじゅう」のほか、猫型のチョコレートブラウニー、にゃんこベーグル等、可愛いスイーツが人気となりそうだ。

 

「Begele&Coffee トムハナの木」にゃんこベーグル。
「Begele&Coffee トムハナの木」にゃんこベーグル。

 次世代に動物愛護を伝える「こどもワークショップ」(17日(土)12時~16時、4階)は、子どもと保護者がいっしょに利用する部屋。子どもたちが靴を脱いで足を伸ばせるクッション・スペースが設けられる。絵本の読み聞かせをする「おはなし会」、お面を作って持って帰れる「ねこのおめんをつくろう」、「子どもおもしろ肉球ペイント」、「塗り絵教室」等、楽しいプログラムがいっぱいだ。自由に本を読めるコーナーもある。小学校や幼稚園、保育園も年齢も異なる“お友だち”と交流する機会となるかもしれない。


 1階の正面入口の前では、相撲の荒汐部屋の写真集『モルとムギ 相撲部屋の猫親方』(荒汐部屋(著)・前田悟志(著)/河出書房新社)から、部屋で暮らす2頭の猫と力士たちとのほほえましい写真を展示する。

 

 

◆民間と行政の協力で大きな可能性

 行政と共同でイベントを開催することで苦労することはないのか。


 古川実行委員長によれば、「長年の猫への取り組みを通じて、行政と連携・協力することには慣れています。こちらは民間で働いているので、慣習の違いに戸惑うこともありますが、行政と共同することによって大きく可能性が広がると実感しています」

 

 昨年の「ちよだ猫まつり2017」では13,500人が来場したという。今年も多くの来場者が見込まれているようだが…


 石川区長はこう言う。「今年も会場は笑顔でいっぱいになることでしょう。ボランティアが企画して、大きなイベントに育って行ったのは素晴らしいことと思います。著名な方や専門家までが主旨に賛同し、無償でご協力くださっているのもありがたいですね」


 18日(日)12時~16時には、4階会場で「猫の譲渡会」が開かれる。参加するのは、生後6カ月から約10歳までの猫たち。猫と暮らそうと考えている人は、ぜひ譲渡会に来てほしい。

 

(フリージャーナリスト・香取章子)

sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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